異能者たちの苦悩-先にあるのは絶望のユートピアか? 希望のディストピアか?-【オカルトも神話も、歴史も今も、世界も宇宙も、すべてはひとつに集約される】
第116話 能力 【ダブルラセンサー】:ハイド【病 処方者(シック・プリスクリプシャン)】
第116話 能力 【ダブルラセンサー】:ハイド【病 処方者(シック・プリスクリプシャン)】
ここぞとばかりに群がってきた魑魅魍魎はある種救いを乞うように喚きながらつぎつぎに九条へと覆いかぶさっていった。
九条はなにひとつ抵抗せずに魑魅魍魎に飲まれていく。
――バッタン。バッタン。バッタン。バッタン。つぎからつぎへと魑魅魍魎が重り戦火のさいに水を求めて川に飛び込む惨劇のようだ。
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――ア゛ア゛ア゛ァァァ。魑魅魍魎はそんな言葉にならない言葉を発している。
それぞれがそれぞに奇妙な声をあげて、さらに不気味になっていった。
端的にいえば人の肉体的苦痛と精神的苦痛が魑魅魍魎を生み出す。
この診殺室は
それはある一定のスパンで効率よく闘病の負力を浄化させるための知恵だ。
苦痛から解放されたいという負力が転化した魑魅魍魎の欲求は、ただ目の前にいる
九条を起点にした黒い塊はいまだに増殖し、喚き声もさらに重なっていった。
魑魅魍魎の山は
液体が固体へと変わる映像を早回したような変化で黒い山が
魑魅魍魎の外側は石灰化し真っ白く染まっている。
ザラザラした山肌が急激に窪むと、大人ひとりが抜け出せるほどの穴がボコっと開いた。
九条は化石化した魑魅魍魎を爪先で蹴破ってその姿をみせた。
表情ひとつ変えずに靴底で穴の周囲を拡げていく。
山の内側もすでに化石化していてがっちりと固まっている。
が、それほど強度があるわけでもないために魑魅魍魎は九条の蹴りで乾燥した肌を掻くようにボロボロと崩れていった。
「カルテ記載前は不確定診断で効果が薄まるんだよな」
九条は自分が立ち上がれるだけのスペースを確保してから
九条の蹴りを起点にしてついに魑魅魍魎の群れは
九条自身も薄っすらと白い膜で覆われている。
これは魑魅魍魎との直接の接触を避けるための措置だった。
九条を包んでいた膜もしだいに消えていく。
塵になった魑魅魍魎のもとへつぎの魑魅魍魎たちも列をなして迫ってきている。
動きは遅くのろのろとしていてもその数で九条を圧倒しようとしていた。
――ア゛ア゛ア゛ァァァ。
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九条は手のひらを宙にかかげた。
目の前に見開きできる一枚の白紙のカルテが出現した。
真っ新なカルテを開くと辺りに光が瞬いた。
闇を照らす幾筋の光は散ることもなくそこで発光しつづけている。
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カルテの中に
“メ”の字からはじまり“ル”“テ”“ィ”と順番に文字の色が濃くなっていく。
最後の”ル”が輝くとそこで止まった。
「確定診断は百パーセントの症状再現」
九条の視界、前方百八十度の魑魅魍魎は急激に歩みを止めた。
いや、動こうとする意志は見てとれるが魑魅魍魎の足元が形を変えて動けないでいる。
炎天下のアイスクリームのように一秒後には一秒前の形とはまったく違う形に変わっていた。
魑魅魍魎たちの様相はもうすでに液体と呼べるほどにドロドロだった。
それでもつぎの魑魅魍魎の群れが粘液状の魑魅魍魎の上に集まってきて――ビチャビチャと音を立てている。
魑魅魍魎は
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ふたたび九条の目の前に白紙カルテが出現した。
カルテを開くと光が瞬いたがすぐに弱まって消えた。
そのままロウソクの火が消えるようにカルテそのものが消えた。
「……面倒だな。この量は……」
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「カルテなし。不確定診断」
主に前線の一列目の魑魅魍魎の動きが鈍っていく。
魑魅魍魎はそれぞれが単体で苦しむ仕草を見せて、あたりを小さく転がりはじめた。
ゴロゴロ転がっている魑魅魍魎がバリケードとなって一列目以降の魑魅魍魎はゆく手を阻まれている。
九条への道を遮る魑魅魍魎たちはしだいにのたうち回り、四方八方に激しく転がっている。
バタバタと体を痙攣させておたがいに体を激しく衝突させた。
だがそこに魑魅魍魎の意志はなく、ただもがき苦しんでいるだけで、どちらの方向に転がっていくのかは誰にもわからない。
魑魅魍魎は毒に侵されもう自分たちで動きを制御できなくなっていた。
「九久津くんの魔障で時間を稼がせてもらう。僕の能力は結構ルールが複雑でね……。まあ、いっか。医者の
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