第50話 機密区分

 俺は誰もいない「六角第一高校前バス停」の前にあるベンチで校長にもらった資料を読みふけっていた。

 深夜のゲームや漫画と一緒で時間が経過たつのも忘れて危うくバスに乗り遅れるところだった。

 大型車が近づいてくる振動とかエンジンの轟音ごうおんもまるで聞こえなかった。

 それどころかドアが開いて初めて「六角バス」のロゴが目に入ってきたくらいだし。

 俺はそこまで夢中になってたのか?って自分自身でいちばん驚いた。

 無造作に資料をスクールバッグに突っ込んで慌ててバスに乗った。

 ここが始発じゃないんだから当たり前といえば当たり前だけど、後部座席にはもう人が座っていた。


 早朝なら「六角第四高校よんこう」から乗れば「六角第一高校ここ」が終着だけど、午後からは「六角第一高校前バス停」はただの通過点でしかなくなる。

 俺はしょうがないから前扉の入口のすぐ目の前にある手すり脇の席に座った。

 この時間帯のバスに乗るのは初めてでバス通学にも慣れてたけど、また一味違う感じがした。

 座席のベロア生地が青か赤かだけでもずいぶんと印象が違う、乗る時間帯が変わっただけでここまで新鮮に思えるのか?って思った。

 俺はこれから六角市の中心地である六角駅にいってそこでバスを乗り換え九久津と一緒に九久津の家にいくことになっていた。


 校長に九久津の家に隣接された重要な建築物(?)を見学してきてほしいといわれたからだ。

 「六角第三高校さんこう」にいったときのように新しい情報を知ることができそうだ。

 俺はスクールバッグを支えにして人目を気にしながらまた資料をめくった。

 時間を潰すには良い読み物だ。

 つぎは寄白さんの項目のあとからだっけ……? 寄白さんが「シシャ」の反乱で壊れたはずのイヤリングをしてたのはスペアのイヤリングに負力を入れたからか。

 たしか人体模型は保釈でヴェートーベンは封印、そしてモナリザは退治だった。

 それが寄白さんの下した判断か。

 昨日のバッハも封印だった……ということはバッハは今現在も寄白さんのイヤリングに負力として蓄えられてるのか。

 どのページを読んでいても資料の右端には【機密区分C】と書かれている。

 なんだろこれ? これに対する説明がないかページをめくってみたけどなにも書かれてなかった。

 ただ最終ページにいくとあとがきのように注意書きがあった。

 機密情報は「Aランク」「Bランク」「Cランク」の三段階に分別されるみたいだ。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 ・Aランク情報は組織の上層部のみが知りえる極秘情報。


 ・Bランク情報はアクセス権限を与えられた人間が組織専用のサーバにログインして得る情報。

 他媒体へのコピーは不可。


 ・Cランク情報は対アヤカシ組織に属する者なら一般で知りえる情報。

 紙媒体での印刷、コピーは可能だが閲覧後は即時シュレッダー等で破棄すること。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 へ~こんな区分けになってたのか。

 俺が今読んでるこれは「Cランク」の資料だから読んだら破棄すてろってことね。

 まあ、この資料自体もアヤカシと戦う人間以外には渡されないんだろうけど。

 了解、了解と、ひとり納得した。

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