第4話 いざ、王都へ



「ごめん、言ってる意味がわからない。王戦? の為に強くなって? ちょっと自分勝手すぎやしませんか?」

「いや、まあ、確かに、自分勝手、すぎだけど……」


少女は俯いてしまった。


「で、でも、この、王戦は、今後の、あなたの人生を━━」

「馬鹿! それは言うなと」

「あなたの人生って俺の人生の事か?」


俺が問いただすと二人はさっきより気まずい顔をした。

どうやらそれ程隠したかった事をつい少女は口を滑らせてしまった。

「あ、いや、その、これは……」

「どう言う事だ、説明しろ」


少女は焦りを隠しきれなかった。

それ程隠したかった事なんだろうか。


「はあ、しょうがない。私から説明する。と言っても何もわからないまま説明してもあれだからお前をある場所に連れて行く」


これから説明するって言ってもこんな俺になにを説明するのか。

それとある場所とは一体どこのことだろうか?


「ある場所ってどこの事だ?」

「もしかして、王都?」


王都?もしかして超でかい町の事なのかな?もし、そうだとしたら装備とかを買うのか?


「ああ、王都に行く」

「でも、あそこは、危険」

「問題ない」


おいおい、危険って言ってるぞ。そんなところに連れて行くとかやばいんじゃないのか?

しかし、本気で行くつもりなのか30代後半の人は準備を始めた。


「よし、さっさと準備して行くか。あんたは少し休んでいてくれ。コトネは《コネクト》の準備をしてくれ」


この少女の名前はコトネとお言うのか。

そんな事を思いながら俺は近くにあったソファに座り込んだ。

窓の外を見ながら二人の会話を盗み聞きした。


「本気で、王都に、行くの? でも、あそこは━━」

「━━をあいつに見せないと王戦に出てくれないぞ。それに私たちもより詳しく今の状況を理解しなくてはいけない。今は情報不足なんだ。少しでも情報が欲しい」


途中何言ってるかわからなかったがどうしても王戦に出したいのは今の会話で何となくわかった。

それと今はかなりの情報不足らしい。王戦と言うやつに出るのに情報が必要なのか。参加条件とかは知っておきたいが。


「どこに、《コネクト》を、繋げれば、いい?」

「そうだなぁ、ここは大胆に王都の最高貴族城、王が住んでいる城に繋げるか?」

「あなただけ、死にたいなら、繋げて、あげる。あそこ、魔法検知が、できる、人が、沢山いる、バレたら、終わり」

「おいおい、そんぐらい私も知ってるよ。それに、私はまだピチピチだぞ。まだ死んでたまるか」


見た目30代後半の人が何言ってんだ。若干顔にシワが出てきてるのによくそんな事が言えるよな。いつまで経ってもあんな心を持っているのが大事だと思うけど。

そんな事思っていたらコトネが、


「38歳の、おばさんが、なに、ピチピチって言ってるの?」


と、言ってくれた。

よく言ってくれた、感謝する。

でも言っていい言葉といけない言葉がある。もし言ってはいけない言葉を言ってしまったらもう手遅れになる事もある。

さっきの言葉を聞いた38歳はそれはもうカンカンに怒った。例えるとしたらお湯が沸いた鍋のようだ。


「ちょっとお若いの、若いからって言っていい言葉と悪い言葉があるんじゃないんですかねぇ? 学校とかで習わなかったのか? えぇ?」

「私、学校、言ってない。だから、言っていい言葉と悪い言葉、わからない。だから、私にとって全て、全部言っていい、言葉。いいね?」

「ほぉう、よくそんなことが言えるよな。今自分の立場を理解して言ってるよな」

「もちろん、私の方が立場、上。あなた、下」

「なかなか言ってくれるじゃないか。えぇ?」


やばいな、これは修羅場だな。ここで俺が入ったら俺はどうなるのか。考えるだけで恐怖を覚える。

てか、俺をどっかに連れて行くんじゃないのかよ。

俺が冷たい目で修羅場の現場を見てるとコトネがこちらに反応した。


「はあ……。この続きは、また今度にして、早く王都に、連れていこ」

「それもそうだな。この次は覚悟しとけよ。ロリが」

「ババァが」


最後口悪かったよ。しかも、今度続きやるのかよ。大変だな。

それよりようやく俺をどこかに連れて行くようだ。ここまで色々長かった。


「もう、早く、行こう」

「そうだな。もう城下町の路地でいいか」

「城下町の、路地ね。今、繋げる」


コトネが右手を自分の目の前にあげた。

何を使うのかは何となくわかる。


「《コネクト》」


やっぱり、そうきたか

魔法の名前を言った後、コトネの手先から緑色の光が出てきた。

光がある程度進んだところで光は大きな魔法陣に変化した。


「繋がった、行くわよ」


コトネに続いて俺たちは魔法陣をくぐった。









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