第81話 いつもの

 行きつけのバーで、バーテンダーに「いつもの」と言うといつものやつが出てくる。映画のワンシーンなんかでありますよね。


 私の友人が、とあるファーストフード(バーガー店)でバイトしてまして、いつもこれやってくるお客さんがいるんだそうです。

 毎朝同じ時刻にやって来て、カフェオレを一つだけオーダーするお客様。


「いらっしゃいませ、おはようございます!」

「おはよう。いつものやつ」

「はい、かしこまりました!」


 彼女は「私がシフト入ってないときって、彼はどうしてるんだろう?」と悩んでおりました。ほんと、どうしてるんだろう?


***


 さて、ワタクシ月一で近所のかかりつけ医に行くんですが、特に問題が無ければ薬だけ貰って帰るのです。

 順番を待って、診察室に入り、「調子はどうですか?」と聞かれ、「変わりないです」と答え、「じゃあ薬出しときますね」……これが最短のパターンです。


 本日最速記録を更新しました。

 待合室に誰もいなかった! しかも、受付のところで先生ウロウロしてた!


「あ、如月さん、いつもの?」「はい、変わりナシ」「出しときます」


 終わり! 僅か10秒! 診察室にすら入らない。

 受付カウンターで「いつもの」ってなんかこれ、使えそうじゃん。映画っぽい。


「いつもの」

「かしこまりました」

 シャーってグラスの代わりに薬の束が滑って来んのね。それをカウンターの端っこでパシッて受け止めるの。

「あちらのお客様からです」って別の薬が出されて、向こうで別の患者が笑顔でウインクしてくる。

 いやいやタミフル要らねーよ、ザイザルが要るんだよ。え、メプチン? それなら貰っとく。

「お大事に」


 お薬は用法、用量を守って、正しく使いましょう。他人と取り換えっこしてはいけません。

 小説に使えそうなネタだと思ったんだけどな。使えないか。いや、使おう!



 ……病院でもシロート妄想をしてしまったようだな。

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