第7話 叶美の残酷な過去

 香美とは小学生の時から友達だったらしい。

 小学生の時は、二人で外に遊びに行ったり、他の友達とも遊んでいたらしいんだが。

 中学にあがる時、俺がパソコンを買ってあげた。

 そこから叶美は徐々に陰キャラ化していった。

 どんどん香美とも遊ばなくなり、周りの友達も叶美を白い目で見るようになった。

 やがて叶美は孤立、先生からも見放されかける直前まできていた。

 そして、事件が起きた。


 ──叶美、中一時代


「叶美さ、なんでうち達が無視してるかわかる?」


「全然わからないけど」


「そういう態度がウザイからだよ!」


 バケツの水をかけながら、そう言った。

 教室には私と香美とその他二人の女子だけ。

 もちろん助けは求めれないし、助かる手段も見つからない。


「少しはマシな顔になったか?」


 嫌味ったらしく言う香美に私は一言。


「あんたよりマシだよ」


 途端に三人は激怒。

 私は香美にしか言った覚えないのに、何故か周りの女子にも睨まれた。


「私達があんたの下!? ありえないんだけど!」


「あんた、ロリ枠に入れたからって調子に乗ってんじゃないよ!」


 ロリ枠って……年齢的には君達もそうだよ?

 私は自分の事をロリっ子なんて思ってないし。


「その髪色も気に入らない!なんでオレンジにしたの?キモいんですけど」


「オレンジにしたのは理由があるもん!」


 オレンジにしたのは、兄の影響だ──


「何?理由なんなの?今度からいじめを軽くしてあげるから言ってみ?」


 ウザイ、ウザすぎる!

 なんで私なの?私以外にもこんなキャラの人いっぱいいるでしょ?

 仲良かったのに。いえ、仲良かったからなのかな?

 でも、きっと耐えればいつか……


「無視してんじゃねーよ!」


 バケツの水からグレードアップし、ノートを切り裂かれた。

 あぁ……なんかこんないじめアニメ等でよくあるやつだ。

 まだ耐えよう、きっとそのうち先生もクラスの人達も私の苦労を知って、助けてくれるはずだし。


「何こいつ、ノート破ってもなんにも言わないよ?」


「もっと酷いことしようか」


「さんせーい!」


 三人の会話が耳に聞こえた私は、恐怖を覚えた。

 ノート破るより酷いことって?アニメでは、ノート破りくらいで終わるのに。

 殺されるのかな?こんな所で……

 そんな恐怖を感じながら、向こうの三人が動き出し、ハサミを持っていた。

 死ぬの……かな。

 死を覚悟した直後、目の前が真っ暗に──


 気がつけば、私は教室の壁に貼り付けになっていた。


「くしゅん!」


 少し寒いと感じ、自分を見ると、下着姿にされていた。

 全てを悟った私を、三人は笑いながら見ていた。

 ひっぱたいてやりたい!


「屈辱でしょ?女子がこんな格好なんてさ」


 耐えるしかないの?ここまでされて?

 無理、私には無理!

 一つの秘策をやってやるしかないようね……。


「私が悪かったです……。手足が動かせないので土下座出来ませんが、どうか許してください……」


 必殺の『向こうの思う壺』感を出す!

 意外にもこの技が一番強かったりする。多分だけど。


「へぇ、じゃあ放してあげたら土下座するか?」


「はい!もちろんです!」


 ちゃんと離してもらえた。

 ここからが私のターンよ!


「くらえー!」


 その声と同時に、私は顔面パンチをくらわせ──


「──叶美、何やってるの?」


 殴った瞬間、先生が現れた。

 この状況はまずいね。

 下着姿の私に、顔面パンチをくらった香美、ポカンと口を開けた女子二人。

 完全に悪役私じゃん!


「あの、先生……違うんです」


「何が違うのかわからないからとりあえず服を着て、職員室に行くわよ。四人とも」


「「「「はい」」」」


 女教師の人は、顔が怒っていた。ものすごく。

 そのまま連れてかれるように私達四人は、職員室へと行った。

 服を切り裂かれたって事になると、香美達の立場がやばいって思ったのか、制服のブレザーとズボンを香美が私に渡した。

 香美は下に着ていた体操服を先生に見せ、


「先生、うちは叶美の制服着てみたかったから着ていて、自分の制服は家近い子に持ってってもらったので今持ってません」


 と、先生に職員室来いって言われた時居た教室で言っていた。

 謎に先生も、そうかと言って納得していた。

 何なんだろう……、なんかものすごい嫌な予感がする。


 職員室に着くと、そこには誰もいなかった。


「うち達だけですか?」


 そう香美が先生に問う。


「そうよ、先生含めて5人よ」


 え、なにこれ。ホラー映画みたいじゃん……。

 怖いんですけどー!


「さ、何があったのか教えてもらおうか」


 口を開いたのは先生だった。

 妥当な質問をしてくる先生に対し、香美が言葉を。


「叶美が虐めてきました」


 ふぁっ!?

 私のせいにされるとかおかしい!否定しなければ。


「せん──」


「なるほどな。叶美以外帰ってよし」


「ちょっ……」


 私の話を聞く耳持たずって感じで話を進めていかれた。

 誤解を解く暇もなく。

 香美達三人はバイバイと言って帰っていった。

 先生と私の一体一になってしまった。


「言いたいことは?」


 なるほど、まだチャンスがありそうだ。


「誤解があるのです。香美達は私を虐めてたんです」


「嘘をつくのは良くないな。擁護してあげようと思ったが、嘘つきには無理だ。帰れ」


 先生の言うセリフか、それ!

 嘘つきって私の事なの?どう考えてもあいつらなのに!

 この制服を破ってやればあいつらも困るかな?

 それしか仕返しの仕方が無いし。


「嘘をついてるのはあいつらなんですけど……」


「まだいたのか、帰れ」


 ずっと目の前にいるんですけど。

 先生に背を押され、職員室から出された。


「学校には敵だらけなんだなあ……」


 とぼとぼと歩き、靴箱から出た時、目の前に香美達が居た。

 帰ったと思っていたのに、まだいるなんて執念深い人達だなあ。


「制服返してもらおうか」


 なるほど、そういう意味で待ってたのか。

 返すと私下着姿になるんですが。

 変態扱いされて警察に行ってしまうんですけど。


「せめて制服を家まで貸してくれませんか?」


「相手の思う壺作戦成功すると思うなよ?」


 バレてるー!

 敬語がダメなのかな?

 この作戦で殴ったからもう通じないってことかな?

 てか、なんで名前知ってるんだろうか。

 私言ったっけ?いえ、言ってない気がする……。

 何この人達、ちょー怖いんですけど。


「ほんとに待ってください!私が警察に行けば、貴方達のことを話し、捕まりますよ!?」


 脅しっぽくなったとしても、ここは自分を守るためには必要なことだよね!


「何いってんの?制服奪っといてさ。あんた、言っていることおかしすぎない?」


 あれ、私が悪いの?

 なんか頭がこんがらがってきたー!


「そうですよね……私が悪いんですよね。制服はお返しします」


 いいのかな?

 私今、学校の靴箱前で下着になろうとしてるんだよ?

 やばくない?この状況。

 男子きたらもう女子として終わってしまう様なこと起こりそうだし。


「早く脱げよ」


 脱がなきゃ死にそうだね。

 死には変えられない……ってことかな。


「これでいいんでしょうか?」


 うわああああ!

 ほ、本当に下着になってるぅぅぅぅ!

 やばいやばい、マンガなら目がグルグルになってる気がする……。


「じゃあな。また明日」


「え!? 帰っちゃうの!? ……帰ってるね」


 一人か……。

 ここから家まで五分。

 サッと行ってスッと帰ろう──


「──めっちゃかわい子ちゃんみーっけ!なあなあ下着ってことは色々オーケーって事だよなあ?」


 高校生くらいの人に目をつけられたんですけど。

 人生詰みに入ったよ、お兄ちゃん。

 ……って、こんな簡単に人生終わらせちゃいけない!


「いえ、何もオーケーではありません。失礼します──」


「──おいおい(笑) 逃げようとしてんじゃねーよ」


 腕掴まれると、ここまで緊張感が溢れてくるのか……!

 こんな男の人に私が勝てるわけない……。

 もう全てを諦めようかなあ。

 というか、なんで高校生の人が中学の敷地内に入っているんだろう?

 ……って、そんな簡単に諦めてたまるかああああ!


「くらえー!必殺『ダブルパーンチ!』」


 ……両手で殴りかかっただけだけどね?


「はっ、そんなんくらうかよ」


 そういうと男は、私のパンチをするりと避けた。

 が、私はその事想定内だったのだ。

 パンチの手を下ろさず、私は男の後ろを走り去って行った。

 男も気づいたようだ、私の作戦に。

 そう、私はこのまま逃げるつもりなのだああああ!

 全速力で逃げる私を、男は追いかけてくるが、通行人のいる道路に出ると、男も恥ずかしくなって追いかけてこなくなった。

 作戦通り!


「きゃー!へ、変態よ!!」


 まずい、歩行者道路にいる人達に変な目で見られ始めた。

 帰ろう。今すぐに。


「誰もいませんよね……?」


 私はボソボソそう言いながら、家の中に誰もいないのを確認した。

 兄は学校、両親は仕事かな。

 服を着て、部屋に走るように入った。


「う、うわああああん!もう嫌だ。学校なんて!行きたくない、外に出たくない」


 と、私がそんな事を思っていると。


「ただいまー。おーい叶美、プレゼントあるから入るぞー?」


 お兄ちゃん、学校に行ってたんじゃ……って、もう六時じゃん!

 そうか、あんなにも色々あったから時間が経ちすぎたのかな?


「いいよ」


「おーっす、さんきゅな。これ、今日誕生日だろ?だからパソコンをな」


 そっか、私今日誕生日だったんだ。

 こんな私の為にパソコンを買ってくれるなんて……!


「お兄ちゃんありがとう……!とても嬉しいよ」


「よ、喜んでくれて嬉しいよ!じゃあ俺はご飯作るからな!」


 私はそこから、パソコンにどハマりし、エロゲー好きになりました──


 ──現実


「そんな事があったのか……。お兄ちゃん気づいてあげれなくてごめんな……?」


 俺はその言葉を言いながら、叶美の部屋で大号泣だった。

 過去にここまで泣いたことはないってくらいに。


「別にいいよ知らなくて。それより部屋から出てって。もう要件ないでしょ」


「いいや、あるんだなそれが。叶美、君は今処女なのかい?」


 兄が妹にこんな事聞くなんてどうなんだろうか。

 完全にロリコンから変態へジョブチェンジしましたね。

 話の内容からするに、大丈夫そうではある。

 が、この謎の男より前に、香美に色々されてるっぽいからな。聞いてみないと……。


「兄さんがそんなこと聞いて何になるの?兄さんに得ある?私に得ある?多分無いよね?じゃあ聞かないで」


 この反応ってまさか……?

 うちの妹に限って、処女じゃないっていうの?

 俺以外の男とヤったってことなのか?

 ありえない、あってたまるかあああ!


「何黙ってるの?出てってよ」


「得有るか無いかって聞いたか?俺にはあるぞ。純粋に知りたい!」


 顔だけを前に伸ばし、めっちゃ真剣な顔で言った。

 この状況で笑うヤツもいないだろう。


「これ言ったら出てってよ?私はまだ……処女です/////」


「え、なんで隠そうとしたん?」


 考える間もなくそういった。

 中学二年生が処女で恥ずかしがるとかありえないと思うんですが。


「このご時世、中学二年生で処女なんて恥でしかない……」


 今ってそんな時代なの?

 じゃあ高二で童貞の俺って恥晒しでしかないってこと?

 つまり、俺と叶美がヤってしまえば、ウィンウィンの関係になれるんじゃね?

 うん、そうだな。いい作戦だ──


「──早く出てってよ!」


「ご、ごめん!」


 俺の意気地なし!

 何でそこで俺とヤろうとか言えないんだよ!

 夜十二時、風呂に入って俺は寝ることにした。


 朝起きて、時間に余裕があったので、一階で朝飯を食べながらスマホをいじっていた。


「ふむ、こんなことをしていても時間に余裕か。今日は平穏な一日を送れそうだな」


 家にいても特に何もなかったので、学校へ行くことにした。


「学校行って帰るって人生をお前はどう思うよ。俺は退屈でしかねーよ」


「そらしゃーねーだろ」


 俺の人生を語る話を一言で終わらせてくる志賀に、少し腹を立てながらも机に寝そべるように顔を乗せていた。


「浩介は暇そうだねー」


「いや、暇ではねーけどさ、なんか人生に飽き飽きしてきたっていうか」


「今日土曜授業で午前中に終わるでしょ?だから、昼から遊ばない?」


「「さんせーい!」」


 遊びを提案してくれた山田を神のように見ながら、俺と志賀は遊ぶ事を決意した。

 土曜、なんか忘れてるような……。


「あ!叶美学校行ったかな!?」


「「叶美って誰?」」


「俺の妹だよ」


「「妹いたの!?」」


 いちいち二人で同じ反応するなよ。

 軽くイライラするんですけど。


「いやー、今日学校行かないとやば──」


「──席につけ。今日のHRは、委員長から話がある」


 話を遮りながら担任が話してきた。

 皆、話し込んでる時だったのに空気読めない人だなあ。


「えー、皆さん、明後日からクラスマッチが始まります。今回は一日目バスケ、二日目サッカーです。家等で練習するように」


 偉っそうだなー。

 委員長なら当たり前なのか?

 でも、練習するようにはうざいよな。

 少しイライラしていた俺は、そんな事を思いながら、昨日の奈楠が一線越えてる時の動画を観ていた。

 これ、エロいよな。


「何観てんの?」


 隣の席の志賀が言ってきた。

 見せるわけにもいかないし、うまく言い訳しないと……。


「かーして!」


「ちょ、ばっ、志賀!」


「え……何これ……委員長と……彼氏?」


 やっちまったあああ!

 絶対観られちゃいけないやつを観られてしまった……。


「ま、まぁ何も気にするな。な?返してくれないか?」


「委員長!これはどういう事ですか!」


 マジでやめてくれー!

 志賀はそう言いながら、クラス全員の注目を浴びながら、俺の撮った動画を奈楠に見せていた。

 奈楠は顔を赤くしながら、自分の手で顔を包むように隠し、しゃがみ込んだ。


「これは一線越えてますよね!? 浩介が撮ってきたやつを見せてもらったんですが、流石にこれはヤバイですよね!?」


「お前、何言ってんだよおおおおおお!!」


 俺の高校生活が、崩れていくのを肌に感じた……。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る