間章2-2 裏の顔
「死刑囚二名は昨晩、牢を破壊し、更に見張りをしていた戦士を気絶させた後、逃走した模様。なお逃走ルートは不明。引き続き捜索を続けます」
「……報告はそれだけか?」
「は……以上ですが」
「……それだけかと言っている」
「え……と言われますと?」
「奴らを逃したポンコツ共の処理はどうしたのだと、わたしは訊いているのだ」
「そちらの処理に関してはまだ手付かずです。捜索が先かと……」
「一時半まで、そしてその後交代した戦士を牢に放り込んでおけ。事の終結次第、荒野の真ん中に縛って捨てることにする。リーダー命令だ、いいな?」
「りょ……了解しました」
「分かったならさっさと行けっ! わたしは使い物にならない奴とグズが嫌いなんだ!」
「し……失礼しました!」
ザッ! バタンッ! タッタッタッ……。
「チッ……トンチキどもめ。誰のお蔭でレジスタンスが成り立っているのか分かってねえのか……」
ジリリリン! ジリリリン!
「なんだぁ? 今度は電話か? もしかして奴からか……」
ギィ……カツッカツッカツッカツッカツッカツッ、ガチャ。
「エイン・ルージだ」
『フフ……』
「やはりお前か……」
『どうですか、そちらの居心地は?』
「戦士も悪質で使えない奴らばかり、設備はどれもこれも痛んで古く、旧式の武器、旧式の電子機器、旧式のトイレ……どれもこれもアンティークだ。しかも
『住めば都とはならなかったのですか?』
「むしろ、住むほどにその不便性と廃れ具合を嫌でも知ってしまう始末だ」
『そうですか……こちらはとてもとても快適ですよ』
「そりゃあそうだろうな。廃炉が既に決まっていた魔石発電施設の第三高炉。そいつをわたし達が破壊したことにより、第四高炉の稼働が早まった。確か、新しい高炉は電気供給量が以前の五倍にもなるとか言っていたな」
『ええ、これでマグナブラも、岡の上の連中と肩を並べられるほどの魔石エネルギーを手にしたわけだ。モチロン、得をしたのはこちら側だけではないはず』
「ふん……クライアントからはこっちもたっぷり報酬をいただいたさ。ほぼここの運用費用に回されてしまったが、一部はキッチリせしめた」
『相変わらずカネにがめつい』
「権威にがめついアンタに言われたくはない」
『フフ……』
「それで今回は何だ? 用件も無しで連絡をするほど、お前も暇じゃないだろ? なんせ、大臣職にまで上り詰めたらしいじゃないか」
『ほう、既に知ってましたか』
「ハッ! 基本的には脆いクオーツばかりだが、中にはダイヤの原石も交じってるってことさ。特にお前と対等に渡っていくには、諜報は不可欠だからな」
『そうですか……ではボクから伝えなくても、時期にそっちの耳には入ったかもしれませんね。近日中に、そちらの本拠地周辺でこちら側の部隊が展開されます』
「ほう……ついに見つけ出したか、ここを。しかしどうやって」
『方法は機密事項です。さすがにボクの口からは言えません』
「チッ……」
『今まで本拠地の位置をボクに教えなかったのは、ボクがあなたを裏切らないための保険……いえ、ボクからの隠れ蓑だったのかもしれませんが、しかしこちらも状況が状況でして、国内の問題でおたおたしてられなくなりました』
「総攻撃を仕掛けると?」
『フフ……これは警告です。今すぐレジスタンスを解散、もしくは降伏した方が身のためかと』
「カレンダー……わたしを裏切るつもりか!」
『裏切りなんて滅相な……そもそもあなたとは、組むといったウェットな関係を持った記憶もございません。ボクは地位を、あなたはカネを手にするために、お互いを利用し合う……そんなドライな関係だったと』
「ふざけるなっ! わたしはかつての……勇者の血統だぞ!」
『勇者? フフフ……そんな古いものに固執したあまり、王を殺した罪を着せられ、逃亡した憐れな兵士もいましたね……もうそんなもので後に着いてくる者など、この世には存在しない。勇者はもう、この世界にはいない。いらないんですよ……では』
プー……プー……プー……。
「グググ……グオオオオオオオオオオッッ!! ふざけんじゃねぇっ!! 誰のおかげでテメェはその座席に座れてると思ってるんだこのビチグソがぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
ガシャン! ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ!!
「はあ……はあ……そう……わたしは……わたしは勇者の血統だ! こんな所で野垂れ死ぬ存在ではないわっ!!」
カツッカツッカツッカツッガタンッ! ガシャッ!
「この剣が……太陽の剣がわたしの手元にある限り、勇者の時代は、ルージの時代は終わりはしない……」
シュラッ……。
「よってお前の時代は始まりもしないんだよ……カレンダー!」
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