第2話 絵の謎
「すごい絵でしょ」
仕事から帰ってきた映美は母と夕食の食卓を囲みながら、壁に立てかけた自分の拾ってきた絵に見入った。
「うん、昼間父さんと感心してたのよ」
「どこの誰が描いたんだろう」
「ほんとだねぇ」
「あそこに捨てるってことは近所の人なんじゃない」
「分からないわよ。ばれないように、遠くに捨てたかもしれないし」
「でもこんな大きなのそう遠くへは運べないよ」
「車だってあるんだよ」
「まあ、そうだけど」
「でも持って来ちゃっていいのかい」
「大丈夫だよ。捨ててあったんだもん。それに、あんなとこに捨てたって収集車は持って行ってくれないもの。逆に助かってるはずだわ」
「それにしてもすごい絵だね。やっぱりプロかね」
「美大生とか」
「名の知れた作家の作品だったりして」
「一億で買いたいんですが。とかなんとか誰か言ってきたりして」
「ドラマじゃあるまいし」
「でもそんな予感のする絵だよね」
二人はよからぬ皮算用で盛り上がった。
「あっ、そうそう変な男がいるんだよ」
「えっ」
夕食も食べ終わり、二人で人心地お茶を飲んでいる時だった。母は唐突に話題を変えた。これはいつものことで映美は特段驚きはしなかった。
「ほらっ、あの公園横の小汚いアパートの」
「ああ」
映美は思い出した。あの絵を拾ったゴミステーションのある公園の向いに建つ築何年になるだろうか、相当古びた文化アパートのような簡素な集合住宅が建っている。
「そこに住んでるっていう変な男がいつも公園にいるんだって」
「へぇ~、私は見たことないな」
「なんか見るからに怪しい男みたいだよ」
「へぇ~、そんな人いたんだ」
「ちょっと知恵遅れじゃないかね」
映美の母は畳みかける。
「お母さんは見たことあるの」
「あたしはないよ」
映美の母は顔をしかめて否定した。
「近所の噂になってるんだよ」
「そうなの」
「気をおつけよ。こんな世の中だからね」
「大丈夫だよ」
「それにしても気持ち悪い」
「人を見た眼で判断するもんじゃないわ」
「そうだけど、なんか気味悪いわ。近所の噂にもなっているんだよ。本当に気をお付けよ。変な人は本当にいるんだから」
「大丈夫よ。それにしても本当にどんな人が描いたんだろう。一度会ってみたいわ」
映美は、もう一度絵の方に関心を向け、その中の青い鳥を見つめた。
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