遠征

旧帝国の中枢種族は、自らの腐敗と抗争から大戦争を引き起こし、

銀河系の枢要部を荒廃せしめたり。

しかし、新帝国によりてこの〝銀河系内戦〟が平定されんとするや、

彼女達はアンドロメダ銀河に逃亡して、同地の枢要部を共同で征服し、

後に〝銀河系襲撃〟と呼ばれる反撃を加え来たれり。

新帝国の理事種族は、先帝を滅ぼせし悲劇的な戦争を終結せしむべく、

アンドロメダ銀河遠征作戦を実施せり。


彼女達は遠征用の母艦として、巨大なる恒星包囲型構造物ダイソン・ストラクチャーを利用せり。

この交差円環の形状を有する構造物は、

中枢種族間の内紛によりて滅びたる帝星防衛司令官オファニエルの遺留品なり。

理事種族達はこれを修復し、超光速駆動装置を設置して、

自らの可動惑星、小惑星及び艦艇をその内側に分散配置し、

アンドロメダ銀河への超空間跳躍を実施せり。


アスタロト、アスモデウス及びベールが率いる本艦隊は、

前線正面における戦闘及び交渉を担当する、通常作戦部隊なり。

中枢種族は、新帝国が非酸素系種族を敵視・迫害せるとの虚偽宣伝によりて、

同銀河の非酸素系先住種族を動員せり。

これに対し、熱誠ねっせいに満ちた交渉で知られるアスモデウスは、

多数の無人通信艦艇を通じた説得によりその影響を払拭し、

先住種族との講和を成立せしめたり。

然し、これに先立ち実質的に宣伝の欺瞞ぎまんを暴きたるは、

同艦艇群を護衛せる酸素系種族アスタロトの機動艦隊と、

彼女達を支援せる非酸素系種族ベールの補給艦隊の、献身的な相互協力なり。


新皇帝の使節団、アドラメレク及びアモンが率いる後方艦隊は、

本国との連絡・輸送及び政策的配慮を担当する、後方支援部隊なり。

異種族の文化・心理分析に優れるアドラメレクは、

アスモデウスの交渉を支援して大成功に導きたり。

これに対して中枢種族は、傘下の酸素系先住種族に、

後方艦隊への自殺的な長距離攻撃を強要せり。

然しアモンは、超空間を経由せる照射型動力兵器の〝砲身〟を用いて、

彼女達をその司令部の直上に無傷で送還し、

新帝国の善意と先進技術を示すことにより、

先住種族を無血にて離反・降伏せしめたり。


ストラス、アミー、ヴォラク、バールゼブル及びグラシャラボラスが率いる

分遣艦隊は、旧帝国中枢種族の発見及び捕捉を担当する、特殊作戦部隊なり。

中枢種族は〝炎の王〟の超新星兵器によるアンドロメダ銀河中央部の焦土化と、

その機に乗じたる〝剣の王〟の機動艦隊による反撃及び逃亡をたくらみたり。

然し、ストラスらの広域戦略偵察とバールゼブルらの遠距離精密攻撃、

グラシャラボラスによる艦隊戦は、これらを未然に察知し、阻止・撃破せり。


新帝国種族は人道を尊びつつ、協力して勝利を収めたる後、

新皇帝の指示によりて武器取引業者に扮し、

戦後復興のための武装解除・武器回収も適切に行いたり。

新帝国政府は詐術的手段による武器の回収につきて謝罪し、

同等以上の価値の復興用資材を以て補償を実施せり。

かくして新帝国は、可能な限り人道的な手段によりて、〝大戦〟を平定せり。

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