第10話「10話はハイロック自身の作品」

 仮のエンドです……。終わらせたくないなぁ‥‥‥。

 どうぞ!

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第10話 「冷セイと情ネツの間」 


ポカーンとしたまま時が流れる……。

 いやいやこのままじゃいけない、箕面先生と只野の罪はしっかり追求されなければならない。

「そんな理由で、先生や体育館のみんなを傷つけたんですか先生っ!?」

 俺の攻撃に傷つけられもはや身動きの取れない箕面先生は膝をつけて座っている。その先生に僕は大声で詰問する。


「……いやいや傷つけたとは言うけど、私はだれも傷つけてはないよ勇者君。」

 そんなことをあっけらかんとした表情で箕面先生は言い出した。もっともあっけらかんとした表情とはいうものの、俺にはミノタウロスの表情なんてわからない。


「何を言うんだ、少なくとも山田ジャンヌや福田ジャブ、薩摩チェストはあんたに傷つけられたじゃないか。」

 福田ジャブなんてかわいそうにかなりの勢いで吹っ飛ばされたんだぞ。もしかするとそのショックで痩せてしまうかもしれないじゃないか。

「いやいや、君たちが急に襲い掛かってくるから、それを払いのけただけじゃないか。力加減がわからなくてやりすぎたとは思うが……。」

 むぅ、そういわれてみれば正当防衛なのか。

「異議あり!」

 急に今まで黙っていた福田ジャブが声を上げた。

「先生よぉ、俺を吹っ飛ばすのは正当防衛だとしてもよ。ビームまで出すのはさすがに過剰防衛なんじゃねーのか。」

 おぉ、ジャブ君、素晴らしい意見だぞ。さすが、試合の前にまず口で相手を言い負かすことを信条にしてるだけのことはあるな。


「いや、叫び声をあげて威嚇しようと思ったら、なんだかビームが出てしまっただけでね。こんな破壊することになるとは思わなかったよ。まぁ破壊した体育館は私が後で直しておくよ。幸い体は大きいのでね。」

 むぅ、故意じゃないというならば、違法性は阻却されてしまうなぁ。

 刑法犯が成り立つためには、構成要件に該当し……いやそんなことはどうでもいいのだが。


「まって、先生はだって不特定多数のみんなにビームを発したって只野が言ってたわ。」

 マノマオも声を上げて抗議する。正義感の強いマノマオが箕面の行為を許せるはずがない。

「そんなことはしてないよ。この体になって体育館に潜んでたんだが、まぁ授業で使った時にばれてしまってね、みんな勝手に逃げていったよ。」

 確かに只野は『今にもビームを発しそうな感じ』と言ってただけだ。実際には何もしてない。

 ってことは何かい、俺らは勝手に舞い上がって体育館に乗り込んで、魔王を攻撃したら、正当防衛で返り討ちに会ったってだけってことかよ。

 いや、だめだ、そんなかっこ悪い結末は勇者として許されない。

 ふと周りを見回すと皆もやり場のない怒りで、意気消沈とした顔をしている。

 そ、そうだ悪いのはすべて只野じゃないか、只野をやり玉にあげよう。


「おい、ただの元はと言えばお前が大根女だいこんじょと、セ、セックスするから悪いんじゃないか!?」

 そうだ、なんでそんな変な生き物とセックスしたんだよ!

 お前がそんなことしなければ、この問題は起きなかった。そもそも俺は家でゴキブリなんて飼ってねーよ。


「童貞の勇者にはわからないだろうが、あれはいい女なんだよ。ねぇ先生。」

「いいから只野君は大根女を返しなさい。」

 

 ……なんだよ、二人そろって大根女大根女って、そんな人間だかなんだかわからない女の何がいいっていうんだ。

 ……ふと俺に謎の感情がわき上がっていった。

 なぜだ、俺は今回の体育館騒動とは別の感情に支配されて、怒っている気がしてならない。この感情はいったいなんだ。内から怒る衝動……。

 わかった、分かってしまった。

 これは嫉妬だ。

 間違いなく俺は嫉妬している。

 なぜだ、俺は何に嫉妬しているというのだ。

 わかっている、ずっとわかっていたことだが認めずに来た。しかし俺は実は行動では示してしまっていた。あいつの髪の毛を毎日持ち帰るなんて異常に決まってる。

 だめだ、もう俺は自分をおさえることができない。


「ムラト!!只野ムラト!俺はお前が好きだ!」

 話の展開をすべて無視して、俺は愛の告白を堂々と只野に向かって放った。

 恥ずかしい気持ちなどない、俺は勇者だ。堂々と言うべきことを言う。

 衝撃の告白に、周りにいた皆がすべてフリーズする。


「な、何を言ってる勇者、俺は男だぞ分かってるのか。」

 只野は動揺して、そう答えた。さっきまでの落ち着き払った様子はみじんもない。

「分かっているさ、しかし人間以外にとられるなんて我慢ならん。俺はお前を大根女より愛する自信がある!」

 俺は両手を広げながら全身で只野への愛を表現した。何も持っていないにもかかわらず常に自信満々なムラトを俺は昔から尊敬していたのだ。


 しかし、その発言に答えたのはマノマノだった。

「勇者、何を言ってるの、なんで只野君に愛の告白をしているの?勇者は私のことを好きだったんじゃないの?ねぇそれに勇者だって私の気持ちは知っていたでしょう?それなのにこんな仕打ちってひどいわ!」

 今度はマノマノが俺に愛の告白を始めた。

 知っていたさ、俺もお前が好きだ。だがそれは俺が只野に持っている感情とは違うものだ。


 さらに今度は山田ジャンヌがマノマノの発言に続けた。

「何を言ってるのだマノマノ!私たちは永遠の愛を誓い合ったのではないのか?それを勇者のことが好きなどと、こんなひどい裏切りはない。」

 ジャンヌは、俺のことをにらみつけてから、マノマノに怒りを表明した。

 なんだお前ら二人はそういう仲だったのか。


「ちょっと待ったー!」

 今度は薩摩チェストが口をはさんできた。

「ジャンヌ殿!私は何度もそなたに恋文を送ったはずでござる。それがマノマノ殿とそんな関係とは……、思い直して拙者との関係を考えてほしいでござる。拙者はジャンヌ殿のために死ぬと決めているでござる。」

 おぉ、薩摩はジャンヌが好きだったのか、それは初耳だ。

 なんだか急にラブコメになってきたが。


 すると今度は福田ジャブが薩摩の言葉に続いた。なんだ福田ジャブもジャンヌが好きだったのか?ジャンヌはものすごく美形だからな。

「この流れならいうしかねーな、おい薩摩!おれは昔からお前の剣に向かう一本気な姿と、お前のしまったケツが大好きなんだよ。薩摩、俺と一つになろうぜ!」

 なんだよ、俺以外にもゲイがいるのかよ。

 なんだこのパーティ。

 すると今まで黙っていた只野が口を開いた。


「じゃ、ジャブ何を言ってるんだ?俺という男がいながら、お前は俺だけじゃなくて薩摩にも手を出す気だったのかよ?」

 

 な、なんだと!?

 すでにジャブは只野を喰っていたっていうのか、なんてなんて非道な奴だ。


「ふざけるな―!!」 

 俺はそういって叫び、そしてパーティ全員による言い合いが始まり、このまま体育館で小一時間にわたり全員の思いのたけを話し合った、いや叫びあい、ののしりあったのだった。


 そういえばだれか一人忘れてるような気がするが、まぁ彼は恋愛に興味なさそうだしな。

 こういって魔王騒動の最後は恋愛のゴダゴダで幕を閉じるのだが、僕たちはこの言い合いが後に、とんでもない悲劇と惨劇を生むことになるとは、このときはまだかけらも思っていなかったのである。

           

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