第10話 お姫様とのお買い物その1
ティリアが泣き止み落ち着いたところで、今後の事について皆で話し合っていた。
「ティリアさんの気持ち、私も分からないわけではないの。」
「私も昔に親と喧嘩して家出した経験があるの。」
「涼祐さんのお母様も家出した事あるのですか?」
「そうよ、だけど今は親の気持ちが分かる。」
「あの時なぜ父が私を怒ったのか、それは私の事を本気で大切に思うからこそ怒ってくれたんだと思うの。」
「本気で大切に思うから...。」
「そう、私がティリアさんを怒ったのも、貴女を大切に思ったから。」
母さんは会ったばかりの人でも受け入れる事のできる懐の深い自慢の母なのである。
伊達に昔300人を束ねるレディースの総長だっただけある。
「私の事を大切に...。」
「私は涼祐さんのお母様に出逢えて本当に良かったです。」
「本当に良かった...。」
先ほど泣き止んだティリアが瞳に涙を浮かべて、また泣きそうになる。
「あらあら、泣かないの。」
母さんはティリアを再度優しく抱きしめる。
「若い頃ってやりたい事たくさんあるものね。」
「せっかく日本に来たんだから、ラピス王国に帰る前にいっぱい楽しんで、美味しいもの食べて、楽しい思い出をたくさん作ってね。」
「少しくらい帰るのが遅れても、ちゃんと謝ればティリアさんのご両親も許してくれるわよ。」
ーーーーー
「ティリアさんの事は涼祐が責任を持って無事に異世界のラピス王国に送り届ける事!」
「涼祐! 母さんとの約束ね!」
「「分かった、約束は必ず守る。絶対に俺がティリアを"無事"に送り届ける。」」
「とりあえず、そのドレスでは歩くのも大変でしょうから、お洋服買いに行きましょうか。」
「あとパジャマとか下着とか必要なものいっぱいあるしね。」
「グフッ」
母さんよ...その手の話は思春期真っ最中の俺には刺激が強いぜ、思わずザクとは違う青いヤツの名と同じ咳が出ちまったよ。
「なに〜兄ちゃん照れてんの〜ウブだなぁ〜ウブですなぁ〜。」
俺は照れる気持ちを千夏に見透かされて、隠すように平然を装う。
「そうだよ、俺は純粋無垢でピュアを体現したような男だからな。」
「それ自分で言うセリフじゃなくない?」
「だろうな。」
俺と千夏を見て呆れた顔で母さんが
「ほら! バカみたいなやりとりしてないで、買い物行く準備してきなさい。」
と檄を飛ばす。
「その他に歯ブラシとか日用品も買わなきゃね。」
「すみません。 私なんかのために...。」
ティリアはソファから立ち上がり、申し訳なさそうに深いお辞儀をする。
母さんはティリアの頭を撫でて
「子供は気なんか使わなくてもイイの! ティリアさんが日本にいる間は"私が"ティリアさんのお母さんだからね。」
「子供がお母さんに気なんか使わないでしょ?」
「お母さん...ですか?」
「そうよ、だから気なんか使わずに思いっきり甘えなさい!」
母さんらしいな、昔から困ってる人を見たら放って置けないんだよな。
我が三上家の三カ条は、困ってる人がいたら助けること、自分の行いに責任を持つこと、そして交わした約束は守ること、この三つだ。
だから、ティリアを助けるのは三上家にとって当然の事なんだ。
「そうだよ、母さんの言う通りティリアは何も気にしなくて大丈夫だよ。」
「そうそう、お母さんと兄ちゃんの言う通りだよ、ティリアたんは甘えちょれー。」
「楽しみだな〜ティリアたんと一緒にグヘヘなお着替えターイムリーツーベース♪」
「虎と巨人はレッドな鯉に勝てない〜♪」
妹よ...お前が使っている言葉は日本語ではなく異世界語なんじゃないか?
兄ちゃんは千夏の将来が心配だよ...。
「涼祐...皆さん...本当にありがとうございます。」
そうして、母さんが運転する車に乗って皆で買い物へ行く事になった。
そして、後日"自分の行いに責任を持って"ティリアの洋服代などを俺が支払う事になる。
おこづかい何ヶ月分だよ...。
それをこの時の俺はまだ知らない...。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます