幻想移民 異世界百鬼夜行

みかにゃん96

第1話☆とある世界の攻防

ロベリア王国クラクフ伯爵領の南に有るランダ―ト平原に進軍したクラクフ騎士団は、迎撃目標である『破軍』の軍勢と対峙していた。

騎士1000騎 徴兵した農民兵3500余 急遽掻き集めた『迎撃軍』としては上々で有ると、この領地を預かるマリア・デ・クラクフは思う…


「ここで食い止められば!被害も少なくて済む!」


「は! しかし 破軍の動きが遅いですな? 御嬢様」


騎士団長のドリストバル・レインはそう訝しむ 確かに『破軍』の動きはとても遅く 陣形などもとより組む気も無いのであろう事が見て取れる。


装備も貧弱で欠損も見て取れる まるで『戦った後』のようだが、此処で叩ければ『破軍』による領内の被害は少なくて済むのだから何としてもここで叩くべきであろう。


破軍とは『魔物』で構成された『軍』である、魔物の多く存在する領域で稀に『支配種』が現れては人類領域を侵食してくる『自然現象』で有る。


「理由はどうあれ 今が好機!ここで叩き潰す! これより先には進ませはせぬ! それと私の事はクラクフ公と呼べ!」


「分かりました! 御嬢様」


各部隊に矢継ぎ早に指令を出していく 軍団と言えぬほどに乱れている敵を一気に討つ!


「弓を持物は矢を全射出 各隊魔撃は控えろ!騎兵第二部隊突撃せよ! その後歩兵は前進し乱れた敵を討て! 遊撃 左翼 右翼で推し包み!殲滅せよ!」


既に隊列を整え 号令待ちであった 騎兵第二部隊が『破軍』に騎馬500による突撃を慣行する 『破軍』は勢いを殺され真っ二つにされ 混乱し乱れる そこに続く歩兵2000の攻撃に『破軍』が次々と討たれていく 左翼騎士200右翼 騎士200の遊撃騎士達の見事な連携で次々と刈り取られていく『破軍』


「いやに脆過ぎますな…解せませぬ…」


ドリストバル・レインは55歳になる老騎士であり14歳で騎士団入りして既に41年もの間 このクラクフ伯爵家に使える騎士として「破軍」とも何度も矛を交えて来た男である。

しかし今回は余りにも簡単に掴んだ勝利を訝しんで居る様だ。


「別働体でも居ると?」


「そのような報は受けてはおりませぬが 御嬢様 如何致しましょうか?」


ドリストバルは私が子供の頃から戦術指南に剣術指南をしている為か伯爵位を継いだ私を「御嬢様」呼ぶのを止めるつもりは無いようだ。

それはそれで親愛の証なのだろうが、いつかは一人前と認めて貰いたいものだ  それもまた今後の課題としておこう。


「兵を一端 街まで戻す」


「分かりました 全軍領都クラクフに撤収せよ」


今回の『破軍撃滅』はまるで何者かに操られるように『何もかもが上手く』いった運が良かったのか? まだ伯爵位を継いだばかりの私には分からない 経験不足を上げればきりなど無いのだから…


今回の『破軍』の構成はゴブリン・コボルド・オークとッ人型亜人モンスターばかりだったが…どれかの支配種が途中で討たれたのかもしれない…もしかして?あの方が?


打ち破る事が出来た『破軍』の魔石や素材部位を剥ぎ取り 残りを魔法で穴を掘り埋めて、クラフク領軍は撤収していった 。


ランダ―ト平原での『戦い』はこうして『クラクフ領軍』の『圧勝』で終わったのであった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「… … …」


十二単を着た銀髪の女が…水晶でその戦いをずっと見ていた。


見ていたと言うか…操って居たのだが…


その女は一言で言うと『傾国の美女』である。


白く透き通る肌 流れる銀髪は見る角度によって金色にも見える。


瞳は青紫で白目は薄く赤い…頭の耳は時折かすかに動き… 何より白金色の尻尾が九本…


彼女は白面金毛九尾狐 又は玉藻前とも言われる 『日本三大悪妖怪』の一角であった。


「実験終了…傀儡の術は使えるわね… 金剛…どう?この戦い」


九尾の問いかけに答える『花魁』


着崩した着物から覗く大きな胸元に少し乱れた髪に幾つも刺さる『かんざし』が女の溢れ出る色香を漂わせていた。


額の小ぶりな角二本が彼女の存在を知らしめている。


彼女もまた『日本三大悪妖怪』の一角である『酒呑童子』と呼ばれる『鬼』であった。


「噂に聞いていた 魔法とやらが散発的で とても弱く感じたのだけれど?」


「魔法使いとやらが少ないと報告には上がっておりますからねぇ 出し惜しんだ?とも考えられますが…」


鬼の言葉に答えたのは『執事服』かろ『黒い羽根』の出ている『老紳士』であった。


彼もまた『日本三大悪妖怪』の一角 大天狗 又は祟徳天皇とも呼ばれている大妖怪である。


「ゴブリン3000 コボルド2000 オーク1000 低級な魔物を選んで傀儡で操ってぶつけただけだから これで相手の一割削れるなら…上々?」


傀儡とは死体を操る術で、数万単位でも操れるチートスキルである 欠点は本来の力の半分ほどの力しか出せない事と、死体でないと操れない事である。


前もって 発生した『破軍』を討ち倒して『傀儡』で操り『領軍』とぶつけて力を試してみたのが今回の『ランダート平原の戦い』の全容である。


どの程度の数の軍にどれほどの軍略と兵数で挑むのか?かかる時間かけるお金 今回の実験で色々分かった。


「私一人でも 叩き潰せる程度?に感じるけれど…」


煙管をふかし始める鬼花魁…人の事は言えないが『ぐっと来る』 なんでオレは女をやっているんだろうか…


「慎重に 勇者の類が居るかもしれないし あくまでも実験だから…」


実際相手の力の一端を見られたのだから今回の『戦争』はソコソコ有意義だったと思う、処理した『破軍』の有効活用が出来たのだし、そもそもこちらの被害は0だ。


「融和路線で行くのでは?」


大天狗の問いかけに、俺は…


「移民の布石です」


俺達皆で『異世界移民』始めます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る