第5話

友人が北海道へ帰ってからは彼と僕はずっとメールで連絡を取り合っていた。癌の事や治療の事はわざと触れなかったが、彼からの返信がだんだん間が開いてきて、友人の状態がきついものであるのだろうと思い、メールの頻度は控えるようにしていた。

ある時自分が送ったメールに対して友人からの返信が途絶えた事があった。たった一週間だったが、この頃は自分も神経が過敏になり彼がいつ倒れてもおかしくないと思い込むようになっていた。そうして八日目に、返事がないので心配している事、体調不良ならゆっくりでいいがまた返事が欲しい旨を押し付けがましくならないよう言葉は慎重に選んでメールした。しかしそのメールは友人の逆鱗に触れた。彼も病魔と闘い疲れ切っていた時だったのだろう。温厚な彼が僕の短慮を攻め立てるメールを送ってきた。その時気付かされたのだ。絶対に自分はするまいと思っていた過ちを犯してしまった事に。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る