第3話

最近同じ話の繰り返しだ。大学を出れば早く就職しろと言われ、就職すればもっと良い所はなかったのかと言われ、仕事に慣れてくると生きがいはないのかとか、結婚しろとか言われる。

それなりに普通の道を歩んできたはずだ。しかし要求を一つ一つ自分なりにクリアしてもそれは認められる事はなく、再び新たな要求がつきつけられ、絶望へ突き落とされる。

要求は母親の口癖とは知りつつも、一度開いてしまった傷口には絶え間なく塩がすりこまれ、傷を悪化させていく。最初は軽く聞き流せた母親の愚痴にも、最近は口論にまで発展することが多くなった。

子供の頃は反抗期がなくて、親と「仲良し」でいられる事が誇りでもあったのに。これじゃあ逆戻りじゃないか。

母親の愚痴を遠くに聞きながら明日は北澤の家へ行こう、二、三日泊めてもらおう、と思った。


北澤は学生時代の友人で、単純明快な男だ。理屈より直感で行動し、知識より経験を信じる。正反対のタイプなのに、いや、だからこそ僕は彼に、惹きつけられてしまった。

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