第1話

 予想通り映画は、恐ろしくつまらなかった。アメリカ製の典型的娯楽映画で、美男美女が恋に落ち、悪い奴が現れ、車がビルに突っ込んだり爆発したり、特撮が無駄にすごかったりした。


 


映画館を出ると正午になっていた。むっとした、夏らしい熱い空気と日差しに目を細める。


「面白かったな」


 北澤が満足そうに笑う。単純な物が好きなのだ。


「まあ・・・、ラストは良かったかな」


 ハッピーエンドは好きだ。どれほど単純でも。


「何? いまいちだった? 」


「あれなら絶対あっちのがいいよ。ほら、前に言ってたやつ。北澤も絶対気に入るって」


「やだよ。お前のって小難しいから」


 北澤が笑う。僕も笑う。



ああ、やっぱりそうだ。


僕はこの、単純さを愛したのだ。


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