第45話 雪の日の買物

 「今は言えない」

 「どうして?」

 「言いたくない時があるんだよ」

 思わず睨んでいた。

 そしたら苦笑ぎみに言ってくる。

 「分かった、今の言葉は卑怯だったな。でも、今は言えない」


 それでも、一番聞きたかった事だ。

 「あ、そうだ。明日の夕食、外食しよう」

 「え?」

 「卒業と就職祝いだ」

 「へ、…me?」

 「他に、誰がいる?」

 「言っておきますが、高級店は止めてね」

 「はいはい。んーと…、ロシア料理とドイツ料理と中華。どれがいい?」

 「え、なに、そのこってり感たっぷりのチョイスは」

 「若者なら、こってりだろ」

 「食べる時は、食べますよ?」

 「知ってる」

 「それならドイツ料理」

 「OK!18時半に病院の裏口で待ち合わせようか」

 「病院の?」

 「そう、病院から徒歩で5分も歩かないから」

 へー、そんな近くにあるんだ。

 ここからだと、その店まで15分弱か…。なんか楽しみだ。


 「ん、楽しみにしてます。あ、そうだ。夕食後にはここに来て。良いでしょ?」

 「ああ。明後日の朝は、ここから仕事に行こう」

 その言葉に対して自然と笑顔になっていた、ゲンキンな私。

 「やったぁ!」


 ふふふ…。わーお、嬉しいなったら嬉しいな。

 明日が楽しみだ。



 翌日の午前。

 夕食後は、ここに来てもらうのだから何か飲み物とツマミになるものをと思い、その買い出しに外へ出ていた。3月初旬とは言え、まだ雪はチラチラと舞ってる状態で寒い。誰もがコートを羽織りマフラーも手袋もしていた。


 友明がスーパーへ入った数分後、その店は道路側が大破した。



 その日の午後のニュース。


  《都内で、スーパー大破!》


 『今日の午前中に、1台のトラックが雪でタイヤを取られてスーパーへ突っ込んでしまうという事故が起こりました。

 現在分かってる事は…、そのトラックの運転手は、ワイパーを掛けていても大雪で前が見えず、その雪にタイヤを取られスピンした模様です。

 その巻き添えをもらった感じで、数台の車も同じように、そのスーパーへ突っ込んだものと見られてます。』

 『その当時、店内にいたのはスタッフ5名と客16名の計21名。

 21名とも重軽傷を負い、近くの病院へ救急として分散され運ばれました。

 詳細は、分かり次第お知らせ致します。』

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