俺様ボスと私の恋物語

福山ともゑ

第1話 出会い


 ボンッ!!


「うわっ…」


 いきなり、何かがぶつかってきた。

 尻から座るように落ちては、その拍子に右足首を捻った。


「いってぇなぁ…」

 と、ぼやいてたら、その何かが動く気配がした。


 なんだよ、一体何が当たったんだと思い、そっちの方を向く。

 すると、車が動いてる。


 え?!


 この狭い道を車が?

 しかも、その車…

 ベンツだ。

 父ちゃんが持ってるベンツより格段に良いベンツだ。

 道を知らんヤツが、そんな車でここを運転するな!


 しかも、その車は目の前にあるコンビニの駐車場に入ろうとしてる。

 ほー、あそこに車置いて、こっちに来る気か?

 ま、いいけどさ。


 と、睨みながら動向を見てたら…

 なんと、その車は車道を目指して、そのまま走り去っていった。


 って、おい!


 当て逃げかよ。



 悔しい、悔しい、悔しい!!

 絶対に許せん、あのヤロー。


 なかなか戻ってこないベンツに毒づき、再度目的地を目指す為に立ち上がる。


 ん?

 なんか、足の感覚がおかしいぞ。

 もしかして、やってしまった・・・?


 来月初めには、合気道の段試験なんだぞ。

 これに合格すれば、クソオヤジを超えること出来るのに・・・


 びっこ引きながら、目的地に向かう。

 最悪だ、最低な日だ。


 龍三先生になんて言おう?

 怒られ、喝を入れられるだろうな。

 はぁ……


 ため息つきながら目的地である、龍三道場に着いた。

 ん?

 すると、さっきまで睨みつけてたベンツが駐車してあった。


 あのヤロー。

 当然ながら怒りがこみ上げてきた。


 痛いのを我慢して、道場に入ると、

「あのベンツ野郎は、どこのどいつだ?」


 すると、見慣れないヤツが1人いた。

 長身で、体格も良く、オシャレなスーツを身に着けてるハーフっぽい感じのヤツ。


 ツカツカとあいつの前まで行き、一気に言ってやった。

「貴様か、あのベンツ運転してたのは!

 あんな狭い道をあんな車で走りやがって…

 標識に書いてあったろ。

 車、通れませんって。


 しかも、この私に当てておいて、そのまま逃げるなんて、絶対に許せん。

 お陰で、右足首を捻ってびっこ引き状態になってるんだぞ。

 コンビニの駐車場に車置いて来るのかと思ってたら、そのまま走り去りやがって…

 来月には試験を控えてるんだぞ。

 どうしてくれる!」


 そいつの胸ぐらを掴んでは睨みながら糾弾してたら、龍三先生の手により引き離されてしまった。

「む。なんで?」

 と、先生を睨む。


 そしたら、そいつは一言。

「あぁ、あの人は君か。可愛くて、女性かと思ってたんだよ。

 あの睨み顔は忘れられない。

 今も、その睨み顔だからね。

 ふふ… 納得いったよ。」


 君なんだね、うんうん。

 と言いながら、こっちの手を握ってこようとする。


 こいつ、天然か?

 でも、許せないことは許せん。

 もちろん、その手は跳ね除けてやった。


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