Code 160 大量のゾンビ兵を迎え撃て!



「おっと、動くな!」

「いつの間に!これはどういうことだエンぺリル」

「それはこちらのセリフだ、何をするザイオ!」


 いつの間にかハーネイトとエンぺリル達はザイオとその部下であるゾンビ強化兵及び小型魔獣の群れに包囲されていた。エンぺリル達もまた、ザイオの掌で踊らされていたにすぎなかった。この試合自体が、ザイオが巧妙かつ間接的に仕組んだ罠だったのである。


「どうしたシャムロック!」

「スタジアムの周辺で屍のような何かが動いて暴れております。数は26」

「おそらくザイオの仕業だ、全部仕留めてくれ。こちらはザイオ本人を発見した」

「ゾンビ風情が、私にかなうとでも?嵐風脚!」


 通信が入るハーネイトはすぐに応答する。シャムロックはハーネイトに通信で状況を伝えるな否や、突如現れたゾンビを相手に巨体に似合わぬ俊敏な動きでボディーブローやアッパーをかまし体を粉々に砕いていく。サインは魔印による妨害と、AM星の戦士の中で最も華麗と称される脚技を合わせゾンビたちのスタジアム侵入を阻止する。彼もまた、ハーネイトと同様にナマステイ拳法の達人であった。


「エレクトリール、至急スタジアム周辺の奴らをしとめる!」

「街に被害を出さないように、難しいですがやりますよ!」


 リシェルとエレクトリールも通信を傍受し、速やかに支援攻撃に入る。街中の被害を減らすため、いつも以上にリシェルは銃の引き金を繊細に扱い引いては、一体ずつ確実に目標を屠っていく。エレクトリールは上空を飛んでいる飛行ユニットのついたサイボーグゾンビ兵を倒すべく、禍々しい次元関門を開きイマージュトリガーを媒体にライフルを召還すると、眩いほどの電撃を銃口から放ち敵を撃墜していく。


「おいおい、魔獣まで現れやがった」

「どうもザイオの手下たちね。ヴァルハさんから聞いた情報と合致するわ」


 屋根から監視していた南雲と風魔は、観客席に現れた魔獣の群れと、何枚ものカードを確認した。これらからこの魔獣たちはザイオが用意したものであるとすぐに判断し、ハーネイトたちに加勢するため飛び降りながら創金術を用いて各個撃破していく。


「南雲と風魔か!すまんがあそこにいる逃げ遅れた審判たちを救出してくれ」

「ああ、あそこにですか、了解しましたマスター!」

「そこの貴方たち、私たちについてきなさい!」


 ハーネイトの指示で南雲と風魔は審判3人を救出しスタジアムから離れる。彼らに迫る追っ手に対しハーネイトは怒涛の剣銃(ブレイドバスター)で打ち払う。そんな中、けたたましくも聞き慣れた声が響いてきた。すると空からサルモネラ伯爵とリリーが現れる。


「へい相棒、英雄ってのは、遅れてやってくるんだったけな?だがよぅ、早く来た方がいいに決まっているよなあ?」

「は、伯爵!戻ってきたのか」

「ええ、私もよハーネイト。話は聞いたわ、加勢するわよ」


 伯爵が別行動をとっていた理由、それは自身の能力を拡張するためであった。同胞の力を吸収することで、新たな技を繰り出せる。半ば契約関係に追い込み、眷属として利用する方法を確立するためリリーとともに各地を周っていたのであった。しかし騒ぎを聞きつけ戻ってきたのである。


 問題はその後であった。電光掲示板の上に巨大な回転斧をもってたたずむ巨人、そう、ユミロが来ていたのであった。


「なぜ俺を試合に呼ばなかったのだマスターーーー!」

「ユミロ!なぜここが」

「リリエットの話、聞いていた。しかし彼女が一方的に決めた、俺、参加したかった!ぬぉおおおお!」

 

 実はホテル内でハーネイトとリリエットたちの話を聞いていたがついていきたいと言おうとした矢先に先に出ていったため秘かに追いかけていたという。彼自身体を動かすのが得意で人一倍ブラッドルに興味を持っていたが、あまりの巨体に目立つのはあれだということでハーネイトたちは誘うのをやめたのであった。


「まずいな、ユミロ、今度の試合は出てもらう。というか今回のも出ていればもう少し楽だったはずだったな……。だが今は敵を倒してくれ!」

「ぬん、了解したぁ! 」

「ユミロ、私の攻撃に合わせてください。ガーンデーヴァショット……! 」


 それからのハーネイト達はまさに鬼神の如き働きを見せた。創金剣術を巧みに使い敵の動きを止めながら、それに合わせ伯爵やシャックスたちの凶悪な戦技が炸裂する。


「ブッ醸すぜ、ヒャッハハハハハ!醸死祭の時間だぜ!」

「伯爵!もう少し加減しないとハーネイトたちまで、もう!にしてもゾンビさんにはお帰り願うわよ!」


 伯爵は周囲の眷属を凝縮し菌人形を作り、兵隊としてゾンビ兵たちと戦わせながらその肉体を醸して自身の晩御飯にしていく。それをしやすいようにリリーが五封方陣や魔柱鉄杭などの支援系無属性魔法を用いて、敵戦力の分断を図る。


「ある意味予想していたが、まあいいぜ、かかってきな。鬼槍のボガー様が相手だ!」

「フッ、この程度の敵、どうということもない。蒼赤剣・輝光斬!」

「燃え尽きるほどバーニング!喰らえ、カグツチ!焔神厄嵐(えんじんやくらん)」


 ボガーは槍を召還し手元で回転させると風圧で魔獣たちを押し返し寄せ付けない。それに合わせシノブレードは霊量剣こと蒼赤剣を用いて鮮やかに敵をみじん切りにし、残った敵とその残骸を合わせてブラッドが焔の渦巻きを手元から放ち焼き尽くしていく。リリエットは桃色之刃衝、ヨハンは衝撃波で別方面から迫るゾンビ兵を撃退していく。

 彼らの恐ろしいほどの奮闘により、わらわらと現れしぶとい300体ものゾンビ兵と数十体の魔獣はわずか一分でこの世から消滅していた。


「私たちの方が強いって、はっきりわかるわね?フフフ」

「そんなバカなぁあ!あれだけの魔獣を、一瞬でだと!」

「相手が悪かったなじいさん、俺たちゃ化け物のなかでも極めつけなんだからよ!」

「まさか、貴様か!オーウェンハルクスの悪魔!」


 リリエットは高笑いしザイオたちにそういい、かなうはずもないから降参しなさいという。そして流石のザイオも伯爵のことについては知っており、よもやこんなところで出くわすとは思ってもいなかったことであった。


「それにあれは、DGの秘密兵器が一つ、メルウク人っ!」

「我が同胞をもてあそんだ、お前らは許さんぞ!」


 ユミロはザイオの方を見るないなや強烈な敵陣突破を行い全てを薙ぎ払いながら猛追する。しかしザイオは巧みに追撃をかわしながら逃げようとする。


「こりゃ私なしでもやれそうだな……いや、やるべきことがある!私はザイオを捕らえる!他は兵士たちを倒してくれ、外でもゾンビらしき兵士が大暴れしているとな!」


 ハーネイトはそう指示を出し、自身はユミロの後を追いザイオを追跡しつつ、どう追い込むか算段を立てていた。

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