Code 150 ザイオと謎の眼鏡男

「さあ、見つけたぞ研究者、ザイオ」

「き、貴様!ハーネイト!」

「即刻カードの生産をやめるんだ!そのカードは、不幸しかもたらさない!」

「そう言ってやめるやつがいるというのかね、若造が」


 ザイオは後ずさりしながらもどこか不敵な笑みを浮かべる。ハーネイトの言葉に対しても下らんと一蹴するが、彼はいつもと違う冷たい視線を向け威圧する。


「ならば、力づくで阻止する」

「できるかな?いくら英雄である貴様であろうと、この機械兵たちの包囲攻撃に耐えられまい」


 ザイオは自慢げに指を鳴らす。すると施設で作業をしていたロボットたちが全員でハーネイトを包囲したのであった。腕に取り付けられた幾つもの機関砲の銃口がハーネイトを捉える。


「やはり用意していたか、たとえこの状況下であろうと勝利という答えにぶれはない」

「いつまで強がりを見せているんだ?やれ、おまえら!」


 ザイオが手を振りロボットたちに命令を下す、そのわずかな隙をついてハーネイトは創金術を発動した。


「翻ろ、紅蓮葬送!」

「させるか馬鹿者!そうら!」

「なっ!カードを飛ばして来ただと!」

「貴様も魔物になればよいのだ、そうすれば我らの計画を理解できるはずだ」


ザイオの飛ばしたデモライズカードがハーネイトの紅蓮葬送に張り付き、そこから伝わりハーネイトに悪影響を与え始めていた。


「ぐっ、なんだこの力、は……っ!予想以上にこちらの精神を……っ!」

「させませんよ!衝雷(ショッキングサンダー)」

「今助けるぞ貴様ぁあああ!」


 どうにかカードをはがそうとしたその時、駆け付けたエレクトリールがハーネイトの紅蓮葬送に張り付いたカードを焼き焦がす。それに続いてヴァルターはなんと、自身の体を分離させザイオたちに取り付こうとした。機械兵たちの銃撃で邪魔されるも、自在に分離した腕や足を操作し不規則な連撃を繰り出す。


「うげげげげ!なんだこのおっさん、体がバラバラに分離してるぞ!」

「しかも空中を自在に……奇怪すぎるぞ」

「エレクトリール!リシェル!ってこの男は一体」


 リシェルはそれを見てどう見ても人ではないと思う。そして南雲も同様の意見を述べ、ハーネイトはエレクトリールたちが連れてきたヴァルターについて質問した。


「その分離した変態は、DGの旧派幹部です!」

「えぇ……エレクトリールの友人は愉快な人たちばかりだねあははは」

「現実逃避しないでくださいハーネイトさん!気持ちはわかりますけど!」

「コントしとる場合かぁああああああ」


 初めてエレクトリールと出会った時のハーネイトは、彼女に対しかわいいが変わり者であるという印象を抱いていた。そして同類友を呼ぶというか、明らかにおかしい挙動を見せる男がエレクトリールの知り合いであることを聞いたハーネイトは、混乱して現実逃避してしまったのであった。


「あなたの行動のせいなんですけぉおお?」

「あはは、あははは……はっ!私は一体何を」


 ヴァルターの言動にエレクトリールが叫ぶように突っ込みを入れる。もはや彼女も平常心を失っていた。その間にハーネイトは我に返る。


「大丈夫ですか師匠」

「あ、ああ。とにかくあれだ、研究者を拘束しろ!」


 ハーネイトは冷静さを取り戻し、全員に命令する。しかしザイオの作ったロボットたちが徹底的に妨害を仕掛ける。各自が戦技をもって一体ずつ破壊していくも、その間にザイオは奥の部屋に行こうとする。


「ちっ、大きさはともかく、数が多いぜ」

「だけじゃないわ南雲、あれは魔獣よ!」

「ククク、魔獣にこれを張り付ければ……!」

「させるか!」


 ザイオはデモライズカードを魔獣のいる檻に飛ばし中の獰猛な獣をさらに強化した。それらは檻を突き破りハーネイトたちに向かって血相を変えながら襲い掛かる。


「ちっ、何枚か斬られたか。だが遅いわ。今のうちに……」

「待てザイオ!くっ、室内では大技を使いづらい」

「……っ!降りかかる火の粉を払えずして、なんとやらだ」


 メッサーがそう言いながらいち早く対応する。機械化された腕に仕込まれた、いかなる合金でも切り裂くほどの鋭い刃を展開し、カードの影響でさらに狂暴化した魔獣をあっという間に仕留めた。


「ぬぉおおおおおん!この俺のぉおお、究極科学がもたらした完璧なるボディィイを味わえええ!」


 分離していたヴァルターは速やかに体のパーツを元に戻し合体させた。そして腕だけをロケットパンチの要領で打ち出し、下から打ち上げるかのように魔獣のあごに強烈なアッパーを浴びせ気絶させた。


「何なんだよあのおっさん、めちゃくちゃだぜ。だが。俺だってな!乱射魔閃(バーストデイズディスティロ)」

「大魔法26式・鎖天牢座!」

「はああああっ!落ちなさいな!」


 あの男たちだけにいいとこを取られるものか、リシェルは持っていたマシンガンから魔閃を連射し魔獣たちの胴体を射抜く。それに合わせハーネイトとエレクトリールが大魔法と雷槍で残りの魔獣を打倒した。


「なっ、まだいやがる」

「リシェルさん後ろに!」

「んだと!ってうおおああああ!」


 しかし檻の奥にいた魔獣の一匹が不意を突いてリシェルに襲い掛かろうとした。その時部屋の向こうから何かが飛んできた。それは魔獣の頭に直撃すると、すぐに地面に落ち魔獣の頭には何かの印がつけられていた。それは止という文字であり、その通りに魔獣はその場から一歩も動けなくなっていた。


「っ……!何が、起きた」

「これは……魔印。ということは、あいつが!」


 放たれた攻撃の正体に気づいたハーネイトは、まさかといった表情で部屋のドアの方を見た。するとそこには、ハーネイトよりも背の高い、痩せた男が立っていた。美しく手入れされた銀髪を後ろにまとめ、銀縁の眼鏡をかけた、知的な装いの男だった。

 その男はハーネイトと目を合わせるな否や突然強烈な跳び蹴りをかましてきたのであった。

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