Code119 魔女の罠・死の箱舟と古代兵器MFイタカ



「遅れて済まなかった。全員無事か?」

「ああ、どうにかな。しかし手ごたえがなさすぎるぜ相棒。これなら慎重に事を進める必要、なかったんじゃねえのか?」

「DGの戦力を、私たちは過大に評価していたのかもしれません」

「いや……、油断はするな風魔。魔法使いというのは、幾つも罠を張る周到な者が多い」


 ハーネイトは全員の無事を確認しながら、巨大な灰色の結界の方を見ていた。そして伯爵が、敵の防御がひどく手薄で罠を張っている可能性が大であることを告げた。


「私たちの仲間は、ひーふーみ、ゴールドマンを除いて全員いるわね。ということは」

「残りは、あの結界の中だ。きっとな」


 そしてリリエットとボガーノードは仲間たちの無事を確認しつつ、残りの幹部がすべてあの中にいることとみていた。その時、残っていた1番と2番塔が破壊され、爆炎と爆風が彼らに襲い掛かってきたのであった。それをハーネイトは瞬時に紅蓮葬送で全員を覆うように守る。


「しまった、残りの塔が破壊された」

「誰が攻撃した。まあいい、ド派手にやろうかね」

「ボルナレロと考えた作戦は、裏目だったのか?」

「おー、あの時の男。そうだ、魔法使いの罠にはまったとみていいが、残りは4人だけだ。全員でボコろうぜ」


マントの中でハーネイトはブラッドと目が合い、厄介な相手がいると思いながらも、そうは言ってられないと考えそれ以上何か言うのをやめた。その時であった。大地が少しずつ揺れ始め、木々が揺さぶられ、鳥たちが空に逃げるかのように羽ばたき飛んでいく。


「仕方ない。って地面が揺れている!」

「地震か。いやこれは!周囲が浮いているぞ」

「もしかして、これが罠ってわけ?」

「全員無事に合流できたはいいが、まずいぞこれは」


 全員がその激しい地面の揺れに驚いていた。そして紅蓮葬送を解除し、全員でその光景を目撃した。それは拠点とその周囲が徐々に空中に浮かんできていることであった。大地は震えながら上昇し、周りとの土地を切り離すかのように空に向かって旅立っていく。リヴァイルたちが作戦に参加した人すべてがいるか確認し、それが終わると同時に、敵の巨城とその周辺は完全に、大地から切り離された。


「げ、少しずつ上に上がっているぞあれ」

「いかんな、もしかすると彼らは罠に……」

「ハーネイトさん!」


 一方そのころ、運よく影響範囲から免れたエレクトリールたちはその光景を見て、助けに行こうと思ったが間に合わず、追跡することに決めたのであった。


「ははーん、こうして強い連中を一網打尽にするつもりか。だが結界の切れた今、あれを壊せばいいだけだよな?」

「そうみたいだぜ。残りの連中に目にもの見せつけてやる。ってあれは!」


 結界が消滅しながら空に浮かぼうとする拠点。そしてその結界の中には、紫色の不気味な、所々骨や革の見える悪趣味な2つの巨塔がある城が見えた。そしてその中から、巨大機動機械兵器「グラム」が起動し、こちらに向かってくるのが見えた。4足のキャタピラ型の足を稼働させ、中央部の砲塔からは両腕が伸びている、全長30m級の巨大兵器。かつて機士国が日之国とまだ関係が険悪であった頃に作られた秘密兵器が、敵の手に渡っていたのであった。


「まさかこのような代物と出くわすとは……あれを使う時が来たか!」


 だがハーネイトは、不敵な笑みを浮かべると空に向かって指パッチンをした。すると突然、空に紫色の亀裂が走り、そこから白銀が美しく光る、機械の巨人が地面に降り立つ。それはその空中要塞を激しく揺らしたのであった。


「……こうなるとは、半分も予想できていなかったが、しかし。だからこそこいつの出番が到来した!今こそ、力を見せろ。古から蘇りし機械の魔人、MF(マグネットファイター)・イタカ!」


 そしてその白い機械巨人は、盛大に土煙を巻き上げながら降り立つな否や、グラムに向かって走り出すと腰部に内蔵していたシュトラールブレイドを取り出し展開する。

 その鋼の巨人ことイタカは、背中と足にある魔粒子ブースターを最大出力で噴射し、猛スピードで突貫してからグラムを切り裂こうと両腕の光剣で襲い掛かる。しかしグラムも腕に装着している剣や銃を使いイタカを破壊しようとする。だが圧倒的にイタカが速い。残像すら残らないほどの回避軌道でそれらをよけると、次の瞬間空中から、出力を増幅させた光剣二振りでグラムの両腕を切り裂き吹き飛ばし、よろけたところに胸のコアに対して華麗な回転切りを繰り出し、鮮やかにグラムをバラバラに切り捨てたのであった。更にその回転の反動で後方に鮮やかにステップし、右手の掌をグラムのほうに突き出すと、凄まじい威力の赤き魔閃を収束放射し、グラムを光の奔流に飲み込み跡形もなく蒸発させたのであった。

 その光景に、ほぼ全員が唖然としていた。この男は、まだ他に切り札を持っていたのか。その強大な力を前にその場から動くことができなかったという。


「古代遺跡にあった、今は失われし超技術が一つ。それがこの機動兵器だ。イタカ、みんなを回収して地面に戻ってくれ。ウルグサスにラー遺跡の方の警戒も怠らないようにと言われたが、残りは急いでそちらに向かって。いやな予感がする」

「マスター、俺はやれます。っていてて」

「無理をするな南雲、そしてリリーも戻っておけ。いいか、今から幹部と戦い、この移動している拠点をぶっ壊す。ハーネイトの指示に従え!」

「不測の事態を考えるとここは引いた方がいいぜお前ら。だが霊界人、いや、霊量士としてのけじめをつける!」

「私もよ。帰るときはハーネイトに任せるわ」


 そうしてハーネイトと伯爵、そしてユミロとボガー、シャックスとリリエット、ブラッド5人はその場に残り、それ以外の人たちはイタカの手のひらに乗ると空中要塞から降りて、指示通りラー遺跡に行ったのであった。イタカは操縦者と認めたものに対して音声で指示を出すこともできる。そして乗り込み操縦すれば、更に真の力を発揮できるという。今までこの古代人が作り上げた超兵器を出さなかったのは、これを知られることで敵が対策し、事態が混迷を深めるのを防ぎたかったからという理由であった。それにこの古代兵器自体、まだ謎が多くすべてを解明できていないという。


「さあ、ここでけりをつけよう。ゴールドマンの洗脳を解き、魔法使いを討伐する」

「だったらわしらも、加わるぞ」

「来たぜ、あの時の借りは返す」


 そしてハーネイトたちの前に突然、フューゲルと、そしてDカイザーが突如現れたのであった。漆黒の瘴気に身を包んでいた彼らは、それを解除するとハーネイトのもとに近寄った。


「あ、あんたは!」

「久しいのう。噂に聞いておったが、逞しくなったな」

「さあ、さっさと終わらせて帰ろうぜ、女神を倒す者」


 突然のことで驚くハーネイトに対し、カイザーとフューゲルがにこやかにそういいながら、巨大な塔を見ていた。


「どちらにしろ、早く倒そうぜ」

「真に倒すべきは、それか」

「御託は言い、行くぞ」

「さあ、このまま突撃するわよ」


 そうして、向こうから迫ってくる敵に対し全員が武器を構えた。そしてハーネイトは霊量子の力を身にまとい始める。

 間もなく、城の方からパラディウムとカミオン、そしてゴールドマンがすでに霊憑した姿でハーネイトたちの目の前に現れた。


「よくぞ貴様ら、ここまで来たな。それと裏切り者!」

「グヌヌ、ヌオオオォォォ!」

「父さん、もうやめてよ!こんなことしても、誰も幸せにならないし、死んだお母さんと弟は戻ってこないのよ!」

「リリ、エット……っ!」


 ハーネイトは3人の様子を見て、顔を引きつらせていた。思ったよりも魔法使いによる影響が強く、一人で治せるか少し不安になってきたのであった。そしてリリエットが3人に声をかける。


「そちらこそ、魔法使いにいいようにされているのですよ」

「そうだぜ、目を覚ましな」

「ひどい魔法浸食だ。ここまでくると、治せるか一八だ」

「父さん、いい加減に目を覚まして!」


 その中でも特に、金色の装甲を身にまとうゴールドマンの容態が気になっていた。完全に理性を無くし言葉もまともに発せられない状況であり、魔法浸食の末期であると診断する。そしてリリエットがゴールドマンに向かって元に戻ってほしいと激しく言葉をぶつける。

 しかしゴールドマンは聞く耳持たず、金色夜叉という能力で周囲の霊量子を集めてから、胸から巨大な光線をうち放った。


「っつ!娘の顔も忘れたの?だったら、ロザード・エスパーディア!」

「ぐぬうううう!」

「天鎖陣!」


 二人はそれを見切り、左右に分かれてからそれぞれ技を繰り出し、ゴールドマンの動きを止めた。それにあらがおうとするも、ゴールドマンはその力を出せずにいた。

 そしてハーネイトは手に力を集め、例の願望機の力を引き出すため力をためていた。


「サルモネラスパークボルト!」

「ここで、全てを終わらせる!来い、我が鬼霊たちよ、フィカロン、ドーマルス!」

「ここで引けるか、神獣突王(ウル・アガリアマラ)」

「天使の裁きだ、ガミオン・フラッシュボム!」


 そして伯爵やボガーノード、シャックスとユミロもパラディウムとガミオンと戦い、数の差で圧倒していたのであった。パラディウムは幻獣の力を借り、強烈な突撃を仕掛け、ガミオンは後方から光の爆弾を無差別にばらまく。それに対し伯爵は菌電光剣で攻撃し、ボガーノードがそれに合わせ鬼槍を振り回し、地面から鬼霊を幾つも召喚しとりつかせようとする。


「儚く散りなさい、レインアローー!ユミロ、今です!」

「おう!地壊震撃!!」


 そしてあっという間に、パラディウムとガミオンの二人は相当深手を負い、これ以上戦えなくなっていた。シャックスとユミロの連携で隙が生まれた間に、伯爵の電撃がパラディウムの胸を貫き、ボガーノードが地面に刺した槍から現れた鬼霊によりガミオンは呪いをかけられ、体力を大幅に消耗していたからである。


「おとなしく投降するのです」

「お前ら、真の敵、魔法使い!目を覚ませ、ヌ、あれは!止めろ!」

 

 シャックスとユミロが倒れている二人にそう声をかけたが、ユミロが彼らの手にしていたものを見て後退したのであった。それは、ボノフが変身に使用したのと同じ、融合型のデモライズカードであった。そしてガミオンは胸に、パラディウムは左腕にそれを素早く張り付けた。


「ぐは、このままでは。ならば、あ、あれを!」

「そうだな、この力を持って。お前らを!」

「止めろ、それは使うなああああああ!……ちっ!リリエット、ゴールドマンだけでも止めるんだ。他は、間に合わないっ……」

「ええ!」


 そしてゴールドマンもその動きにつられようとしていた時、リリエットの桃色輝夜紅姫がゴールドマンに抱きつき動きを止め、ハーネイトは彼の胸に手を当てて、魔眼と合わせ魔法を解き放った。


「目覚めろ!ブライトリンガー・アルートゥネイスト!」

「父さん、目を覚まして!!!」


 ハーネイトが即興で考えた、魔眼と魔法の合わせ技にして、対象の呪いを打ち消す光の魔法をゴールドマンに打ち込み、光と共に魔法使いの洗脳を解いたのであった。反転事象陣を使用した連携技は一人では難しい。どうすればよいか彼はもう一度、ウルシュトラにある事務所にあった死霊術と精神魔法に関する本を読み新たな解呪方法を会得したのであった。けれど隙が大きいため、誰かの補助が必要であり、一回につき一人しか治せない。それでも、ハーネイトはゴールドマンを魔女の洗脳から解き放つことに成功した。


「うぐあああああ!がはっ、は、ああ。お、俺は一体。何をしていた。リリ、エット……」

「父さん、父さん!」

「大丈夫だ、魔法が解けたショックで気絶しているだけだ。こちらで回収しよう」


 そして二人に抱きかかえられ、洗脳の解けたゴールドマンは意識を失った。そしてハーネイトは彼も保護することにした。それがリリエットとの約束だったからである。父さんを助けてほしい。彼女はそう彼に依頼した。そしてその願いは今果たされたのであった。


「しかし二人は手遅れか。魔法洗脳の影響で理性を無くしていた方がどうにかなるとは、な」


 そして、おそらくハイディーンの渡した、二度と元に戻れないタイプのデモライズカードを使った二人は、おぞましいドラゴンと、幾つも体から骨がむき出しになった獅子の姿に変貌していた。

 そしてさらに、奥から大量の魔獣らしき集団が向かってくるのが見えた。実はそれも徴収官たちであり、魔法使いに操られていた状態であった。彼らもデモライズカードを強制的に使わされ、怪物に全員が変身していたのであった。

 一人を治すにも、先ほどの技はかなり複雑な呪式なため、時間の猶予がないことに加え、他の魔法使いがいない今の状況ではハーネイトでも、彼らを元に戻すことができない状況であった。いや、本来ならば唯一いかなる状態、死ですらも打ち消して元に戻す禁断の魔眼があった。しかしそれを使うには条件が二つあり、それをどちらも満たしていない状況下であったため使用を断念する他なかった。

 それを考え、ハーネイトは心の中で悔しいと思い、歯を食いしばりながら目を閉じる。けれどもこれ以上被害を出すわけにはいかないと、思い切った行動に出たのであった。


「せめて手向けに、この一撃でとどめを刺そう。久しぶりの100番台だ。この浮遊要塞ごと壊す!」


 ハーネイトは、哀れにも二度と元に戻れない怪物たちに対し、せめて一撃で楽にしようと、伯爵たちに逃げる準備を出してから空中に高く飛びあがったのであった。

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