Code114 3番塔の戦い ブラッドラーズVSシダナレ
「さあ、あれが塔ね。うーん、ご立派」
「はあ、なんで俺たちがこの……」
「無駄口叩くなリヴァイル」
「分かったぜレイジオ。あの邪魔している奴をぶっ飛ばせばいいんだな?」
ブラッドラーという球技の選手3人は手薄な第3番の塔に向かう中、一人の厳つい風貌の老人を見つけた。それは同じく作戦に参加している仲間だとわかると放置しておき、真っ先に塔に向かう。
この約一名怪しげな男が混じった少数精鋭の連中は、この星で最も盛んな球技、ブラッドルのプレイヤー、通称ブラッドラーと呼ばれる者であり、またハーネイトの友人、そして弟子たちでもあった。全員が変則的な魔法の使い手でもあり、足技が特に強烈な戦闘集団でもあるこの男たちも今回、この戦いに参加することになった。それはある一通の手紙。それを見たキースたちは意気揚々と線上に、さっそうと現れたのであった。それも徒歩で来たという。
「リヴァイル、エルジオ、すでに結界は破壊されているわよ。だ、か、ら。あなたたちが塔を破壊するのよん?」
「へいへい」
「では行くぞ」
キースというお姉な男の指示で大きく二人は外から回り込み、その間に異常な速度でそこを守っている執行官の一人、シダナレという男に突如奇襲を仕掛けた。
「な、なんて速さだ。ぐ。お主、は!」
「ぼさっとよそ見してんじゃないわよん!」
キースは鮮やかに足を動かしてはシダナレの足や手に鋭い打撃と痛みを与え、華麗に彼の攻撃をくるくるとかわしていく。他の2人に比べ体は大きいが、まるでそれを無視するかのような動きを見せる。そう、バレエ選手かのようにひらりひらりと舞い、鮮やかに、しかし的確に打撃を重ねていく。それにシダナレが苦悶の表情を浮かべる。
「ぐ、なんて重い一撃、だ」
「あら、あなたの剣も不思議ねえ。直刀にドリル、なにをしようってかしら?」
「ならば儂の一撃、受けてみい」
シダナレは両手の剣を重ね合わせ、雷と嵐を織り交ぜた強烈な魔力波でキースを攻撃する。猛烈な稲妻に荒れ狂う風、それでもキースは笑顔を絶やさず、むしろ攻撃を受けることに興奮していた。
「ぐはああ、だが、ああん、それがたまらないわ。興奮してきたじゃないのおおおおおお!」
「なんだこの変態、は。というかお主らどうやってここまで。ぐ、ぬううう!」
「あら、それは秘密よん。さっさとくたばりやがれ爺!」
キースは上空から鋭く、蜂のように襲い掛かり両足でシダナレの胴体を蹴りぬく。一見ふざけた態度と恰好をしているが、例にもれず彼女、ではなく彼はハーネイトといい勝負をするくらいには強く、その蹴りは一撃で魔物の全身の骨を粉みじんに破壊するほどの威力である。そしてまだ現役のブラッドラーでもあるこの漢女は、その戦慄の足技でシダナレの体を破壊していく。
「ならば私の華麗で恐ろしいあの一撃、食らいなさい。とぅおおお!」
「が、ぬうううう。ま、だ、まだ!」
「洗脳されているその身で、私にかなうわけナイッシング!」
キースは逆立ちしながら回転しシダナレの顎を蹴り上げ、さらに首を回し蹴りで攻撃し、事前にボルナレロから聞いた洗脳装置をその一撃で破壊したのであった。
「ごふぁああああ!ぐっ、わ、わしは一体……。お、お主は」
「なあに、わるーい魔法使いから洗脳されていたのを助けたのよん」
「なんだ、と?道理で、時々調子がおかしかったわけか。フハハハ。……でお主の名前は」
シダナレは、装置が外れたことで所々違和感を覚えたことを思い出し、頭の中で素早く整理した。そしてこの屈強な男たちがなぜ装置を壊してくれたのか、疑問を抱いていた。
「フ、わたくしの名はキース・ブライミッツ・マクシミリアンよ」
「なかなか気色悪いやつだが、まあよい。礼を申し上げる。あの時から、身に違和感を覚えていたのだが、ようやく解決したぞ」
「まあいいってことよ。それであの塔なんだけど、壊しちゃっていいのかしらん?」
「な、あの塔だと。やめいいい!あれを破壊されればあの女の思うつぼじゃ!ってぬおおおおお!!間に合わぬ、か」
シダナレはキースの言葉に慌てふためくも、すでにリヴァイルとレイジオが塔を盛大に破壊した。そして彼は背後で起きた塔の爆発に吹き飛ばされ、地面に転がりながら痛めた体をどうにか起こしつつ、塔の方を見てにらんでいた。
「やってくれたな」
「あら、何が起こるっていうのよ」
「この一帯は魔力の暴走で、土地ごと宙に浮き、ある場所を目指し移動する。と。あの魔法使いの会話を覚えていた」
「なんですぅってえええええ!」
そして塔を破壊した二人がキースたちのもとに戻ってきたのであった。任務を達成しご機嫌な顔をしているリヴァイルとレイジオに対比し、キースの青ざめ慌てた顔が余計に目立つ。それを見た二人は道中感じた嫌な予感について彼に話をした。
「うーし、完全破壊成功だ」
「しかしやな予感が」
「あなたたちのその予感、大当たりよ。至急他の人たちに知らせてきなさい。と言っても、間に合わないかもしれないけど」
そしてキースはシダナレの言ったことを要約し2人に伝えると、先ほどキースが見せていた表情と同じ顔になった。やけに周囲の生き物が慌てている。それも肌で感じ取っていた彼らは、瞬時に切り替え対策を考え始めた。
「うげげ、功を焦りすぎたなこりゃ。てことは、全員はめられてんじゃねえか!」
「だな、ったく、だからリヴァイルは少し慎重になれといったのだ、フッ」
「やるなら急げ。しかしふがいない。くぅ」
シダナレは己の無力さを嘆きながら破壊された塔を見ていた。しかし、そこには不安だけでなく、期待もあった。もしかすると、あれを止められるかもしれない。それにかけるしかもう、ほかに道はなかった。
「まあ、起きてしまったことはしょうがないわねえ。だけどハーネイト。あのうら若き乙女、ではなく男がいればどうにでもなるわ。」
「あの、男か。ぐ、すまんがキース殿、わしを連れて行ってくれ。他の連中がどうなっているか知りたい。噂には聞いちょる、我らが仲間も何人かそちらについたのだろう。儂もDGを改革する派閥の一人じゃて、お主らの軍門に下るぞい」
「あら、もちろんよ。それも任務の一つだからねえ。ほら、掴まるんだよ爺さん」
「かたじけない」
そうしてシダナレの言ったことを伝達するため彼らはボルナレロに連絡を取ったのであった。もし本当ならば、非常にまずい。彼らは自慢の足を活かしてほかの拠点にすばやく移動を開始した。
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