Code105 ボガーノード&ヴァンの正式参戦


ハーネイトは全員が入れる大部屋にみんなを案内し、各自畳の上に座らせた。


「これで、そろったね。まずは、今回の作戦が成功してよかった。これも皆さんのおかげです。お疲れさまでした」

「ハーネイト大先生が率いてくれた、おかげですよ」

「なかなか戦いがいのあるものだった。わしも久しぶりに剣を奮えてよかった、主よ」

「ハーネイト、お前には本当に頭が上がらない」


 ハーネイトは全員をねぎらい、作戦の成功を告げた。この作戦により敵は研究拠点と幹部を数人失い、計画の大幅な遅延をもたらすことに成功した。何よりも敵の情報の多くを独自に手に入れることができ、今後のカギを握る研究者、ボルナレロとホミルド。そしていくつか興味深い情報を持っている敵の執行官、ボガーノードとヴァンの確保に成功した。これはハーネイトたちにとってとても大きな追い風となる物であり、同時にもうすぐ始まる決戦を前に脅威となる戦力の削減ができたのであった


「これで、不本意だった研究もしなくて済む。命の安全も確保できた。ハーネイトよ、これからはそなたの下につき可能な限りの支援をしよう。合成魔獣の弱点についておよそ把握している。ああ、それと紹介が遅れた。私はホミルド・レイッショナー・アルトン。医学と遺伝子学を専攻にしている。怪我をしたら魔力のないものは私に任せるとよい」

「ハーネイトは約束をいつも守る、ならばこの私も誠実にな。私の名はボルナレロ・ジャド・ジオノアローク。電波系が専門だが、実際は地図を用いた研究をしている。私の技術の一つ、魔獣操作が敵に奪われてしまったが、その罪滅ぼしとしてカウンターと、GISによる地図支援を行う」


 ホミルドとボルナレロはそれぞれ自己紹介をし、傘下に入る意思を全員に伝える。そして二人と再び、無事に合えたことをハーネイトは心の中から大きく喜んでいた。


「おじさん、改めてよろしくお願いします」

「ボルナレロさん、話には聞いていました。よろしくお願いしますね?」


 アーディンやエレクトリールたちが順番に二人に対し話をした。


「そして、今回尋問する人たちはこの3人だ、来て、ボガーノードとヴァン、そしてクロークスさん」

「分かった。んじゃ軽くいきますかね」

「一体どうなっているのだ。だが助けられたのか」


 3人はそれぞれそういいながらハーネイトの近くまで足を運んだ。


「自己紹介と、今まで何していたのか話して」

「わ、わかった。俺の名はボガーノード。ボガーノード・シュヴェルアイディック・イローデッド、だ。ボガーノードと呼んでくれ。DGの執行官の一人だったが、降格させられた上に上官である徴収官に酷い目に遭わされていてな、そこにハーネイトが来てその徴収官をユミロとハーネイト、シャックスとリリエットと連携し倒した。正確にはハーネイトが変身してとどめを刺したのだがな」


 ボガーノードは1時間近く自身の出生と徴収官やDGの役職、DGが生まれた理由について話をしてあげた。それを聞いた後、各自がそれぞれ仲間内で話をし始めた。リシェルとエレクトリールは、ハーネイトの魔本変身に興味津々で次々と質問を繰り出してきて、師であるハーネイトを少し困らせていた。


「しかし主はよく情報源を引き込みますな」

「ユミロさんの件と言い、ハーネイトさんは本当に敵からも好かれますね」

「自身では気づいていないだろうが、相棒のカリスマ力と言うか、魅了力は呪いのレベルだからな?エレクトリール」

「うらやましいですね、それだけの力が私にあれば」


 メイドたちは主人に対しいつも通りだと認識し、伯爵とエレクトリールはこそこそ話をしていた。


「しかしお前さんの話は本当か?そうなると敵に相当厄介な連中がいるということだな?霊界、霊装。10名の徴収官。それにその下に各二人ずつ同様の能力を持った副官。怖い話だ」


 ギリアムが話に加わり、ボガーノードの話について事実だとしたら厄介で今後に影響するのではないかと口にした。


「最初に話を聞いた時には驚いた。だからこそ真偽を確かめたかったのさ」

「やはり元敵幹部だけに、信用はな……。だが、俺も故郷の星を潰された男だ。そしてハーネイトのことが気に入った。この男になら、下についても悪いことは起きないだろうと、そう感じたのだ。こうして多くの実力者が一人の男のもとに集まっているのも、いい上司の証だろうと私は思う。そして皆さんがいい気分をしないのは、重々分かっている」


 ボガーノードは全員に土下座をし、仲間に入りたいとそう告げた。少なくとも好きで悪事を働くような男には見えないというのが全員の見解であった。雰囲気は伯爵に割と似ており、ハーネイトの下で働きたいという明確な意思と、彼の独特な戦技が全員を納得させる結果につながったのであった。もっとも、すでにユミロとシャックスがハーネイトの手の内に落ちているため、受け入れるのは比較的容易だったのかもしれない。


「まあユミロさんの前例もあるし、どちらにしろ利用価値はあると、拙者は思いますがな」

「そうよ、敵の内情をいかに知り、弱点を突く。私は構わないけど、ハーネイトに妙なことしたらこの魔法の杖でどつきまわすからね?特にお尻のあたりとか重点的に」

「私たちはハーネイト様の命に従うのみ。口出しはしません」

「本当に、節操なしとはこのことですね。しかしDGが作られた理由がわかって悲しくなりました。ハーネイトさん、しっかり絞ってしごいてあげましょうよ?話によれば漁師だったみたいですし、念願の釣りに連れて行けばどうでしょう?」


 全員はやや戸惑いつつも、ボガーノードの作戦参戦に拒否は示さず、新たな仲間が加わることになった。そしてリシェルは先ほど聞いた話から彼が漁師をしていたことを聞いて、師匠がやりたいと言っていた釣りを今度彼に手伝ってもらえばどうかと提案した。


「みんな、優しいのだな。これは俺も期待を裏切ることはできん。俺の得意技は霊界の者を呼び出し物質化する能力と、それにより陣地を張る妨害支援だ。足止めや工作、伝達なら任せてくれ」


 ボガーノードは服を着なおしながら自身の能力を改めて説明した。


「なかなか頼もしいな。では、引き続き情報の提供は頼むぞ。ユミロと仲良くしてやってくれな?」

「了解した、ハーネイト上官」


 ボガーノードは陽気な顔をしてハーネイトの方を向き、右手で敬礼をした。


「上官、だなんてそんな柄じゃないぞ。では次に」


 ハーネイトの指示でヴァンが自己紹介を始めた。


「俺の名は、ヴァン・デスペラード・レーゲン。ヴァンでいい。元々、別の星で俺は住んでいたはずなのだが、気づいたらここにいたというか。何も覚えていないのだ」

「そうなる前に、変な人と出会わなかったか?」

「変な奴、ああ。黒づくめの女が俺に話しかけてきたのは、ああ。そこまでは覚えてやがる」


 ヴァンはもともとレンジャーとして別の星で自然保護活動をしていた。そのある任務中に森の中で一人の怪しい女を見かけた。その人に声をかけたのがまずかったのであり、それこそあの、宣戦布告をしてきた魔法使いであった。


「これは可能性高いな。ヴァン、お前はこの星の魔法使いの洗脳を受けていた可能性が高い」

「洗脳、だと?」


 ヴァンはその事実に顔を青くしていた。知らない間に他人の手により操られていたことが相当ショックであったらしく、体も震えていた。


「畜生、俺をこんな目に合わせるとはむかつくやつだ」

「だったらさ、その元凶。一緒に倒しに行かないか?」

「……そう、だな。あの後何があったかリリエットから聞いたが、俺の住んでいた星は消えたという。……もう、帰る場所もない。そして何もないところからのスタートだが、まあ、成り行きに任せるとしよう。フッ、何故だかあんたを見ていると、他人とは思えないな」


 そういいヴァンは居場所がないことを悟り、取り敢えずリリエットたちと行動を共にすることに決めた。


「まあ、どこまで役に立つかわからんが、よろしく頼む」

「ああ、こちらこそね」


 たがいに握手をし、協力することを確認した二人。そして話はクロークスの話に移る。


「トレーラーの上に潜伏していたいかにも絵本に出てきそうな海賊の服装をした男。クロークスについて」


 ハーネイトはクロークスを自身の左隣に呼んで座らせた。実は一番素性が知れないこの男。エレクトリールの親だというが、合成魔獣討伐の際の行動が印象に残っており、早くその力の謎を聞き出したく彼はうずうずしているように見えた。



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