第42話 帰宅して一波乱
「たっだいまー!おねえちゃんお風呂いちばんのりー!」
「あっ、ずるいです!私も入りたいです!!!」
「我も!我も!」
我が家は姦しい。恵を家に送り届けた後、俺たちは家に到着した。灯は恵を慕っているため引き離すのは心が痛んだが、案外あっさりと納得してくれたようだ。あんまり悲しい想いはさせたくないから、たくさん恵に遊びに来てもらう約束をこっそり取り付けておいたが。
にしても元気である。勿論俺が元気じゃないわけでは無いが、いつにもましてテンションが上がっている彼女たちと比べると些か俺はテンションが低いように見えてしまうかもしれない。ともあれ、それほどまでに元気な彼女らは見ていて清々しいから構わないのだが。
夕方に差し掛かろうという時間帯。皆が荷物を置いてさっさと風呂に向かおうとしているのを尻目にいくつかの部屋のエアコンを動かしておく。せっかくお風呂に入ったのに汗かいたら意味ないからな。
女の子たちが入った後のお風呂というのも正直落ち着かないが、その辺は妥協するしかあるまい。というか好きな人と一緒にお風呂に入った時点で何もかも今更だ。姉さんは未だに一緒に入るときもあるし灯とも実質的に一緒にお風呂に入ったともいえる。よく考えれば俺こんなので大丈夫なのかな。冷静に考えれば他の男子中学生にとって羨ましいことこの上ないのでは。
…正直な話、俺も男だ。灯は結構年下かとおもったが話を聞くと俺と同年代くらいらしい。同い年とまではいかないらしいが。恐らく満足な栄養が与えられていなかったから体が成長していないだけで、これからの成長具合によっては理性的に危険な対象になるかもしれない。異常なまでに俺を慕う彼女の好意は純粋なものだと分かっているだけに変に警戒するわけにもいかない。どうしたものか。
姉さんは死ぬほど美人だ。母さんの血を色濃く受け継いだ美人。残念要素も受け継いではいるがそれはそれ。弟をからかうために一緒に入りに来てるんじゃないかと思うくらいくっついてくる。確かに小さい頃からずっと一緒だったから多少の慣れはあるものの、思春期の男子中学生にとってこれはしんどい。嫌じゃないし、むしろうれしいまである。けれども反応するわけにもいかない。おかげさまで素数の数え方は一通りマスターしてしまったぞクソが。
んで、エレナ。これはもはや言わずもがな。想い人が平気で体を晒してくるのだ。無理。こればっかりは許してほしい。いろいろと抑えるようにはしているのだが、近いうちに理性は崩壊すると思う。
まぁそんなことを考えつつ軽く掃除機をかけ、食卓を拭き、洗濯物をまとめて脱衣所にある洗濯機へと向かう。これくらいはやっておかないと普段大変な思いをさせている姉さんに申し訳が立たない。少なくとも今日は俺がやれることはやろう。
なんだか今日はこれからまだまだ疲れそうな気がしないこともないが、俺は俺なりにこれからも努力していくこととしよう。
「さぁてあとは洗濯も、の…」
ガラガラ、と脱衣所のドアを開けた。よく考えればノックをするのを忘れていた時点で俺はかなり疲れていたのかもしれない。
「あっ、アヤくん!覗きですか?見ます?」
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
逆じゃね?普通。
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