114日目 メルトの笑えないジョーク

機嫌の悪いメルトを引きずりながら酒場へとやって来ると。

メルトはすぐにシュゴビーを注文し、おつまみを注文し。

近くにいたジャージーの飲もうとしていたシュゴビーを横取りして飲み干し。

ジャージーが泣き出しそうな顔をしながらハルトをちらりと見つめていた。


「わかったから・・・その目でこっちを見ないでくれねぇか??

今のメルトはギルドで殺人をしそこなって機嫌が悪いんだ。」

「誰が殺人ですって!?私レベルの魔導士なら殺害後に跡形もなく証拠隠滅だってできるんだからね!!!つまり!!殺人ではなく滅却よ!!!

マジで私を舐めてると痛いわよ!!!」

「どうやらそのようですね、メルトさんに神の加護と天使の救済があらんことを祈ります。

ですが、それはそれこれはこれですよ?私のシュゴビーを返してくれませんか?」

「メルトの言い張る部分もおかしいですが・・・ジャージーはジャージーでシュゴビーに取りつかれている様子ですね。」

「だが、メルトがジャージーにした行為は八つ当たりと言うモノだ。

それはしてはならな・・・ん?どうしたんだ2人とも・・・そんな不思議そうな顔で私を見て・・・何か私の顔についてるのか??」

魔王の発言にキルりんとハルトがどこの口が言うのかと驚きながら見つめ。

ウェイトレスにジャージーの飲めなかった分のシュゴビーを注文し、ジャージーに渡すと・・・・息継ぎをすることなくジョッキの中のシュゴビーを全て飲み干し。

その飲みっぷりはと言うと・・・昼間は教会でプリーストをしている様には見えず。

ついついジャージーの飲みっぷりにハルトは見惚れていた。


「ハルト?聞いてますか??ハルト!!!

何をジッとジャージーのお乳ばかり見ているのですか!!!

私たちを前にして他の女を舐めまわすように見るのは止めてもらえませんか??」

「見とらんわ!!!それにキルりん・・・俺はお前達を舐めまわすような目で見た覚えは一度たりとも――――――――」

「ないのか??一度も??それはおかしい・・・ハルトは私とお風呂場で出くわした時。

すごい目で私の裸体を見つめていたと思うのだが?」

「ハルトも男の子だから仕方ないわよ。

こんな美貌にあふれる私たちを前に舐めまわすように見ない方がおかしいわ!!

あと、これだけ長い期間一緒に過ごしてきて一度も手を出されたことがないのが少し不思議ね。

まさかハルトって・・・・・・男好き??」

メルトの発言に酒場の空気が静まり返り・・・ハルトはテーブルをかなり強烈に叩き強烈に否定すると。

時間が元通りに進みだしたかのようにガヤガヤと賑やかな声が戻っていたのだが・・・


「ま、まさか・・・・は、ハルトがホモだったなんて・・・・」

「ハ、ハルトに限ってそんなことは・・・・私に興味がないのはそう言う事だったのか!?」

「オイ、メルト・・・・歯を食いしばれ・・・・これはガツンとやっとくべき場面だ。」

「え?ナニ??私が悪いの!?ちょっと2人とも!!!私の話に乗っかっといて助けてくれないの!?ねぇ!?ねぇってば!!!

―――――――――――あんぎゃぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

メルトの助けを無視した2人はもくもくと夕食に手を付けていると。

ハルトはメルトにきっつい鉄拳を浴びせてから席に戻って・・・何事もなかったように3人で話し始めた。


「だ、大丈夫ですか??メルトさん???

一部始終見ていたのだけれど・・・仲間の言い争いに口をはさむのも悪いと思って見ていましたが・・・・」

「こんなのってあんまりよ・・・・ジョークで言っただけなのにぃぃ・・・グスン。」

「お前、さっきのがジョークとかムリ過ぎんだろ!

店内が静まり返ってただろうが!!!」

「そうですね・・・さっきのがジョークで本当に良かったです。」

「ジョークも程々にしないとこう言う事になると良い経験になってよかったじゃないか。

時には失敗から学ぶことも自分を大きくするいいスパイスだ。」

魔王がいい感じにまとめると・・・夕食を済ませたハルトたちは先に家に戻ることにして、メルトを置いて家に帰ると。

魔王は今日一日だけ自分を好きにしていいという契約がまだ数時間ほど残っているとハルトに伝えるが・・・ハルトは特に何かあるわけでもなく。

キルりんとお風呂に入って来るようにすると。

魔王はそういう使い方じゃないとブツブツ言いながらキルりんと共に風呂場へと消えて行った。


「魔王のヤツ・・・健全な俺にどんな要求を待っていやがる気だ??

別に魔王のボディースタイルが嫌いとかそういうわけじゃなくてだな?

特別そう言う関係になれば面倒だと言う事であってだな・・・・」

「で、・・・・その欲望はどうする気なのだ??

欲望のままに魔王をベッドイン!!するのか??それとも何事もないまま残りの時間を1人で過ごすのか・・・・好きにすればいいと思うのだが。

何をためらっていると言うのだ??」

急に話し始めたバロンに少し驚きながらバロンにどうするべきか質問するが。

バロンは自信に決定権も何もないからとやかく言う事はないとだけいい。

最後にこう言った。


「悔いのないように余生を楽しむのがベストではないか??

とはいってもハルトには寿が無いのであったな・・・失敬。

長々と話していても時間の無駄というモノ・・・ハルトの好きなようにするがいい。

私はハルトが選ばずに捨てたモノよりも選び掴んだものの末路を見てみたい。」

「バロンお前・・・・魔王の裸が見たいだけだろ??

だから俺に魔王を襲えと遠回しに好きにしろと言いながら待ってんだろ!?」

ハルトは長く一緒にやってきたバロンの事を多少理解しており・・・バロンの真意を見抜くと。

バロンはカッコよく「アデュー」と言いながらそれ以降話すことはなかった。


「ったく・・・・誰が意地でも魔王を襲うかよ・・・・ってか・・・いつになったら2人は風呂から上がって来るんだ??

あ~~面倒だが少しだけ聞きに行ってみるか・・・面倒だが!!!な!!」

ハルトは少し息を荒くしながら風呂場に向かい・・・脱衣所の扉を開くと・・・・


「なッ!?ななな!!!ハルトォ!?

ぐぅぅッ!!!出ていけ腐れドヘンタイゾンビ!!!!!」

「ん?あぁ・・・悪かった・・・うぇぶ!?

――――――――――――ぐへッ・・・・・・」

「おぉ~~~あの大きな体重計を投げ飛ばすとは・・・・キルりんの体には何が仕込まれているのだ??

まさか!?噂に聞く等価交換の・・・・力を得るための対価として胸を捧げて得たと言うのは真であったか!!」

キルりんは先ほどまで乗っていた体重計をハルトに投げ飛ばし・・・ハルトを体重計の下敷きにすると。

魔王はキルりんの怪力を得た方法を呟きながら潰されたハルトの元にやってきた。


「お、おめぇ・・・・・早くこれをどけてくれ・・・・・」

「待っていてくれ。

すぐにどける・・・・・よいしょっと・・・・」

「ったく・・・ハルトのせいで湯冷めしちゃいますよ!!

私はもう一度湯船に入りなおしてきますので・・・・その腐れゾンビをどこかにやっておいてください。」

キルりんは言いたい放題に言いながら消えて行き・・・魔王は着替えてからぐったりとしたハルトを魔法で浮かせてソファーに寝かせた。


「さ、サンキューな魔王・・・・イタタタ・・・まさか体重計が飛んでくるとは・・・・予想外過ぎだ・・・・」

「私もハルトが脱衣所に入って来るとは思わなかった。

どうしてあんな真似をしたのだ??

覗きの趣味もあったわけではないと思うのだが・・・・まさか・・・目覚めたのか?」

魔王の問いに真っ向から否定し、風呂に入っている時間が長い事を伝えに言っただけと言うと。

魔王はクスクスと笑いながらハルトの背に魔法で出した氷を当てて散々だったなと呟いた。

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