サリーナ・マハリン
なのるほどのものではありません
第1章:闘う民と笑わない貴族
1, 出会い
剣を持つ。肩からかける帯刀ベルトに長い剣を刺し、道を行く。
私は
「さて。どっちにいこうか」
思いあぐねていた時だった。馬の啼く声がした。荒ぶる声がした。
「なんだ?」
くるりと向きを変える。短い赤い髪の毛が揺れる。
――……声。馬の啼く声に、これは、人の争う声。
瞬間、私は走りだしていた。声のする方へ。するすると。しなやかに、すばやくだ。
まるで身体には重さが無いように、軽やかに。
――見つけた……!
跳んだ。すらりと剣を抜き、打ち付ける。ガッ、と鈍い音がして男がうめく。
今の受身も取れないのならば、こいつらは武民じゃない。
だったら話は簡単だ。倒せる。
実際、ものの3分だった。全ての片がついたのは。
「ひっどいな。馬、もうこれじゃ走れまい」
馬が倒れているのを見つけて言った。
「大丈夫か? ……――」
そして振り向いて人を見つけるが、なんという風に呼べばいいのか一瞬惑う。
「……ボク」
「お前にボク呼ばわりされたくはない」
馬車から出てきたのは男の子だった。
「パパとママは?」
「父上も母上もいない」
「……あぁ。お気の毒に」
「そういう意味じゃない」
「そか。そいつは良かった。で、無事か?」
「……あぁ。傷一つない」
うん。確かに。私は微笑んだ。
「良かった。じゃ」
手を振って去ろうとした。
「待て」
「なに?」
「お前、俺の護衛をしろ」
「……はぁ?」
「今の野盗で護衛が死んでしまった」
確かに。彼の足元に倒れている男は野盗ではない。息はきっともうない。
「……馬車はないぞ?」
「いい。歩ける」
「見返りは?」
「十分払う」
「何処まで?」
「サリーナ・マハリンまで」
私は微笑んだ。彼は一度も微笑まない。
「いいぞ。すぐそこだ」
歩きだす。
「そうだ、聞き忘れてた。あんた、名前は?」
振り向いて問う。
「先に名乗れよ。そう習わなかったか?」
「いいだろ別に」
「……フェレス」
「私はスザンナ。よろしく、フェレス」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます