第165話魔法使いの贖罪

 ベリアル公爵邸に転移してきた人界の勇者リズ・ヤキシャケ。週間グローバルフォーカス記者缶塚桃と成り行きで同居する事となった。そんな中、朝のひと時に思わぬ場面に遭遇する事となる。


 取材翌日 魔界時間7:58 マンション『ソウルレジデンス』


 桃:はぁい。朝ご飯ですよ〜♪


 リズ:ん?これは、魔界の料理か?


 桃:これはリズさんの居た人界とは別次元の人界の日本という国の定番朝食ですよ♪リズさんの名前を初めて聞いた時から無性に食べたくなって。


 リズ:この紅色の切り身は?


 桃:これが『焼きシャケ』ですよ〜♪


 リズ:こっちの緑の飲み物は?


 桃:『緑茶』っていうお茶ですよ。


 ニュース番組に切り替わる


 ニュースキャスター:皆さんおはようございます。8時のニュースです。昨日未明、ベリアル公爵邸敷地内に人界宇宙の勇者が転移してきたとの情報が入りました。シルフィード王国に転移した勇者とは異なり魔王を倒したとの事で近隣住民は不安の色を隠せない模様です。


 リズ:・・・・・・


 桃:だ、大丈夫ですよ!リズさんが倒さなかったら他の魔族の方にも『カオス』が感染していただろうし。リズさんのやった事はけっして悪い事じゃないですよ!


 リズ:有難う。大丈夫だ。


 どこか辛そうに微笑むリズ


 ニュースキャスター:次のニュースです。3カ月前に獣王界リバイアス国際医科大学内に転移してきた人間の瑠空るあ・カリント研究員が精神汚染物質カオス除去ワクチンの開発に成功するという前人未到の快挙を成し遂げました!


 桃:焼きシャケの次はかりんとうかぁ。和菓子屋さんに行って買ってこようかなぁ♪


 リズ:ブーーーー!(お茶を吹き出す)


 桃:もぉ〜、リズさん汚いなぁ!


 リズ:す、すまない。テレビに映ってるのが知り合いだったものだからつい。


 桃:知り合い?


 リズ:共に魔王と戦った魔法使いだ。


 桃:えーーーー!


 ニュースキャスター:次のニュースです。6大魔王の一角リーシャ・ザルダジア大統領の治めるザルダジア連邦傘下のフローズンダスト連邦がシルフィード王国に宣戦布告をする事を表明しました。


 桃:へぇ〜、次の国土争奪戦争の対戦国はフローズンダスト連邦かぁ♪


 リズ:な⁉︎何を呑気に言ってるんだ!戦争だぞ!


 桃:あ〜、魔界の戦争は人界の知る戦争とは全く違うんですよ♪


 国土争奪戦争の説明をする桃


 リズ:一滴の血の流れず、死者の一切出ない。そんな戦争があるのか。


 桃:魔界の戦争は如何にその国が人間に信頼されてるかを競うものなんですよ。毎回どんな偉人や英雄が出てくるか皆んなワクワクしてるんですよ〜♪


 同時刻 獣王界 リバイアス国際医科大学 感染学部


 瑠空:ふぅ。


 そっとコーヒーを差し出すケイン


 瑠空:教授。


 この人はリバイアサン亜種族のケイン・ブライアン教授。ここリバイアス国際医科大学感染学部の教授で私の恩人でもある。


 ケイン:君には礼を言わなくてはね。君の大発見のお陰で我々魔族はもう人間の血からワクチンを作る必要がなくなり、人間から『魔族は生き血を啜る』という誤解を払拭できるのだから♪


 瑠空:いえ、私達人間こそ魔族がこんなにも暖かく心優しいなんて知らず。太古の教えからの先入観で多くの魔族を傷つけてきて、あまつさえ魔王を殺してしまったのですから。これは私の『贖罪』でもあるのです。


 ケイン:確かに先入観からのものかもしれない。しかし君は結果的にカオスに汚染されていない魔族を救った事になるのだから君が、いや、君達が気に病む事などどこにもないのだよ。


 瑠空:教授・・・。


 慌てて入る研究員


 研究員:教授。大変です!


 ケイン:どうした。


 研究員:現在復興中の天界宇宙グリーンヒル王国で精神汚染物質カオス感染者が現れました!


 ケイン:宿主は?感染経路は?


 研究員:幸い感染者が宿主で、他者に感染する前に隔離出来たので他の方は天族・魔族共に無事ですが、宿主がいつ暴れ出すか判らない状況です!


 ケイン:瑠空君。


 瑠空:はい。


 ケイン:精神汚染物質カオスは我々魔族や天界の天族には極めて有害な感染型汚染物質。だが人間には無害な上に人間の体内に入った瞬間に消滅するものだ。そこで君に頼みがある。


 瑠空:私がグリーンヒル王国に赴き、私が開発したワクチンでカオスを消滅させるのですね?


 ケイン:一を聞いて十を知る。理解が早くて助かるよ。行ってくれるかな?


 瑠空:はい!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る