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 僕たちは、洞窟の通路を脱け、『妖精の国』の草原地帯に戻って来た。

 そして、少し気になったことをルート・ドライアードに聞いてみる。


「そういえば、『ニンフ』ってどの辺りに住んでるの?」

「ふむ、ここからだと、太陽が邪魔で見えないが、向こう側に大きな泉があり、そこに住んでおります」


『あれ、太陽って呼んでるんだ……』


『妖精の国』の中心に輝く光源のことを『太陽』と言うらしい。確かに太陽みたいなものだけど、ちょっと違和感を感じる。


「『ニンフ』の他にもいろいろな種族が住んでるんだよね?」

「ああ、他には、『トレント』・『フェアリー』・『ピクシー』・『レプラコーン』・『ケット・シー』が此処ここには住んでおります」


 ルート・ドライアードは、それぞれの種族の特徴を教えてくれた――。


―――――――――――――――――――――――――――――


『トレント』は、森に棲む動く木の妖精で、友好的な種族なので攻撃しない限り、襲われることはないらしい。ゲームでは敵キャラとしても登場することがあるモンスターだ。あまり妖精というイメージではない。


『フェアリー』は、羽根を持つ妖精で、人間の半分くらいの大きさらしい。確かシェイクスピアの作品にも出てくる妖精だ。


『ピクシー』も『フェアリー』と同様に羽根を持つ妖精だけど、『フェアリー』よりも更に小さいようだ。某ゲームに出てきた水着のような服を着た小さな妖精が思い浮かぶ……。


『レプラコーン』は、髭面の小人こびとのようだ。あまり聞いたことがない妖精なのでイメージできない。


『ケット・シー』は、二足歩行する猫のような種族らしい。これはイメージ通りだろう。「長靴をはいた猫」的なイメージだ。


―――――――――――――――――――――――――――――


『妖精の国』は、見た感じそれほど大きくはないので、探索していれば、そのうち出会うこともあるだろう。

 ちなみに、『トレント』・『フェアリー』・『ピクシー』は定住していないようだ。


『ワンダリングモンスター的な扱いなのかな?』


 そんな話をしているうちに、ドライアードの集落に着いた。

 ここから視線を上げると、壁に張り付いた湖のような水溜まりが見える。

 あれが、『ニンフ』の住む泉なのだろう。


 とりあえず、僕たちは疲れを癒すために大浴場へ移動する。


「じゃあ、ドライアード達を召喚して」

「御意!」


 脱衣所でドライアード達を召喚するように命じる。

 ルート・ドライアードが使い魔のドライアード達を召喚しはじめる。

 見る見る数が増えていくドライアード達。

 途端にガヤガヤし始めた。


『意外とお喋りな種族なんだよな……』


「じゃあ、みんな。風呂で疲れを癒そう」

「「はいっ!」」


 僕たちは、浴場に入った。


【エアプロテクション】


 もはや恒例となった呪文を使ってから、湯船に入る。

 入ったところで落ち着くと邪魔になるので、奥のほうまで歩いていく。

 振り返ると全員が湯船に入ったようなので、腰を下ろす。

 この浴場の湯船のお湯の深さは、60センチメートルくらいだろうか? 膝よりも少し上くらいだ。

 僕が腰を下ろすと、僕の周囲を囲むように使い魔たちが集まってくる。しかし、誰も座らない。


「あの……」

「何でしょう? ご主人様」

「座らないの?」

「ご命令とあらば、座らせていただきますわ」


 そして全員が湯船につかる。


『これでは落ち着けない……』


 フェリアが言っていたように使い魔というのは道具のようなもの。気にしなければいいのだろうが、裸のお姉さんたちに囲まれて僕はドギマギしてしまう。


 僕は、フェリスに確認をする。


「そういえば、まだちゃんと刻印を刻んでいないドライアードが多いよね?」

「ええ、ご主人サマ。召喚魔法しか刻んでいなかったり、何も刻んでいない子もいますわ」

「あとで、必要な刻印を全て刻んでおいてくれる?」

「分かりましたわ」

「フェリアとルート・ドライアードも手伝ってあげて」

「ハッ!」

「御意!」

「【刻印付与】を刻印すれば、それぞれの使い魔に刻印することができるようになると思うし……」


 ドライアード達は、トロールとの戦闘で召喚魔法が使えるほど魔力系魔術の能力が上昇した。当然、【刻印付与】も使えるようになっているだろう。全ての使い魔にフェリスたちだけで刻印を施すのは、時間がかかるので、刻印を刻んだドライアード達に【刻印付与】を刻んで、次々と刻印していってもらったほうが効率が良い。


「ご主人様、刻印はわたくしたちと同様でよろしいのですよね?」

「うん、彼女たちは、戦闘では基本的に遠距離からの支援攻撃部隊として使うつもりだから」

「畏まりました」


 フェリアが答える。


「では、早速」


 ザァーッ!


 使い魔たちが一斉に立ち上がったので凄い水音がした。


『急がなくてもいいのに……』


 引き留めるのも無粋なので、えて好きにさせることにする。


 彼女たちがプールサイドのような洗い場のほうへ移動するのを眺めながら、僕は一人、入浴を楽しんだ――。


 ◇ ◇ ◇


『所持金』


―――――――――――――――――――――――――――――


 所持金 …………… 1667388.73ゴールド


―――――――――――――――――――――――――――――


 所持金を確認してみる。先ほど、二人分のメイド服を作ったことで30万ゴールドほど減っていた。


『ルート・ドライアードを前衛キャラにするなら、もっといい装備で固めたほうがいいだろうな……』


 しかし、フェリスからプレゼントされたという甲冑や槍が無用の長物と化すのも何だか心苦しい。

 今すぐ強力な装備が必要というわけではない。当面は、トロールを相手にすることが多いだろうからだ。

 それに、強力な装備を作ったとしてもルート・ドライアードのレベルで装備できるとは思えない。

 そういう意味では、全身鎧を着て前衛を務めるのなら、フェリアのほうが向いているだろう。僕が命令すれば喜んで全身鎧を着てタンクをするだろうけど……。


『フェリアのイメージではないんだよな……』


 でも、いざというときのために作っておいてもいいと思い、僕は目を閉じフェリアの全身鎧を作成する。


【工房】→『装備作成』


『プレートメイル』と念じると甲冑のイメージが具現化される。

 僕は、こういった西洋の鎧に詳しいわけではないし、過去にも写真などでチラッと見た程度の知識しかない。

 しかし、こうやって映像が見えるということは、ルート・ドライアードの甲冑姿を正確に記憶したのだろうか?

 細部のデザインが結構違うようなので、もしかしたら、これが『プレートメイル』のデフォルト設定なのかもしれない。大きな違いは、ルート・ドライアードのものは、女性用といった感じで乳房のようなふくらみがあった。

 それとも、女性に装備するとそういうデザインに変更されるのだろうか?


『どうしよう? このままデフォルトらしきデザインで、形状が変わるか実験するのもいいけど、形状が変わらなかったら?』


 どちらかといえば、形状は変わらない気がする。他の装備では、サイズが自動調整されるだけだからだ。もし、形状が男女で変わるなら、胸当てなども変わらないとおかしい。それなら、最初から女性らしいデザインにしておくべきだろう。

 僕は、ルート・ドライアードが着ていた甲冑を思い出しながら『プレートメイル』を作った。

『プレートメイル』は、+0の無印装備でも30個のインゴットが必要だった。+50で作ったので80個ものアダマンタイト鋼が必要となる。

 こうして、『アダマンタイトのプレートメイル+50』が出来上がった。


 また、自分に『アダマンタイトの打刀+100』が使えるか試してみたところ、なんと装備できるようになっていた。

 トロールを2セット殲滅したことで『筋力』が上がったようだ。

 僕の装備は、以下のとおりとなった。


『装備1』


―――――――――――――――――――――――――――――


 武器:アダマンタイトの打刀+100

 鎧:アダマンタイトの胸当て+10

 鎧下:アダマンタイトの鎖帷子+10

 脚:竜革のズボン+10

 兜:アダマンタイトの兜+10

 篭手:アダマンタイトの篭手+10

 足:竜革のブーツ+10

 背中:竜革のマント+10

 下着:魔布のトランクス+10

 指輪:回復の指輪


―――――――――――――――――――――――――――――


『装備2』


―――――――――――――――――――――――――――――


 武器:アダマンタイトの打刀+100

 服:魔布のローブ+100

 脚:魔布のスラックス+10

 腕輪:アダマンタイトの腕輪+10

 足:竜革のブーツ+10

 背中:魔布のクローク+10

 下着:魔布のトランクス+10

 指輪:回復の指輪


―――――――――――――――――――――――――――――


『装備3』


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 右手武器:アダマンタイトの打刀+100

 左手盾:アダマンタイトのヒーターシールド+3

 鎧:アダマンタイトの胸当て+10

 鎧下:アダマンタイトの鎖帷子+10

 脚:竜革のズボン+10

 兜:アダマンタイトの兜+10

 篭手:アダマンタイトの篭手+10

 足:竜革のブーツ+10

 背中:竜革のマント+10

 下着:魔布のトランクス+10

 指輪:回復の指輪


―――――――――――――――――――――――――――――


『装備6』


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 上着:コットンシャツ

 脚:コットンパンツ

 足:革のブーツ

 下着:魔布のトランクス+10

 指輪:回復の指輪


―――――――――――――――――――――――――――――


『装備7』


―――――――――――――――――――――――――――――


 服:浴衣

 足:下駄

 下着:魔布のトランクス+10

 指輪:回復の指輪


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 丁度良いタイミングでフェリア達が戻ってきた。


「フェリア、装備を変更するからこっちに来て」

「畏まりました」


 裸のフェリアが僕の前に立つ。

 僕は、フェリアの装備を変更した。

 そして、フェリアの装備は、以下のとおりとなった。


『フェリアの装備1』


―――――――――――――――――――――――――――――


 武器:アダマンタイトの打刀+50

 鎧:ミスリルの胸当て+5

 鎧下:魔布のボディスーツ+5

 腰:魔布のスカート+5

 篭手:竜革の篭手+5

 脚:魔布のニーソックス+5

 足:竜革のブーツ+5

 背中:竜革のマント+5

 下着:黒のブラジャー

 下着:黒のパンティー

 指輪:回復の指輪


―――――――――――――――――――――――――――――


『フェリアの装備2』


―――――――――――――――――――――――――――――


 右手武器:ミスリルのショートソード+5

 左手盾:アダマンタイトのヒーターシールド+20

 全身鎧:アダマンタイトのプレートメイル+50

 鎧下:ミスリルの鎖帷子

 背中:竜革のマント+5

 下着:魔布のボディスーツ+5

 指輪:回復の指輪


―――――――――――――――――――――――――――――


『フェリアの装備3』


―――――――――――――――――――――――――――――


 武器:アダマンタイトの打刀+50

 鎧:竜革の胸当て+5

 鎧下:魔布のボディスーツ+5

 腰:魔布のミニスカート+5

 篭手:竜革の篭手+5

 脚:魔布のニーソックス+5

 足:竜革のブーツ+5

 下着:黒のブラジャー

 下着:黒のパンティー

 指輪:回復の指輪


―――――――――――――――――――――――――――――


『フェリアの装備4』


―――――――――――――――――――――――――――――


 武器:ミスリルの弓+5

 矢筒:アダマンタイトの矢+1 ×8

 鎧:竜革の胸当て+5

 鎧下:魔布のボディスーツ+5

 腰:魔布のミニスカート+5

 篭手:竜革の篭手+5

 脚:魔布のニーソックス+5

 足:竜革のブーツ+5

 下着:赤のブラジャー

 下着:赤のパンティー

 指輪:回復の指輪


―――――――――――――――――――――――――――――


『フェリアの装備5』


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 頭:メイドカチューシャ

 首:黒のチョーカー

 服:フェリアのメイド服

 篭手:アダマンタイトの格闘用篭手+10

 脚:黒のストッキング&ガーターベルト

 足:アダマンタイトの格闘用ブーツ+10

 下着:青のブラジャー

 下着:青のパンティー

 指輪:回復の指輪


―――――――――――――――――――――――――――――


『フェリアの装備6』


―――――――――――――――――――――――――――――


 頭:メイドカチューシャ

 首:黒のチョーカー

 服:フェリアのメイド服

 腕輪:フェリアの腕輪

 脚:黒のストッキング&ガーターベルト

 足:竜革のブーツ+5

 下着:白のブラジャー

 下着:白のパンティー

 指輪:回復の指輪


―――――――――――――――――――――――――――――


『フェリアの装備7』


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 服:浴衣

 足:草履

 指輪:回復の指輪


―――――――――――――――――――――――――――――


 僕が今まで使っていた『アダマンタイトの打刀+50』をお下がりとして装備させた。以前試したときには、装備できなかったので、フェリアもトロール狩りで『筋力』が上がったのだろう。

 盾装備の『装備2』に全身鎧を装備させた。『ミスリルの鎖帷子』は、僕が最初にフェリアからもらったものだ。面白いのが、下着を外したら元々、鎧下だった『魔布のボディスーツ+5』が下着扱いになったことだ。下着としても鎧下としても機能する装備だったようだ。


 僕は立ち上がり、湯船のふちに座った。使い魔たちも僕の後に付いてくる。


「一人ずつこっちに来て……」


 この後、僕は使い魔たちの母乳を吸ってあげた――。


―――――――――――――――――――――――――――――

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