死神姫の再婚
小野上明夜/ビーズログ文庫
【新作発売記念】「死神姫の再婚」×「250年後に目覚めたら、求婚されました」夢のコラボ小説★「未知との遭遇」
「まあ、こちらはアズベルグという土地なのですね」
「アズベルグの石屋敷」の窓から荒涼とした景色を見やり、メリールウは興味深げな顔をしている。
「ええ、そうなんです。ちょっとばかり作物の育ちは悪いですけれど、恐怖小説を読むには最高の立地ですし、最近は鉱山のおかげで潤っておりますのよ!」
恐怖小説と金儲け、二つの趣味を同時に満足させるすばらしい土地なのだと、アリシアは力説した。
「いつかは廃山になってしまうかもしれませんが、廃山には幽霊が付きものですから、そちらを観光資源として活用する手もあると思いますの!」
「それはいいことですね。私がお世話になっているオストアルゴの地も、観光地として有名なのです。アリシア様のご趣味なら、黒鳥城もきっと気に入ってくださるわ」
可愛い妹を見る姉の眼をして、メリールウは穏やかにうなずいていた。ほんの少し前、いきなり現れたとは思えない馴染みっぷりだ。
「……見た目は普通だが、アリシア並みの適応力だな」
ルアークにも確認させ、害のない相手と判断したカシュヴァーンはようやく警戒を解いてため息をつく。
「なにせ彼女は、眼が覚めたら二百五十年経っていて、一族郎党死に絶えていた事実にもすぐに適応したからな」
大仰な見た目もあって、メリールウの数倍警戒されていたヴィクトールは平然とうなずいた。
「……それは悪かった」
「大丈夫だ。メリーには、俺がいる」
毅然と請け合ったヴィクトールは、いきなり話題を変えた。
「ところで、お前たちは魔法が使えるのか?」
「使えない。最初に言っただろう。お前たちのところと違って、こちらには過去にも現在にも魔法そのものが実在しない」
出会い頭に「魔法使いなのか?」と聞かれ、また妙なのが増えた、とげんなりした顔をしたカシュヴァーンだ。身体検査などをしている間に、魔法についての講釈も聞いた。
「〈翼の祈り〉は違う意見かもしれんが、俺は奇跡も魔法も信じていない。だが……強いて言うなら、俺にとっての魔法使いはアリシアだな。彼女と結婚したことで、全てが変わった」
「そうか、そんな気がしていた。エーテルは観測できないが、物理法則が違うのだろう。早速調査を」
「待て! 違う、たとえ話だ! おい、無闇に俺の妻に近付くな!!」
メリールウに頭を撫でられ、きゃっきゃと喜んでいるアリシアに向かっていくヴィクトールを止めるカシュヴァーン。「冗談の通じない人にのろけるからだよ」と「父」の見境のなさに呆れつつ、それはそれとして「母」への無断接触を許さないルアークなのだった。
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