第4話「律の決心」4

◯知多玄

社長「今日もご苦労さん」

律「社長、今度の日曜、カブ借りていいすか?満タンで返すんで」

社長「いいけど…。おめえあれか?でえとかい?」

律「な、なに言ってんすか(汗)つ、ツーリングっすよ」

社長「紅生姜のママが言ってたぜ、律ちゃんとどっかの板前風が楽しそうにバイク屋から出て来たって」

律「やだなあ…。分高田の健さんですよ。私のバイクの師匠」

社長「おお!あのモンキー狂いか!あいつなら酒も女も博打もやらないで、油にまみれてモンキーいじってる変わりもんだ。まあ悪い奴じゃないから、仲人は俺がやってやるぞ」

律「なに言ってんですか、私なんか中学生並みの扱いですって」

社長「健とツーリングするなら、おめえもモンキー買ったらどうだ?」

律「やですよ、高いし、疲れるし、盗まれるし。やっぱりカブですよ。社長知ってます?スーパーカブは本田宗一郎と藤沢武夫が、パリまで行って構想を練った国民車ですよ。バイクどころか、人を運ぶ動力付きの機械として、世界で一番生産されたのがカブですよ。健さんはね、道楽でモンキー乗ってるだけで、走りたい時はハコスカ転がすんです。私は助手席に乗る女にはなりたくない。カブ最高!です」

社長「ふーん…力説するねえ。いいよ貸してやる」

◯軽快なエンジンを響かせ、律が去っていく。


社長「健のやつ…案外、いやまさかな。まあ取り敢えず、お膳立てしとくか…」

携帯を取り出し、

社長「あ、先代お久しぶりです。店?ぼちぼちですよ。ところで先代のギックリのもと、まだありますかい?」

◯電話の向こうでどなる声

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