第30話:さらなるランクアップと今後について
受付フロアを後にして、昨日来たオフィスへと移動した。
「あ~! お疲れ様お
義妹モードの紗雪。さっきの険しい表情からぱっとにこやかな表情へと変わる。
「お疲れ様です、
割と興奮気味の牡丹さん。お金関係は牡丹さんの管轄なのだろうか。何かすごい事になっているようだ。でもまぁ悪い気はしないな。
「さて、無事デビューを終えてこれからってところなんだけど、紗丹君は今4件の予約が入っている状態で、それ以外は全てオフの設定にしてあるわ。出勤の予定はどうしたらいいかみんなで決めましょう。私達との時間を作れるように考えないと、ね? ア・ナ・タ♪」
突然モードチェンジするの止めてほしい。普通に考えたら1人を3人で取り合い、いや分け合いか? している状態なんだし、みんながいる前でこれやられたらどんなリアクション取ったらいいか分からん。
「そ~ね、週に3日くらいがちょうどいいんじゃない? 牡丹ちゃん的にはどう思う?」
「週5日出勤してくれたら、お店の士気やアクトレス達のリピート数も上がりそうでいいんだけど、その分私達の時間が減るからね。週3か4くらいがいいんじゃないでしょうか」
思ったより普通の反応、いや少なくとも紗雪は2人だけの秘密があるから余裕があるんだろう。牡丹さんからは正直どこまで本気で思ってくれてるのかまだ分からんし、こんなもんなんだろうという気がする。
「いや、この仕事をどんなペースで続けて行くかよりも、今のバイトをどうするか先に決めないと」
「「「辞めて下さい!!!」」」
そうなるわな、昨日は無理に辞めろとは言わないって聞いたんだけど。
「今日のうちにバイト先に顔出すよ。今週のシフトどうするか相談しないと」
「あたしも行く!」
紗雪の同行が決定した。いやその時間は恐らくさゆだろうけど。瑠璃が俺の手をきゅっきゅっと握って来る。きゅっきゅっと握り返すと、眉間の皺がなくなった。
「あ、そうだ! プレちゃんの管理人からもらったプレゼント出して! ほら今すぐ出して!!」
何か分からんが勢いに負けて渡してしまった。紗雪がブツブツ言いながら自分の鞄にしまい、先ほど睨んでいたタブレットを見せてくる。
「そうそう、それと紗丹君に石田先輩の事務所から依頼をもらったわ。新人女優のお稽古相手。これは向こうのスケジュールに合わせるしかないから、やっぱり出勤日としては週3回にしておいて、
「結城? 結城って結城エミル!? すごいねお義兄ちゃん、もう女優さんのサポートすんの? 普通ランクBくらいから任せられるお仕事よ?」
それは初耳です。
「石田さんがエミルちゃんと同い年くらいで経験が浅い方がいいって言ってたからね。でもちゃんとプレイ出来る紗丹君なら大丈夫でしょう」
そうね、俺も何となく大丈夫な気がしている。演技うんぬんは別として、人間として結城さんと上手くやって行けそうな気がする。顔も見た事ないのに、何とも不思議な感覚だ。これが新人とは言えトップで活躍している女優さんの持つ魅力なんだろうか。
人に好感を持たせる雰囲気、電話越しでこれならこの先メロメロにされたりなんかしちゃったりして。おっと、そうならない為にプレイヤーへ彼女を作るよう指導しているわけか。納得。
デスクから立ち上り、牡丹さんが書類を持って紗雪の隣へと座る。
「プレイヤーとしての報酬を振り込む銀行口座を教えて欲しいので、この書類に書いてもらえますか?」
お金の事をすっかり忘れていた。確かにプレイヤーは仕事だからな、報酬をもらうのが普通だ。でも銀行口座なんていちいち覚えてないし、一度家に帰らないと書けないな。ん……?
「あの~、僕の名前と住所が先に書いてあるんですけど、この住所ってどこですか?」
牡丹さんの眼鏡がキラリと光る。
「このビルの最上階ですよ」
「この1フロア上よ、私達はそこに住んでるっていったでしょ? だからよ」
何がだからよ、なのか。
「お義兄ちゃん、いつ引っ越し出来る?」
「お断りしま「「「そのお断り、お断りします!!!」」」
などというやり取りの後、オフィスを出て俺のバイト先に向かう事になった。
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