友達の彼女の告白を断ったら、お断り屋にスカウトされました!
なつのさんち
第1話:友達の彼女にお断り!
「好きなの、付き合って下さい!」
いや無理だから、君って俺の友達の彼女でしょ?
オッケー♪って言うわけないじゃん、バカなの?
「もちろん友一君とは別れる、だから……」
いやいやいや、せめて別れてから来ようよ、俺が断ったら付き合い続けるつもりでしょ。
どっちにせよ俺と友一の関係にヒビ入れてんじゃんも~ヤダわお前。
何て言って断ろうか。
無理、の一言では絶対にコイツは聞かない。
何で、どうして、何がダメなのとしつこく食い下がるだろう。
友達の彼女だから。
友達の彼女だから。
友達の彼女だから。
これ以外の返事はないよな、普通。
じゃあ私が友一君と付き合ってなかったら良かったの?って言われるよな。
もちろんそれが最低条件だけど、でも友一の彼女じゃなかったらこの女の子とは出会ってないわけで。
だから前提条件からしてないんだよな~。
「そっか、そうだよね、友一君と別れる前に告白なんておかしいよね。私どうかしてた、あなたの事で頭が一杯になっちゃってたみたい。うん、分かった。今から電話でお別れするね?そしたら返事、聞かせてくれる?」
うわぁ~、断りの文句考えてたら勝手に暴走し始めたわこの人。
俺の無言が原因で友達が不幸のどん底に落とされるのは避けたい。
とりあえず電話をさせないようにしないと!
「ちょっと待って。友一に電話する必要はないよ」
よし、とりあえず鞄に手を入れた状態でストップを掛けられた。
「もしかして、友一君に黙ったまま付き合っちゃう感じ……?」
勘違い女来たわコレ。
自分の都合良過ぎる展開妄想してんじゃねぇよバカ。
今彼との関係を壊さず、新しい彼を手に入れて友達同士の友情は壊さずみんなハッピーとかお前の頭がハッピハッピーだよ!
とりあえずその上目使いを止めろ、そもそもお前はそんなに可愛くない。
「僕は友一とずっと友達でいたいと思ってる。この関係は壊してほしくない。だから、今日僕は君とこのカフェでは会ってない事にしよう」
ちょっと遠回しにし過ぎただろうか。
きつく振ってもいいんだが、隣の美人さん2人がめっちゃ耳を大きくしてこちらの会話を聞いているのに気付いてしまった今、男の見栄的に上手く綺麗に振ってみせたいという我が出てしまった。
でも正直さっきの言い方ではこの目の前のバカには伝わり切らないだろうな。
「そっか、やっぱり先に友一君とは別れないとだよね。それでちょっと時間を空けて、友一君に新しい出会いがあったくらいから付き合うのが一番だよね。そうだよね、そしたら友一君も私達の事、応援してくれるようになるよね?」
独自解釈発動してるよやっぱり。
どうしてそんなに都合良く思考が進むんですか?
思考が進む君でも食べましたか?
やはりここはスッパリと自分の気持ちを伝えるべきか。
「僕は君の事、恋人としては見れないよ」
ちょっとドラマを意識した言い回しになった感がある。
でも事実だ、そもそも俺はこの恋する乙女ちゃんの名前すら知らない。
友一だって、『これ俺の彼女』って、紹介するなら名前くらい教えろっつーんだよ。
しかもコイツとは会うの二回目だし?
1人で趣味のオシャレなカフェ巡りしてたら突然声掛けられて、それでいきなり告白だもん。
俺は一切コイツにモーション掛けてないんですよ?聞き耳立ててる美人のお姉さん達。
「……、どういう事?それって、身体の関係で済ませたいって事?」
いびつな笑顔で俺を見る友達の彼女。
何でエッチする前提なんでしょうか?
さてはアレだな?自分の願望を俺の言動に上乗せしようとしてるな?
友一の奴、初めての彼女だからベッドでどうすればいいか分からんとか言ってたな。
まぁ俺は童貞なんですけどね。
「違う、僕は君の事を、友一の彼女だとしか見れない。友一はいっつも君の事を自慢するんだ。友一が君の事をどれだけ大切に思ってるかも知ってる。一生懸命いろんな雑誌を見て、どうやったら君を満足させられるかなぁって努力しているのも知ってるんだ。だから、そんな友一の大切な存在を、自分の彼女にするなんて、僕には想像も出来ないんだ」
見ている雑誌は主にエロ本だがな。
「友一君が、私の為に…?知らなかったよ……」
友一は努力している顔なんて見せたらカッコ悪いよな?って言ってたからな。
一生懸命初めての彼女に尽くしてるんだけど、尽くしてる感が出ないように努力している。
だから本当は、俺の口からそんな事言うべきじゃないんだけど、この場では仕方ない。
この女の頭のお花畑さえどうにかすれば、みんな不幸にはならないだろう。
友達の彼女はしばらく黙りこくっていたから、その間に店員さんを呼んでケーキを2つ頼んだ。
運ばれて来たケーキをすすめ、今回の落としどころを提案しよう。
「今日ここで会わなかった事にしようと言ったけど、あれはなしにしてくれるかい?今日はたまたま外で出会って、君の顔が何だか暗いから、甘い物でも食べて元気出しなってこのカフェに付き合ってもらったんだ。君の顔を暗くしてた原因は友一で、いつも君を引っ張ってくれるのはいいけど、なかなか本心が分からないから悩んでいた。それで僕は、友一が陰で君の為にいろいろ努力しているって事を教えた。ほら、このチョコケーキ食べてみ?おいしいから」
さぁ食え、このチョコケーキを!
ここらへんの店で一番おいしいチョコケーキをさぁ喰らえ!
それを食べた後でもぐじぐじ言うようなら、お前の顔にアツアツのブラックコーヒーをお見舞いするぞ!
「……、ホントだ、おいしい。とってもおいしいよ……」
フォークを口に入れたまま呟く彼女。
ちょっと涙ぐんだ瞳と相まって、とっても可愛いシーンではあるんだろうけど、いかんせんそんなに可愛くないから俺は窓の外に目をやる。
あ、友一だ。
誰だ隣の手ぇ繋いだ可愛い女の子。
「ありがとう、私どうかしてた。付き合って3ヶ月も経つと初心を忘れちゃうんだね」
ソウダネ、たぶん友一も初心を忘れてるんだと思うヨ。
「ごめんなさい、嫌な思いをさせてしまったのに、励ましてもらっちゃったね。何だか最近友一君が変なの。何が変なのかハッキリと言えないんだけど、とにかく何か変で、それで私まで変になっちゃってたみたい」
女の勘ってヤツですね、実感しました。
友一とはしばらく連絡を取らないようにしよう、そうしよう。
そうだ、迷惑を掛けられたからちょっとした仕返しをしようか。
「心が変になるから恋なんだって、テレビで言ってたよ。友一のちょっとした変化に敏感に気付くって事はさ、それだけ友一を想ってるからなんじゃないかな?2人の愛は確実に育ってるんだよ、多少の障害があっても2人なら乗り越えられるよ」
そう言ってゆっくりと窓の外へ視線を移動させる。
ほら気付いた、大好きな彼の後姿と多少の障害に。
浮気現場に乗り込んで、その妄想力とお花畑脳で困難を乗り越えて下さい。
「ごめんさない、私ちょっと急用が出来たみたいなの。このご恩はまた今度友一君が返すから、今日は出してもらってもいい?」
ニッコリと頷いて、無言で彼女を急かす。
早くしないと逃げられるぞ!
「ありがとう」
そう言うと、彼女は全速力で走って店を後にした。
ふぅ、何とか乗り切った。
友一の自業自得のせいなのかお蔭なのか、告白をやんわりと断れる事が出来た。
さて、自分の分のケーキを堪能してから俺も出ますかね。
「ちょっといいかしら?」
おっと忘れていた隣の美人のお姉さん達。
返事も聞かずに2人が俺の対面のソファーに座る。
「あなた、どこのお店に雇われてるの?」
うわぁ、何かまた勘違い女の予感。
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