第18話 地味子ちゃんと結婚式を挙げて入籍した!

【9月18日(日)】結婚式の当日、美沙ちゃんが10時に僕のマンションへ来た。今日の打合せをして、お昼を一緒に食べてから、式場へ向かい2時に到着した。


係りの人との打合せを済ませて、美沙ちゃんと僕は着替えにそれぞれ別室へ。母親夫婦と竹本室長には3時に式場に来てもらうことになっている。


僕は着替えが済むと控室へ行って母親夫婦と竹本室長に挨拶を済ませる。美沙ちゃんは着付けに時間がかかっている。咲子さんが様子を見に行った。


暫くして、ウエディングドレスを着た美沙ちゃんが入ってきた。とっても可愛い。僕は衣装合わせの時に見ていたので、驚かなかったが、竹本室長の驚く様子が印象的だった。


そして「岸辺君が結婚したいと思ったのがよく分かった。君は見る目があるねえ」と言った。それから皆で式場に向かった。


美沙ちゃんは野上さんとバージンロードを歩いて来た。式は順調に進んだ。美沙ちゃんの顔は上気して目の周りと頬がピンクに染まっている。野上さん夫婦も嬉しそうだった。


誓いのキスをしたとき、美沙ちゃんの目から涙がこぼれたのが今でも目に焼き付いている。


式が終わると、二人の結婚記念写真を撮影、全員の写真はそれぞれのスマホで撮ってもらった。


これで、すべて終了。着替えを済ませてから、5人で会食の会場のレストランへ向かう。


会食では話が弾んだ。皆、気の置けない人ばかりなので、楽しい食事だった。咲子さんは美沙ちゃんが小さい時のころの話をしてくれた。


竹本室長は僕が研究所に入って二人で苦労したことなどを話していた。親しい人だけの食事会は成功だった。


野上夫妻と竹本室長をタクシーで見送ると、二人は渋谷のホテルに向かった。美沙ちゃんは高層のホテルの部屋は、夜景はきれいだけど落ち着かないというので、低層階の部屋にしてもらった。確かに落ちつく。


部屋に着くとすぐにキスをして暫く抱き合う。それから二人でシャワーを浴びてベッドへ、しばらくはゆっくり休みたい。


今日は結婚式、会食と続いて緊張していたのか二人ともかなり疲れていて、なかなか愛し合う気になれない。


「ひとつ教えて下さい。プローズしてもらった後に出てきたケーキにありがとうと書いてあったんですけど、お受けしないとは考えなかったのですか?」


「交際を申し込んだ時も、花火を見に来ないかと誘った時も、そして美沙ちゃんを抱いた時も、受け入れてくれたから大丈夫と思っていた」


「随分、自信家なんですね」


「それから」


「それから?」


「美沙ちゃんは今を今日を精一杯生きるといつも言っていたから、このプロポーズされたこの時を大事にしたいと思うに違いない、大事にしない訳がない、だから絶対に受けると確信していた」


「そのとおりでした。さすがに潤さんです。もうかないません」


「でも、突然大声で泣かれたのは全くの想定外で慌てた」


「嬉しくて、嬉しくて、もう感情を抑えることができませんでした」


「あわただしかったけど、式を挙げてここまで来た。明日、婚姻届を出せば美沙ちゃんは完全に僕のものだ」


「今でもすべて潤さんのものです」


美沙ちゃんが抱きついて来る。


【9月19日(月)祭日】ぐっすり眠れた。目が覚めたら6時。美沙ちゃんもほとんど同じころに目覚めたみたいだけど、ジッと身体を寄せて動かない。肌が触れあって心地よい。


「もう少しこうしていよう」


「このままこうしていたい」


また、二人はまどろんだみたいで、今度は気が付くと8時だった。さすがにもうこれ以上は眠れない。おはようのキスをして身づくろいを始める。


9時に朝食のラウンジに降りていくと、朝食を食べている人はまばらになっている。もうほとんどの人は朝食を終えたみたいだった。


ビュッフェスタイルで食べたいものを適当に集めてゆっくり食事。今日は休日だけどこれから二人で区役所に婚姻届を出しに行く。


10時にチェックアウトして、溝の口駅の近くの区役所へ向かう。


昨日、式が済んでからお母さんと竹本室長に署名捺印してもらった婚姻届、必要書類、身分証などすべて準備してある。


窓口で書類が確認されて受理された。婚姻届受理証明書を発行してもらった。これで社内手続きは進められる。


美沙ちゃんのアパートは駅の反対側だけど、見送り方々、立ち寄って行くことにした。


部屋の中にはもういくつか引越しの段ボールが積み上げられていた。美沙ちゃんがコーヒーを入れてくれる。二人で貰った書類を見ている。


「本当に潤さんの奥さんになったんですね。今日から岸辺美沙ですね」


「美沙ってどういう意味?」


「父は沙というのは仏教で使われていてありがたい字だと言っていました。慈悲深い心の美しい女の子になってほしいと付けたのだそうです」


「潤ってどう意味なんですか」


「人に潤いを与える人になってほしいと付けたそうだけど、呼びやすいのと響きも良いからとか言っていた」


「人柄に出ていますね」


「美沙ちゃんもね、一緒にいると心が癒される」


「一つ聞いてもいいですか?」


「いいよ、何?」


「潤さんは元カノと別れてから、女の人がほしくならなかったのですか?」


「健康な男だからね、しかたないでしょ」


「それでAV見てたんですか?」


「もう勘弁してくれ、はい、そうです。それに」


「それに?」


「それにプロの女性にご厄介になっていた。月1くらいかな、仕事の暇な時に」


「そういえば、会議が終わって一段落したころに、午後に休暇を取っていましたね。まさかその時ですか?」


「そう、ウイークデイの午後は空いているから、休日は混んでいるので、それに休暇も使わないといけないから」


「まさか私と付き合ってからはないですよね!」


「本当にありませんし、これからも絶対にありません。もう美沙ちゃんがいるから」


「誓って?」


「誓って!」


そう言うと、美沙ちゃんが抱きついてきた。もう誰にも遠慮はいらない。ただ、愛し合う。


それから、お昼になったけど、朝食が9時でそれもお腹いっぱいに食べたので、冷凍してあったケーキを二人で食べた。


折角の機会だから、関西へ持っていく家具や荷物のすり合わせをした。美沙ちゃんも僕も家財が少ないのですぐに終わった。


もうすぐ二人だけの生活が始まるけど、あと10日ばかりは、プライベートは休日だけ! を継続して別々に生活することにした。

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