夕闇ニ潜ムハ影ノ幻
初めての投票が終わり、ガナハは自室で胸をなで下ろした。
「人狼が吊れたって思いたいけど、シスイが聞いたら鼻で笑いそうだな」
鬼桐院が『ガナハが気になっている』と言った瞬間全員の視線が自分に集中したことを思い出し、全身の毛穴が開き髪が逆撫でされた様なおぞましい気持ちになる。
自分の思い当たる節の無い、根拠の無い疑念。我那覇はその濁った悪意を向けられた経験に乏しく、思い出すだけで身の毛がよだち身震いしていた。
「誰が人狼なのか、探っていかなくちゃならないんだよな」
自身に言い聞かせるように、誰も聞く相手のいない一室で呟いた。
「まず術師の二人から考えていこう。どっちが本物で、どちらが嘘を吐いてるのか」
術師として名乗りを挙げたのは佐伯と染内。佐伯は酒々井を狼では無いと主張し、染内は棘坂を同じく狼では無いと主張した。
「態度だけを見れば、おどおどしてる染内の方が怪しいのはわかる。ただ、それだけ怪しい態度をとってしまう人間が果たして嘘をつけるんだろうか?」
棘坂を見つめ、やがて何かを決意するかのように結果を伝えた染内を思い出す。
「あれは……嘘を吐くぞ!っていう覚悟なのかな」
であるならば染内は人狼であり、また棘坂も狼である、ということになる。
その場合佐伯が本物だ。
「そんな簡単な話かなあ。でも今回みたいに、今日吊る対象ではなくなった事を考えれば悪くないのかな」
我那覇は困惑していた。何より彼は騙し合い等したことがない。全くの未経験。全くの初心者である我那覇にとって、何が真実で何が嘘なのか、それを判断する基準すら持ち合わせていないのだった。
「だめだ。ぜんっぜんわかんない。もう術師の事は後で考えよう。今は誰が誰を疑ってたかだけでも頭に入れないと」
霊感師が生き延びていれば、天宮が人狼だったのかがわかる。もし天宮が人狼だった場合、天宮を疑っていた、投票した人間は疑わずに済むのだ。
「しまった……アマミヤさんに投票した人は7人もいるんだ。名前を覚えるだけで精一杯だっていうのに……くそ。向いてないなぁ、こういうの」
フラストレーションに苛まれ頭を掻き毟りながら、我那覇はある事に気付く。
「あれ?もしかして……」
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