268.再びの場所へ
暑くもなく寒くもなく、かと言って涼し過ぎることもない。
四季はあるけれど、この
セリカさんの授業で知ったが、冬場は大雪が降ることもあるらしい。
しかし、フィーさんがこの世界の主神であれ、気候を大幅にいじる事は禁じられているからか。台風とかは特にないらしい。あくまで、それはセリカさんの授業で聞いた事だけど。
「フィーさん」
「んー?」
鼻歌を歌っているフィーさんに声をかけると、フィーさんは楽しそうな表情で振り返ってくれた。
その彼の上で、クラウは『ふゅゆ』とか言いながらしがみついていたが。可愛いが、僕は彼からクラウを取ってあげた。
「ここって、年中こんな感じなんですか??」
この洞窟、クラウを見つけた時もだが……とても過ごしやすい空気なんだよね??
今の僕が、少し七部丈の服装でいるのに寒過ぎず、暑過ぎることもない。クラウはちょっともこもこだから、生まれたばかりの夏はダレてはいなかったけど……お城の中は魔術で快適空間だったしね?
だから、ちょっとだけフィーさんには聞きたかったんです。
「ん〜? この洞窟はね? クラウの卵を保管していた理由もあったから、出来るだけ過ごしやすいようにはしてたよ?」
「けど、今もですか?」
「今日の目的のものも、ある意味熱には弱いからね?」
「宝石……ですよね??」
「ちょっとだけ、ちーがーう」
「違う??」
なんだろうと思いながら、二人と一匹で歩いた先には。
クラウを見つけた時の台座のような岩とかがどこにもなくて……代わりに、アニメとか漫画で出てくるような、瑠璃色の氷にも見える水晶の結晶があちこちに生えていた!?
「ふゅゆうううう!!」
クラウは懐かしいのか、僕の腕からすぽんと抜け出して。薄い金の翼ですいーっと飛んでいくと……その結晶のひとつにしがみつくと思ったら、かじりついた!?
「く、クラウ!?」
僕が叫んでも、クラウはお菓子を食べるように離れずにカジカジしていた。
「クラウなら、大丈夫だよ。あれは……クラウの卵を維持するのに溜まっていた神力が一部結晶化したものなんだ」
「お腹……壊さないです??」
「大丈夫大丈夫。とりあえず、目的はあれ。あの一部を加工しちゃってセヴィルへのプレゼントにすればいいよ?」
「……いただいて良いんですか?」
「僕が許可したから、大丈夫!!」
と、太鼓判を押すように言ってくださったので……持ち帰りやすい大きさの結晶をいくつか失敬して、僕らは再び転移の魔術で僕の自室に戻ることになった。
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