235.呆ける理由(途中別視点有り)
◆◇◆
頭がぼーっとする。
ふわふわした感じもする。
せっかくコボティさん達が作ってくれたご飯も、ちょっとずつしか食べられない。
「……カティア?」
かけられる声も遠く聞こえる。
けど、応えなきゃと横を見れば心配そうに見てくるセヴィルさんの顔が近い。
近過ぎて、すぐに昨夜の別れ際の事を思い出してしまった。
「だ、だだだ、大丈夫、です!」
椅子に座ってるから後ろに下がれないが、思いっきり顔を引くとセヴィルさんは少し目を丸くした。
「おい、ゼル。お前カティアに昨夜何かしたか?」
エディオスさんがセヴィルさんの肩を掴んだが、セヴィルさんは思い出せないのか首をひねった。
「特に……いや、あ」
やっと思い出されたのか、少しずつほっぺが赤くなっちゃった。
「こりゃ聞かないとなぁサイノス?」
「だなぁ?」
「ちょ、おま、は、離せ⁉︎」
聞き出す気満々になったお二人に肩を掴まれ、セヴィルさんはどこかに引きずられていった。
「ふゅふゅぅ!」
「クー?」
話に加わりたいのか珍しくクラウも飛んでいき、サイノスさんに抱っこしてもらってました。
「カティア、熱でもあるなら今日は無理しなくていいよ?」
「ぜ、全然大丈夫です!」
違う意味で熱はあるけど、体調は特に大丈夫。
それは本当なので、やり過ぎなくらいに首を縦に振った。
「それなら……って、アナ一人にさせちゃうね? 人出が多いに越したことはないからこっちに来る?」
「よ、よろしいですの?」
「包丁は危ないから、それ以外のだけどね?」
じゃあ、とアナさん料理初挑戦になりました。
僕は残してたご飯をなんとか食べ終えてから、片付けをコボティさんにお願いした。
「あ、ディックさん?」
「おお、カティア様。おはようございますですぞ!」
服装からなんとなくそうかな?と話しかけたら、ディックさんで合っていた。
彼は肉球がある手でも、人間と変わらないくらい丁寧に下げ物を持って台車に乗せていく。本当に器用だなと思った。
「おはようございます。あの、ディックさん達が好きな食べ物ってなんですか?」
「わたくし達ですか?」
「はい。あと二日お世話になりますし、何か作らせてください」
次いつ来るかわからないから、お礼をさせてほしい。
ディックさんは自分達の務めですから気にせずとも、って言ってくれても気にしちゃうのは僕の性格だ。
じっと見つめ返せば、ディックさんはお皿を台車に置いてから小さく咳払いされた。
「わたくし達コボティが好むのは、プアルと言う木の実ですな」
「プアル?」
「神域にいるからこその贅沢品ですが、カティア様達にも昨夜のデザートでお出しした甘い果実です」
「あ!」
あのマンゴーに似た味のプリンみたいな?
果物なのに柔らか過ぎて、いくらでも食べれるって何個もお代わりしたんだっけ。
「じゃあ、フィーさんに許可もらえたら何か作りますね?」
「楽しみにしてますぞ!」
「コボティさん達って、全員だとどれくらいですか?」
「ざっと50体ですな」
「おう……」
先に聞いといて良かった。
とりあえず、もう厨房に行ってるフィーさん達を追いかけるのにディックさんに案内してもらいました。
「あ、来た来た! カティア、こっちこっちー」
広い広い厨房は上層調理場より断然凄い。
設備は似せてるけど、広さが段違いだ。
いくらフィーさんのお屋敷でも、使用人としてコボティさん達が50人もいるなら納得出来ちゃう。
そのフィーさんに呼ばれてもどこだときょろきょろしてたら、少し奥の方で彼の白い手がおいでおいでと動いてた。
「お待たせしま……した?」
急いでそこへ行けば、目に飛び込んで来たのはアナさんとセリカさんの格好。
着せ替え魔法を使ったのはわかるけど、なんでお二人ともフリフリエプロン?
「かっわいいでしょー?」
フィーさんはさすがに着てないけど、料理をするからマントなしのラフな格好だった。
「可愛いですけど、何故この格好に?」
「料理する女の子の定番って兄様に聞いたから」
レイアークさんのイメージが変な方向に行きそう。
あの人に会ったのは内緒らしいから、アナさん達の前では言えないが。
それは置いといて、このパターンだと。
「僕もこの格好ですか?」
「あったりー!」
そうして指が鳴ると、ぽんって音と共に僕の服装もフリフリエプロンとワンピースにチェンジさせられた。
「今日作るのはー、煮込み料理! セリカにはクッキーお願いしたいんだー」
「わかりました!」
「アナはキアルの処理かな? すこーしだけ包丁使うけど、実を割るだけだから」
「お任せください!」
「僕は全体的にですか?」
「そだね?」
なので、まずはアナさんの包丁使いかどうかとキアルを割らせたら甘い匂いが広がった。
「「「こ、この匂い⁉︎」」」
間違いなく、『チョコ』。
この世界じゃココルルの匂い⁉︎
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(サイノス視点)
「で、ゼル。昨夜カティアになんかしたんだろ?」
エディが借りてる部屋に入らせて無理に聞いてるが、ゼル本人は顔を赤らめながら口をつぐんだまま。
あいつに憧れてる淑女達に見せたらどうなるか見たい気もするが、カティアが悲しむ結果になるのが強いので頭の隅に追いやった。
腕の中にいるクラウは、俺の胸辺りで何故か頬擦りしてきてる始末。別に嫌ではないが、聖獣にもだが神獣にも好かれてたか俺?
「いーかげんに口割らねぇとそこにある飴ぶっこむぞ?」
「やめろ!」
「じゃ、言え。カティアの方は料理ですぐに話さねーだろうが、アナ達だって気にしてんだぜ?」
「う゛っ」
「ふゅ、ふゅぅ!」
「クラウ?」
いきなり声を上げたんでエディ達もこっちを見たが、クラウは一旦俺の腕から抜けて袖を引っ張ってきた。
「どーした?」
「ふゅ、ふゅ」
「は、こう?」
念話が出来んかなんとなくで動かされれば、結局はまた俺の腕の中に戻ってきた。
ただ、抱き方は違って後ろから腕だけで抱える感じだ。
「……おい、ゼル」
エディが顔をにやけながら何故か逃げようとしてたゼルの肩を掴んだ。
「前もやったらしいが、昨夜もああしたのかカティアに?」
「む、無意識、だ!」
「「嘘つけ」」
お前さんが無意識だけでカティアと接触しようと思わないだろうが。
「けど、これだけか? てっきり、カティアにキスでも」
「するか!」
「……お前さん、あれだけ積極的に関わってもまだか」
「お前達に言われたくない!」
それは正論だが、ある意味両想いなのに何故それぐらいしない。
けどカティアも大層ウブなとこがあるから、仮に口以外でもさっき以上に惚けてしまうだろうな。
それは昨日までのセリカもきっとそうだろうが、俺は自分の事に少し悩んだ。
(脈はねぇとは思うが、何故避けるんだ……)
俺に傷がついたあの日がきっかけなら、一度きちんと話し合うべきか。
機会を作ろうに今日明日で出来るかどうか、エディ達にも協力してもらおう。逆もまた協力するからだが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます