自由散文詩掌編『嘲謔』

朶骸なくす

砂の城

麻のワンピースで砂浜を歩く

サンダルに砂が入り込もうとかまわない


なにせ、あなたが気を使って買ってくれた服だから

潮風に晒されてもかまわない


前を歩いてうしろを向けば

笑うあなたがいてくれる


遊び半分の砂の城

浜辺の砂は柔らかく


水もささずに山をつくれば

さらさら手のひらから零れ散る粒子に

形にならない砂の城


「うまくできないね」と言ってみる

返事はなくて、振り向けば

やっぱりあなたはいないのです


だってこれは砂の城

簡単に崩れる砂の城


ワンピースに砂が混ざるものだから

帰ったら捨てると思います


できれば塩水につけて捨てますので

どうぞ、忘れてください

私も捨てますので忘れてください


砂の城

波にさらわれ消えるのだ

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