ケダモノとロリータと獣と

 体もよくなり元気になった俺は森の中にいた、ちなみにこの森は俺が死にかけた森のようだ。見覚えがある。

そんなところで何をしているのかと言われれば隠れている....と言っても別に獣けものに追われているわけではない。そんな獣ものよりもっと恐ろしいものから俺は逃げているそれは俺のじいちゃん(ケダモノ)だ。

事の起こりはすこし前に巻き戻る.....




 俺は体も動かせるようになったので、前から気になっていたことを試すために森に行こうとどこ準備していた。

俺のいる村は全員でも30人ほどしかおらず広場と呼べるものがない。だから子供が遊ぶ場所は森などの近くの開けた場所で行うしかないのだ。


 家の中で試してもいいが試したいことは[やばい]ものかもしれないので、できればなるべく被害の少ないところでやりたいので準備をしていると声をかけられる


「そんなに詰め込んでどこに行くのじゃ?」


振り返るとそこにはムキムキのゴリラ...違ったじいちゃんがいた。

いたのだが....その手には恐ろしいものが抱えられていた。


頭の中で警鐘が鳴っている


「じ、じいじそれは何?」


声が震える...そんなはずないと頭によぎった予感を否定しながら尋ねたが...


「これか?これはの」


笑顔で持っていたものを掲げて絶望の一言を放った。


「新しいお主の服じゃよ」


その瞬間俺は荷物も持たずに家を飛び出していた






走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る


 村から出て森に入りひたすら走り続ける。

あれはだめだ、あの服は呪いの服だ。着ただけで俺は死ぬだろう。


 それは俺がこの体になる前に見るのが好きだったファッションの一つ....着ればあどけないかわいらしさ、小悪魔的な美しさを表現し「大人の少女・・服」と形容されることもある服


 人はそれをロリータ・ファッションと呼ぶ



 イヤイヤイヤ、違うだろうあのピンクでひらひらしたのはアリアみたいな美少女が着るべきだろ?なんで俺が着るんだ?俺は男なんだぞ?


 以前にもこんなことがあった記憶がある。その時は2歳の誕生日でお祝いと言ってワンピースを渡してきたのだ。それからしばらく自分の性別について悩んでた記憶が...う...これ以上はいけない....


 とにかく今はケダモノから逃げなければならない俺が[社会的]に死なないために...



走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る



休まずに走り続けていたので体がふらつきその場に倒れこんでしまった


 疲れた体を無理やり起こして近くの草むらの中に逃げ込んだ。

草むらの中から様子をうかがう.....じいちゃんはまだ来ていないようだ


(おかしい...俺がここまで逃げるのに捕まらないなんてことあるのか?)


 いくら老体とは言えどあれはただの老人ではない、だって記憶の中に鹿らしき動物を追いかけて狩りをするような人間離れした爺さんだ、こんな子供に追いつけないはずがない。


(となると、どこかで様子をうかがっている....?)


その時後方で草むらが動いた


(やはり潜んでいたか!これでもくらえ!)


俺は近くにあった手のひらサイズの石を掴み音のしたほうに投げた


「ギャルウぅぅぅ!」


 草むらが揺れそこにいたものが怒りを露わに立ち上がる。その姿をみて硬直する

石は見事に当たったのだが、その結果は期待していたものとは違っていた。


 目の前に現れたのは体長二メートルほどで全身真っ赤な炎を思わせるような体毛をした熊のような動物だった。そいつが近づいてくる、その時何かが落ちた。

 それはさっき俺が投げた石だ、赤く染まっている。熊をよく見るとそいつの右目は潰れて血が流れていた。


(もしかしてさっきの石がこいつの目にあたったのか?いやいやそんなわけないだろどんなエイムしてんだよ)


「ギャウっ!」


自分のエイム力を否定してながら体を動かそうとしていると熊もどきは左前足を動かしていた、俺を殺そうという意思を持って。

時間がゆっくりと進む...見えているのに、どう来るのかわかるのに体が動かない

その熊の爪が燃えながらこちらにふりおろされていく、いまは左頬のすぐそばだ。


(あぁ、今度こそ死ぬのか?)


そう思ったときだれかが言った


⦅死にたいの?⦆


それはひどく幼いが鈴の音のように響く声


(死にたくないに決まってんだろ)


その声に反発するように答えた


⦅じゃあ、そうならない未来を描いてみようよ⦆


俺はその声に従った、従ってしまった。


(この熊がいなくなればいい)


そう思った瞬間自分でも気づかないうちに右腕を振り下ろしていた


ビチャリ


音のしたほうを見るとそこには赤々と燃える動物の手があった....だが、肘から先がなかった。





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