第4話

運転席の窓に、老婆の顔と両手がべたりと張り付いていた。


俺の反応から警官も気付き、老婆を見た。


「ちょっ、おばあさん。いったいなにしてるんですか」


すると警官がドアに手をかけていないのに、ドアが開いた。


「えっ?」


老婆が上半身をパトカーの中に入れた。


信じられないほどに、素早い動きだった。


そしてそのまま警官の首に、かぶりついた。


「ぎゃっ!」


警官が女のような悲鳴を上げた。


首から大量の血が勢いよく噴出している。


あまりにも想像を超えた情景に、俺は全く動くことができなかった。


警官はもがいていたが、老婆の左手が頭をがっちりと抱え込んでおり、逃げ出すことができないでいた。


それを恐怖そのものとして見ていた俺は、やがて気付いた。


老婆の口が警官の首の中心近くまで押し入っている。


そのあたりの肉がなくなっていた。


喰っているのだ。


警官の首を老婆が。

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