第2話
その時である。
「……へった」
声が聞こえた。
警官が俺を見た。
「何か言いましたか」
「いいえ」
「……へった」
また聞こえた。
俺と警官は顔を見合わせた。
聞こえた声が男性ではなくて女性、それもかなり年配の者の声に聞こえたからだ。
声は後方から発せられたように思えた。
警官もそう思ったのだろう。
後部座席を覗き込む。
いつのまにか誰かが乗り込んだのではないかと考えたようだが、もちろん誰もいなかった。
「外にいるのかな」
警官が外に出て、周りを懐中電灯で照らし始めた。
偶然見知らぬ民家の前に車を停めたが、民家の周りはちょっとした林になっており、その右側には山があり、左は田畑が広がっていた。
一番近い家までけっこうな距離がある。
そう言った立地だった。
一通り探したが、なにも見つからなかったようだ。
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