第14話 冷静沈着
空中攻撃を終え、壇上へと降り立つルスラン。
二人のにらみ合いが続く。
ルスランのアッと驚くようなエアルを駆使した攻撃。
そしてそれを冷静に見て対処するスターズ。
どちらに勝利の女神は微笑むのか?
緊迫した場内。
間合いを図っていた両者が動き出す。
「雷光瞬迅槍(らいこうしゅんじんそう)!」
下の足から徐々に上半身へと攻めていく素早いルスランの連続突き!
しかし、スターズは無駄のない動きでルスランの突きをことごとくよけ、
「旋回脚(せんかいきゃく)」
斜め前へとステップを踏んで飛び込んできた!
そして、
「鎌鼬(かまいたち)!草刈り(くさかり)!」
スターズの攻撃が当たる距離まで近づくと、スターズの顎を狙った右アッパーからこめかみを狙う左フックを放ち、その後ルスランの左足を狙った右のローキックへと繋いできた!
アッパーとフックはルスランにガードされたが、右のローキックはしっかりとルスランの左の太ももを捉えていた。
この流れるようなコンビネーションが非常に上手いスターズ。
そして、
「肝突昇り竜(かんとつのぼりりゅう)!」
スターズのジャンプをしない左の膝蹴りが見事に脇腹に命中!
「猛墜鍾(もうついしょう)」
決して今の膝蹴りでダメージを受けていないことはないルスラン。それでも槍斧による大ぶりの一撃をスターズの顔面目掛けて振り下ろす。
しかし、ブンッ!という空振りの音とともに、スターズはスウェーバックを使って上半身を後ろへ反って避けてしまう。
「今のルスランの攻撃も全く当たらないですよ・・。普通膝蹴りを突き刺すと相手との距離が近くなりますし、ましてやルスラン選手は武器を使ってますから・・」
実況席のムツキは驚きを通り越してスターズの恐るべきディフェンステクニックにまるでSFの映画でも観ているかのように呆れた面持ちだ。
しかし、これは現実だ。こんな強豪が世界にはいるのだ。
・・・そろそろ頃合いといったところか
『もう観客を魅せる茶番は終わりだ』
壇上の二人の表情がそう物語っていた。
「無限 雷光瞬迅槍(むげん らいこうしゅんじんそう)!」
ルスランは先ほど使った神速の連続突きをスターズ目掛けて放つ。
先ほどと違う点は連続突きをしながら前後左右にステップを使い、相手を追いかけたり、下がりながら連続突きを繰り出すので、
まさに攻防一体となった槍斧の奥義なのだ!
スターズが右へサイドステップをすればルスランもそれを追い、左へステップすれば左へ、執拗に追いかけ、徐々に距離を詰めてくる。
・・・だが、
さすがのルスランもずっと同じリズムで神速の連続突きを出来るわけでわなく、
どこかで一瞬途切れる瞬間があるのだ。
その瞬間をスターズは見逃さなかった。
パシッ
スターズはルスランの槍斧の持ち手に近い部分を素手で掴み、自分の方へと引き寄せる。
「ヤバイ!」
リュードはスターズが仕留めにかかっているのをいち早く気付いていた。
素手で掴んだ槍斧を引っ張られ、ルスランも引き寄せられたところにスターズはルスランの胸を目掛けてサイドキックを見舞った!
ルスランはスターズの蹴りを受け、槍斧を手放してしまい、後ろへと飛ばされる。
スターズはルスランから奪った槍斧を壇上へと投げ捨て、飛ばされたルスランを追っていく。
そして・・・
「肝突昇り竜(かんとつのぼりりゅう)!」
スターズはルスランのみぞおち目掛け、強烈な膝蹴りをルスランに打ち込んだ。
「・・・・・」
ルスランは声を上げることも出来ず、腹部を抑えて悶絶する。
1・・2・・3・・
ルスランのダウンにカウントが取られていく。10カウント以内に立ち上がれなければルスランのKO負けだ。
立てるか!?
「・・・(いや、無理だな。その前にもいい膝が入っていたからな)」
リュードはルスランの負けを確信していた。
・・8・・9・・・・・10!!
ノックアウト!!
ルスランも良い技をたくさん持っていて会場を沸かせていたが、終わってみればスターズの圧勝だった。
スターズはほとんど表情を変えないまま両手を上げ、ほとんど汗をかいていない状態で壇上を下り、控え室へと戻っていった・・・。
リュードはこんな強豪相手に去年負けているのだ。
果たして今年もしスターズと当たるようなことがあれば、リュードはスターズに勝つことが出来るであろうか・・・
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