猫と象

猫は小さくて気まぐれだったが象のことは大好きだった。とある豪邸で飼われていた二匹はあっという間に仲良くなり、異種族の間ながら友情を深めていた。


「なあ、象、お屋敷に何不自由なく飼われている俺たちだけどたまには野生に戻ってみたくないか?」


「今更アフリカに戻って暮らせなんて到底無理な話だよ、俺たちはここで暮らしていくしかない」


象の後ろ向きな姿を少し残念に思った猫である。猫はもっと違う答えを用意しているものだとばかり思っていた。


それから時だけが過ぎ、猫は老いてすっかり野生の勘など忘れた頃、再び象のもとへと足を運んだ、象はもう自分は長生きしすぎたと瀕死の状態で横たわっていた。


「アフリカに帰りたい……」


多分それが本音だったのだろう、猫にはどうしてやることもできず瀕死になった象を見守っていることしかできなかった。それから獣医がまもなくやってきて、亡くなった象の後始末をしていた。野生に戻るにはすこし贅沢をしすぎた猫である、でもその日猫はお屋敷を後にした。亡くなった友人の意思をつぎながら。

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