第13話 秦始皇帝
始皇蜂準鼻
長目冕旒間
急雨濡松静
星辰降地閑
李斯咸法治
徐福島登攀
政未批評許
儒家穴苦艱
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★自分メモ
なぜ自分メモを残すかというと、作ってから時間が経つと、自分で読みも意味も分からなくなってしまうからです。
その時のメモを見返せば思い出すのですが、だったら最初から自分メモも一緒に書いておいた方が分かり易いので。
というわけで、以下、作品の読みと意味、作品制作の手順等を詳細に描き残しておこうと思います。
「そんなの読む必要無いわ」という方はスルーでお願いします。
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元々これはツイッターのフォロワーさんが描いた秦の始皇帝の絵とエピソードの紹介が良かったので、それに影響を受けて作ったもの。言うなれば二次創作です。
最後のオチで「気に入らないヤツは埋める」というのだけを考えて作っています。
全体の構成とか深く考えず、盛り込みたいエピソードを頭からぶちこんで行きました。
一句目の蜂準鼻と二句目の長目は、一般的に知られている始皇帝の容姿。いかにも残虐で狡猾で徳が高くないような感じです。
冕旒とは冕旒冠のこと。皇帝がかぶっているスダレの付いた冠。で、そのスダレの間から目が覗くということで「間」を韻字としました。この時点では深く考えていなかったのだけど、これが大失敗。この後、これが原因で、なまら苦労することになります。
三句目は、泰山に封禅の儀式に行った時、急に雨が降り出した時に松の木陰で雨宿りをしたので、その松に官位を与えた、というエピソードから。
四句目は、天の星座になぞらえて宮殿を配置したことから。松を擬人化して官位を与えたり、地上に星座を再現したりと、お茶目な部分もある。
で、律詩なので三句目と四句目は対句になっていなくちゃいけないのですが、これってビミョーですよね。対句になっているのやらどうやら。なっていたとしてもあまり良くはないような。
五句目。ここから始皇帝の側近の人物が登場。
六句目。この五句目と六句目の対句はそれなりに上手く行っている。人物を題材にし、場所と行動ということできちんと対になっている。
七句目。始皇帝の暴君ぶり。
八句目。始皇帝は自分を批判した儒家を土に埋めた焚書坑儒が有名。
オチだけは付けてあるけど、今にして思えば四句目までの前半と五句目以降の後半とで意味的な転換も無いので締まりが無いですね。
・詩の読みと語注と意味。
始皇 (しこう)、蜂準 (ほうせつ)の鼻
長目(ちょうもく)、冕旒 (べんりゅう)の間
急雨 (きゅうう)、松を濡らし静か
星辰 (せいしん)、地に降り閑 (かん)たり
李斯 (りし)、咸 (かん)を法治 (ほうち)し
徐福 (じょふく)、島を登攀 (とうはん)す
政 (せい)、未 (いま)だ批評を許さず
儒家 (じゅか)、穴 (あな)の苦艱 (くかん)
始皇は始皇帝のこと。
蜂準は蜂のように高く鋭い鼻筋。
長目は細い切れ長の目。
冕旒は冕旒冠というスダレの付いた皇帝の冠。
星辰は星、星座。
閑は、閑散としている。
李斯は始皇帝の右腕となった宰相の名前。いわゆる法家で、過酷な法によって統治した。咸は咸陽のことで、秦の都。
徐福は伝説寄りになるけど、始皇帝が不老不死の薬を探すために東の海に送り出した道士。蓬莱の島である日本に辿り着いたとも言われている。
登攀はよじのぼる。
政は始皇帝の名前
苦艱は苦しみ、困難のこと。
・全体の意味。
秦の始皇帝は蜂のように高く鋭い鼻。
切れ長の目が冠のスダレの間から覗く。
急に雨が降っても、雨宿りした松の木の下では静か。
天の星座は地上に降りてしまったため、天の星が無くなって閑散としている。
李斯は咸陽の地を法で治める。
徐福は不老不死の薬を探して蓬莱の島へ至りよじ登る。
始皇帝は過酷な性格で自分を批判することを許さず、
儒家は穴に埋められて苦しんだ。
・その他。
律詩では基本的に対句が難しいです。
この詩では三句目と四句目の対句がビミョーな出来。
ですが、この詩の場合、対句以上に韻で苦労してしまった。
二句目の時点で「間」を韻字に使用したため、上平声十五刪の韻で通すことになったのだけど、この韻は使用できる字が少ない。少ないだけでなく、使いやすい字が無い。
だから最初の間はいいとして、その後の閑、攀、艱と、かなり苦し紛れの選出となりました。
で、これで反省して、この後は使える字の多い、また使いやすい字の多い韻を使うように注意するようになりました。
全体の詩としての出来は、そんなに良くはないと思います。基本的に五言詩はセンスある人が作らない限り、一句あたりの字数制限がきつくてどうしても表現がぎこちなくなってしまう。
でもいいんです。この詩で書きたかったのって、最後のオチの「気に入らねぇヤツは埋めたるわ!」という部分なので、ここさえ書けていればいい。
平仄は以下の通り。上平声十五刪で、韻字は、間、閑、攀、艱。
●○○●●
○●●○◎
●●○○●
○○●●◎
●○○●●
○●●○◎
●●○○●
○○●●◎
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