何者
それにしてもこの声の主は一体誰であろうか。
状況を整理すると、今日は入学式当日。声の主は私と同じ制服を身に纏った女子。見覚えはない。
つまり初対面ということで間違いはないと思う。
世間一般の人間たちは全く初対面の人間に通りすがりに挨拶をするものなのだろうか。
もしや入学式の数週間後にタイムスリップしてしまったのか、理解し難い不自然さと不安を抱えつつ他の新入生の流れに沿って門をくぐる。
あぁ、これから鬱陶しい生活が始まるのだな。
門を抜けると広い中庭のような場所に出る。
この学校には入試の日に初めて訪れただけなので新鮮な光景である。
まぁ如何せん興味すら湧かないところではある。
周りを見渡すと奥の方でなにやら人だかりが出来ている。
どうやら掲示板にクラス分けの表が貼り出されているようだ。
同じ学校からの進学だったのだろうか、仲良くはしゃいでるグループがいくつも見受けられる。
友達などいない私は独り身で騒ぎ立てる他の新入生達を押しのけて掲示板の前に立つ。
「1年5組、か」
『自分のクラスを確認した新入生は速やかに指定の教室に向かって待機していること』
だそうだ。
どうやら1年生の教室群は4階にあるとのこと。
毎日貧血の私に毎朝4階まで階段でというのも酷な話だとは思わないか。
第一志望の学校にはエスカレーターがあったもんだ。
ただでさえ暗い気持ちを月明かりさえも遮ったように暗くして階段を登る。
軽く息切れをしながら周りを見渡す。
うむ。女子しかいない。
女子校なのだから当然なのだかどこか落ち着かない不自然さを感じるものだ。
階段を登りきると右手に「1-5」と書かれたプレートが垂れ下がっているのが見える。
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