第25話 牧場完成を目前に
「闇の牧場に行こう」
朝御飯を終えて膝上のクロを撫でていた僕に、メネがそう言った。
「そろそろできる頃だと思う。今の状態じゃ何かと落ち着かないでしょ?」
「……う、うん」
確かにメネの言う通り、クロはちょっと目を離すとすぐに悪戯するので気が抜けない。
生き物の世話をしていればそういうことは当たり前なのかもしれないが、僕としては落ち着いた状態でエルたちと接したいと思っている。
ペットには飼い主の感情が伝わるって誰かが言っていたような気がするしね。
「牧場ができたらエルを放して、休息地の確認に行こう。休息地ももう完成してるはずだから」
そういえば、休息地作りをしてから三日が経つんだ。順調に進んでいれば、もう完成してる頃か。
牧場にいるレッドたちにも御飯をあげないといけないし、畑の世話もしないとならないし……
今日は忙しくなりそうだ。
闇の牧場は、完成間近というところまできていた。
メネが言うには、後五分もすれば完成するとのことらしい。
それならこのまま完成まで待っていよう。
そう決めて、牧場を見つめていると。
ばちっという火花が散ったような音を立てて、牧場が光り輝いた。
何事かと目を丸くする僕と、表情を険しくするメネ。
メネが空を見上げると──
「これ以上牧場を広げさせるわけにはいかないわ」
カエラが、掌を突き出した格好でこちらを見下ろしていた。
今光ったのは、カエラが魔法で牧場の完成を妨害しようとしたからか。
メネはカエラの前まで飛んでいった。
「邪魔しないで!」
「泣き虫メネちゃんは、いつからそんな聞き分けのない子になったのかしら? 我儘な子にはおしおきよ」
カエラはメネを一瞥すると、手中に鎌を召喚した。
メネもそれに対抗するように、魔力で棒を作り出した。
またか!
僕はクロを抱き抱えたまま、二人の間に割って入った。
「二人ともやめるんだ! 戦うなんて馬鹿げてるよ!」
「吠えるしか芸のない人間は引っ込んでなさい。貴方もどうせ、世界の再生が何を意味するのか分からずに世界を再生しようとしているだけの存在でしょう」
カエラは冷たい目で僕を見た。
「愚か。実に愚かだわ。貴方もラファニエルも」
「キラとラファニエルを悪く言うなんて許さないんだから!」
僕の前に出たメネは、棒の先端をカエラに突きつけて大声を出した。
「メネは、絶対にこの世界を元の姿に戻すって決めたの! それを邪魔する人がいるなら、それが何であろうと戦うよ!」
「…………」
カエラは溜め息をついた。
鎌を持ち上げて構えて、メネに狙いを定める。
「これ以上は話しても無駄ね。望み通り、おしおきして悟らせてあげるわ」
「やめろ!」
僕の叫びも空しく、二人は各々の得物を手に相手へとぶつかっていった。
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