第7話 皆で朝ごはん

 ふわふわな布団の感触が気持ちいい。

 暖かい空気に包まれた身体は、もっと寝ていたいという欲求を素直に僕に訴えてくる。

 僕はうっすらと目を開きながら、ころりと寝返りを打った。

 真っ赤な鱗に覆われた小さな塊が目に入った。

 全身を丸めた格好のまま顔をこちらに向けてくるそれは、僕と目が合うと小さな声で鳴いた。

「……おはよう、レッド」

 手を差し伸べると、レッドは頭を掌に擦り付けてきた。

 可愛いな、レッドは。これが神様だなんてにわかには信じられないな。

 まあ、何でも最初は可愛いものだ。レッドもそのうち大きくなって、僕の大きさを遥かに超える立派な竜になるのだろう。

 そうなるように世話をしてあげるのが僕の役目だ。

 よし、今日も一日頑張ろう。

 僕は欠伸をして、身体をゆっくり伸ばし、上体を起こした。

「おはようマスター、もう朝だよー」

 ベッドから降りると同時に、部屋の外からメネが飛んできた。

「おはよう、メネ」

「朝御飯はもうできてるよ。早く来てね」

 それだけ言い残して、メネは部屋の外に行ってしまった。

 僕はレッドを抱き上げて、言った。

「だって。行こうか、レッド」


 テーブルには、メネが作った料理が並べられていた。

 今日の朝御飯はパンに、スクランブルエッグに、焼いたソーセージ、そして野菜スープか。

 人間用の設備(キッチン)でこれだけの料理を作るメネの腕前は凄いな。素直に感心するよ。

 メネは昨日と同じ、花の蜜を煮詰めた特製ドリンクを。

 レッドは普通の食事は食べないので、水だけだ。

「食事が終わったら、畑に行こうね」

 花の蜜を飲みながら、メネが僕に言った。

「神果、もう収穫できると思うから」

「もう? 昨日植えたばかりなのに?」

 ソーセージを齧りながら、僕は窓の外を見た。

 相変わらず真っ赤な空の下、荒廃した大地が広がっている。

 畑が作れるくらいだから、家の周囲くらいは木とか植えて景色を良くしたいなって思うのは僕だけだろうか。

「神果は成長が早いの。一日もあれば収穫できちゃうんだよ」

「そうなんだ」

 神果を収穫したら、レッドにちゃんとした食事があげられる。

 どれくらい採れるかな。畑を見るのが楽しみだ。

「美味しい御飯を採るから待っててね」

 器の水を飲んでいるレッドの背中を撫でると、レッドは顔を上げて鳴いた。

「そうだ、メネ。庭を造りたいんだけど、木とか植えられないかな?」

「木を植えたいの?」

 蜜をこくんと飲んで、メネは僕を見た。

「メネの魔法を使えば簡単にできるよ。此処に植えたい、って教えてくれれば、メネが魔法で木を育ててあげるよ」

 何と、魔法は植物を育てることもできるらしい。

 万能すぎでしょ、魔法。

 とにかくできるっていうなら、利用させてもらわない手はない。

「それじゃ、神果を収穫する時についでにお願いしようかな」

「うん、分かったー」

 メネの返事を聞きながら、僕は残っていたパンを口の中に放り込んだ。

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