日々折々

紡希

風に乗って

 突き抜けて青い空が私を包んでいた。

見渡す限り何もない青々とした柔らかい芝生の上を、温かい風が優しく撫でる。白い雲が風に乗って青の中を泳ぎ、煌々と太陽の光がすべてを包んでいる。


  ここがどこか、もう忘れてしまった。昨日のことも、一昨日のことも忘れてしまった。


 本当は覚えている。

社会人になって1年目なのにこれでもかと詰め込まれた仕事。嫌味な上司。頭の悪い同期。それらすべてが嫌になって溜まっていた有給を全部使った。荷物をまとめ飛行機に飛び乗ってここへきた。すべて忘れたふりをして、すべて忘れてここへきた。


この青い空が、また私を呼んでいる気がしたから。


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