第70話ジーヴル王家

屋敷に戻った俺はリズ達に城での謁見は特に問題の無かった事を伝え部屋に戻り直ぐに着替える、高級な衣装なんだろうが俺には窮屈で仕方ないのだ。


いつもの服に着替えが終わると庭に出る、そして俺が城に行っている間も自主的に修行をしていたリック達と合流する。


リック達は俺を見て修行の手を止め集まってくる、城で貴族に囲まれた時よりはマシだがここでも質問攻めだ。


一通り質問に答えるとリックが真面目な顔をする。


「エスターヴ家の方はどうだった?」


その質問が出た途端に他のメンバーの顔も引き締まる、テオもキリッとした顔をしてすっかり獅子の鬣のメンバーだな。


「当主と少し話をしましたが堂々としてましたよ、ただ目は笑っていませんでしたけどね」


俺の言葉を聞くとメンバーからふざけやがって等と怒りの声が上がる。


「それと当主の側にいた執事風の人がかなり強そうな魔力を帯びていました、誰か知ってる人はいますか?」


獅子の鬣のメンバーはそれを聞いて顔を見合わせる、執事が?という雰囲気の中で一人の女性冒険者が声を上げた。


「アタイ酒場で聞いた事があるよ、エスターヴ家には昔から専属の暗殺組織がついているらしいんだけどさ、その中から今の当主がスカウトした執事がいるんだって話だよ、かなり冷酷で凄腕らしいよ」


暗殺組織か、隠密のスキルを持っていたし確かにあり得るな、あの執事の魔力の流れを見ると数字以上の強さがあった、俺達は呪文や真眼による効率的な修行で魔力強度以上の強さを出せると思うが向こうも経験から数字以上の強さがあると思えたのだ、テオやセオは勿論エーヴェンでも隠密からの奇襲をされたらあの執事には敵わないだろう、レイナも町中だと魔法が思い切り使えないし相手を出来そうなのは俺とリズだけだ。


そういえば最近獅子の鬣のメンバーと修行をしていて気付いたんだけど、魔力強度以上の強さというか魔力強度通りの強さといった方が正しい気がしてきたな。


この世界の人の大半は自分の魔力を十全には使えて無いんだよな、経験が豊富な人は自分の魔力を上手く使えているから強いと最近思えるようになってきた、獅子の鬣のメンバーも修行の成果かバラツキのあった強さも魔力強度が近いメンバーは質は違えど総合的な強さは変わらなくなっている。


おっと思考が逸れたな、再びエスターヴ家の執事の事を考える、こちらに感知スキルが居るって事は向こうも気付いているだろうがあの執事は油断が出来ないな、リズにも注意をしておこう。


俺達が城の事やエスターヴ家の話をしている間に庭で昼飯の準備をしていた使用人達の方も準備が出来たようなのでそのまま昼飯を食べ、その後合流したエーヴェンと共に日が暮れるまで修行をした。


そして部屋に戻り体を洗って服を着た所でロルドの反応が近付いてきた、ロルドはいつもタイミングがいいんだけどどっかから覗いてないだろうか…。


ロルドが部屋のドアをノックしたのでどうぞと声をかける、部屋に入り、相変わらず真っ直ぐな姿勢で優雅にお辞儀をするロルド。


「トーマ様、今日の夕食は旦那様とお願い致します」


やっぱり城に行った日だしそうなるか、初日以降はずっと部屋で食べさせてもらっていたが今日は仕方ないなとロルドについていく。




「トーマ様をお連れしました」


ロルドが既に揃っていたハンプニー家の男性陣にお辞儀をしてテーブルの側まで行くと椅子を引いてくれる。


促されるままに座ると早速当主が声をかけてきた。


「トーマ君、今日はお疲れ様。城はどうだったかね?」


そう聞かれて初めての城や王様の雰囲気に圧倒されたと俺は正直に話す。


「初めて間近で見た城は大きくて凄い手間がかけられているなと圧倒されました、それと王様の存在感は流石と思わされましたね」


すると当主が笑いだした。


「そうか、作るのに凄い手間か、君は面白い物の見方をするな」


面白い見方だと笑われてしまった、当主は一頻り笑った後で話を続ける。


「君は王の存在感が凄いと言うが堂々と受け答えをしていたではないか、私達と初めて食事をした時も堂々としていたがまさか王の前でもあまり変わらないとはな、どうやらこの屋敷や城など建築物には圧倒されるが人に対しては気負う所は無いようだ。君は面白いな、私にもう一人娘がいたら君と結婚させても良かったな」


いやいや、貴族になるなんて勘弁してほしい、今日まで過ごしてわかったが俺には貴族は窮屈過ぎる。


「それは嬉しいお言葉ですが俺は冒険者の方が性に合ってるようです」


俺の言葉に当主はそうだろうなと答え、そして表情を引き締めると和やかな雰囲気を一変させる。


「それでだ、今日城でエスターヴ家の当主を見てどう思った?」


これが本題か、俺は夫人が報告をしている時からのエスターヴ家当主の反応を話す。


「アンネ夫人が王様に報告をしている時からずっと俺達を睨んでいましたね、それと帰り際にエスターヴ家の当主と少し話をしたんですが、その時に連れていた執事の人、あの人はかなり腕が立ちそうでした」


当主はそうだなと頷く。


「向こうの執事、アルヴァというんだが彼は前の王から今の王に変わり、考えの違いから遠ざけられる様になったエスターヴ家をずっと一人で支えてきた者だ。私の掴んだ情報では元は暗殺組織にいたらしい、実力も相当な物だと聞いている、そんな彼に君なら勝てるか?」


アルヴァは獅子の鬣のメンバーが言っていた様に暗殺組織からエスターヴ家に仕えたようだ、俺は昼間考えていた事を当主に話す。


「俺の見た所、エーヴェンさんでも彼には勝てないと思います。不遜な言い方ですがこの屋敷の中でも彼の相手が出来るのは俺かリズしかいないと感じました」


その言葉にライズが声を上げる。


「おいおい、それは本当か?エーヴェンは兄弟の中でも一番才能があるし今や金下級だぞ、俺もジルに家を任せて冒険者になりたかったがエーヴェンを側で見て冒険者になる事を諦めたんだ」


長男が横から驚きの声を上げる、初めて長男が話したが喋り方は貴族より冒険者ぽいな、ハンプニー家はやはり俺が思う貴族より自由だな。


「兄さん、その喋り方は直せって何度も言っているでしょう。それと家を継ぐのは長男なのが当たり前です、私は兄さんのスペア、兄さんがいる限り当主になる気はありませんよ」


次男も初めて俺の前で声を出す、どうやら次男の方が貴族らしい喋り方だな、それとよく物語とかで見る兄弟間の確執も無さそうだ。


「俺はお前が継ぐのがハンプニー家の為だと思うんだけどな、それよりもエスターヴ家の執事がエーヴェンよりも強いって本当か?」


ライズが兄弟間のやり取りを強制的に終えて俺に話しかける。


「はい、相手の魔力を見ただけですが、俺は魔力の細かい流れまで感じる事が出来ます、それで相手の強さがある程度わかるのですが向こうはかなりの経験がある様に見えました」


「本当か?お前はまるで鑑定持ちの様だな」


俺の言葉に驚きと共に核心をつくライズ、鑑定と聞いてダスティンやジルの目が鋭くなる、そこにエーヴェンがフォローを入れる。


「トーマ君は森人から魔力感知についても色々と教えてもらったみたいだからね、トレントも直ぐに見付ける程の感知能力、それと俺達の魔力の流れを見て、本人でもわからない魔力の流れが悪い所を指摘してくれるんだ、鑑定を持っていても出来ない事だよ。兄さんも修行に参加しないかい?確実に強くなれるよ」


鑑定じゃなくて真眼だからな、エーヴェンの言葉にライズは納得し、ダスティンとジルも表情を戻す。


「なるほど、そう言えば森人の弟子だったな。修行の方は辞めとくわ、流石にこの歳から冒険者も無いだろう」


エーヴェンに向かってひらひらと手を振るライズ、そしてダスティンが俺に依頼の話をする。


「トーマ君、君への護衛依頼は期限無しだと聞いている。その依頼なんだがエーヴェンからの依頼ではなくハンプニー家として私から君に正式に依頼をしよう、期限はエスターヴ家の失態、あるいはアルヴァを仕留めるまで、報酬はエーヴェンの提示した倍を出す、それと依頼を達成すれば私に出来る事はなんでも協力しよう。向こうは森人の里に行くのを邪魔する程に焦っている、必ず近いうちに仕掛けてくるはずだ」


金下級冒険者からの依頼が公爵家からの依頼になってしまった、でもやる事は変わらないしレイナとセオも公女と仲良くなってるから受けてもいいか、報酬も倍になるし公爵に貸しも出来るしな、リズも満足するだろう。


俺はダスティンに頷く。


「わかりました、兎の前足として正式にハンプニー家からの依頼をお受けします」


ダスティンはよろしく頼むと頭を下げる、そして丁度料理が運ばれて来たので五人で戴く事にする、前よりは食事の味がわかるな、うん、美味しい。


食事も終えた後は俺の話、特にスゥニィの事を聞かれたので話せる範囲で話す、森人の祖、それとキスした事や結婚の約束は勿論内緒だ、っていうか結婚の約束をしてるんだよな、それって婚約者って事じゃないか?十四歳で婚約者がいるのか、実際は十七歳…、いや、もう十四歳で通そう、十四歳のくせに婚約者がいて可愛い姉妹にも好意を持たれているなんて一年前の俺には考えられないな。


「君は私の話を聞いているのかね?」


え?あ、またやってしまった、呆れ顔のダスティンに、俺は自分の世界に入っていた事に気づく。


「父さん、トーマ君は時々こういう事があるんだ、こうやって自分の世界に入る程の集中力というか、想像する力が彼の魔法の元になってるんだよ」


マジかよ、確かに大物ですねとライズとジルから言葉が出るが当主は微妙な顔だ。


「トーマ君、話を戻すが明日また私と一緒に城に行って欲しいんだ、王からトーマ君と直接話をしたいと言われてね、勿論行ってくれるよね?」


笑顔だが目は笑っていないというエスターヴ家の当主と同じ顔をするダスティン、貴族は笑いたくない時も笑わないといけないから大変だな。


王様の頼みなんて断れるはずもないしダスティンに対して失礼もしてしまったのでわかりましたと返事をしてこの場はお開きになった。





そして翌朝、俺は再び城の前に立っていた、今回はリズ達も一緒だ、テオ以外のメンバーとハンプニー家からはダスティンとエーヴェン、それに公女だ。


今日はゆっくりでいいとの事なのでリズ達と一緒に城を見てはしゃぐ、あまり感情を出さないセオも城の大きさに驚いていた。


まだまだ城を見ていたいがダスティンがそろそろ行こうかと、微笑ましいものを見るような顔で言ってきたので城に入りダスティンを先頭に城の中を歩く。


すれ違う人達、甲冑を着た兵士から高級そうな服を着た人まで様々だが皆ダスティンに頭を下げる。


俺達もすれ違う人達にお辞儀をしながら進む、昨日とは違う道を歩き、二人の兵士が守るドアに辿り着く、兵士は聞いていますと言ってドアを開けてくれる、中に入ると四人の人物が座ってお茶を楽しんでいた、一人は昨日謁見したばかりの王、そして王と同じ年齢程の、赤い髪に優しそうな笑みを浮かべた女性、王をそのまま若くしたような男性、そしてピンク色の髪に元気そうな、少しリズに似た若い女性だ。




アメリシア:ジーヴル:40


人間:ジーヴル王妃


魔力強度:12


スキル:[気品]



フレッド:ジーヴル:19


人間:ジーヴル王太子


魔力強度:26


スキル:[剣術] [身体強化] [気品]



カレッタ :ジーヴル:16


人間:ジーヴル王女


魔力強度:11


スキル: [気品]



「おぉ、ダスティンよく来てくれた。ここでは少し狭いので奥に移ろうか」


王は俺達を見て笑顔で言うと立ち上がって奥に歩いていく。


他の三人も一緒に歩いていくのでその後ろをダスティンを先頭についていく、他の三人はどうやら王の家族らしいな、ダスティンから王に会うと聞いていたが家族までいるとは思わなかった、そして俺達は開けた場所に出た、もう季節は冬だと言うのにそこは暖かく、また周りには綺麗な花が咲くちょっとした庭園のような場所だった。


庭に用意されていた大きなテーブルと椅子、王に促されるままに俺達は椅子に座る。


「わざわざすまないね、よく来てくれた。隣にいるのが私の妻、そしてこの二人は私達の子供だ、どうか仲良くしてくれ」


王に紹介されて三人が挨拶をする。


「銀下級冒険者のトーマです、そして私の仲間でパーティーメンバーのリズ、レイナ、セオです」


王が三人を紹介してきたので俺も王にリズ達を紹介する。


「うむ、話には聞いていたが本当に皆若いな。それとトーマ君だったかな、そのような堅苦しい喋り方ではなく普段通りにしてほしい、昨日のような公務では仕方ないがね、今はプライベートの時間だ」


確かに王は昨日のような堂々とした態度ではなく気楽な感じだ、エーヴェンからジーヴルの王は気さくな人柄だと聞いていたがその通りらしいな。


「わかりました、ではこの場ではそうさせてもらいます」


敬語ではあるが堅い口調ではなく普段通りの口調に直す、すると王やその家族、公爵や公女が笑い出す。


ん?俺が戸惑っているとリズが手を繋いできた。


『普通は気楽に話せって言われても王様に向かって気楽に話せるはずないでしょ、直ぐにわかったと言えるのはトーマだけだよ』


『でも王様の頼みだよ?そうしてほしいって言うんだからそうしたほうがいいんじゃないの?』


俺の返事に呆れ顔のリズ、俺は王の言う通りにしただけなのに、解せぬ。


「どうですか王よ、これが森人の弟子のトーマです、面白いでしょう?」


「あぁ、確かに面白い。森人の弟子と言うのも頷けるな」


俺を置いて楽しそうに話す王と公爵、なんだこれ?


「トーマ君すまないね、ダスティンがトーマ君は面白い、是非とも知己を得るべきだと言うので今日は君を呼んだんだ、それと森人から貰ったという装具も見せて欲しくてね、その身に付けているのがそうなのかな?」


昨日ダスティンに冒険者としての格好で頼むと言われていたので今日は全員装備を身に付けている、俺は王に頷き説明する。


「俺が貰ったのはこの籠手と具足、リズは刀の鞘と弓、レイナが杖でセオも籠手と具足ですね」


そういってそれぞれスゥニィから貰った物を見せる、俺のは籠手に太陽、具足には大きな木を中心とした模様が彫られている、レイナの杖には渦巻く風と激しい雷、セオの籠手には月に向かって吼える二匹の狼、具足は風を切って走る二匹の狼だ、そしてリズの鞘には豹の様な大型の動物、弓には俺がロビン・フッドと混同して話してしまったウィリアムテルの逸話から矢が刺さった林檎が彫られている。


「おぉ、素晴らしいな。私達も森人との交流で装飾品などを交換したりするのだがそのどれよりも素晴らしいではないか。どうだ?私の息子が今度婚約するんだが何か一つ譲ってくれないか?勿論ただとは言わない、言い値を出そう」


立ち上がって俺達の所まで来ると間近で装備を見ながら王が興奮気味に話す、だがこの装備は誰に何を言われようとも譲るつもりなど無い。


「すいませんがこれは俺達がスゥニィから貰った物なのでお断りします、それにこの装備は俺達専用の物なので他の人には上手く扱えないと思います」


どうしてもか、そう聞いてくる王に頷く。


「そうか、残念ではあるが君は呼び捨てにするぐらいその森人との結び付きが強いのだな」


残念そうな顔で王が元の位置に戻る、そしてもう一度笑顔を見せる。


「無理を言ってすまなかった、それで先程その装具は君達にしか上手く扱えないと言っていたね?その話と良かったら森人との事も詳しく聞かせて欲しい」


それから俺達はスゥニィとの出会いから別れまでを話す。


「タイドゥトレントとはまさか森人の里近くにいるという巨大なトレントか?百年程前に発見された当初は騎士から名のある冒険者まで様々な者が挑んで返り討ちにあい、手を出さなければ無害だからと今まで放置されていたはずだ、それを倒してその素材から作られたのか」


タイドゥトレントの話にその場の皆が驚きのあまり声を失っている、いつの間にか隣同士で楽しそうに話をしていた王子と公女も俺達を見ていた。


王はもう一度俺達の側まできて装備を間近で見る、ふむ、ほう、凄いな、等と呟きながらじっくり見た後で深く息を吐く。


「本当に君らは規格外だな、ダスティンから聞いていたがこれ程驚かされるとは思わなかったぞ、どうだ?この城で仕えてみないか?」


真剣な表情で王が俺の両肩を掴む、威風のスキルも発動しているのだろう、王の存在感が増しているが俺は王に頭を下げる。


「すいません、光栄なお言葉ですが俺には冒険者が合っています」


「そうか、残念だが君らの様な人間は城に仕えて窮屈に暮らすより冒険者として自由に生きた方がいいのかもな。そうだ君らは確か二人の獣人奴隷を連れていると聞いた、今日は一人しか来ていないみたいだが譲ってくれないか?」


普段通りの口調で王がテオとセオの事を奴隷と言う、この国では獣人は奴隷、それはわかるし王の口調から悪気が無いのは伝わる、だがやはり良い気はしない。


「すいませんがその二人は俺の弟と妹です、奴隷では無いので譲る事は出来ません」


悪気が無いのは理解できるがつい語気を強めてしまった、王はそれに気付いて素直に謝る。


「そうか、君らはステルビアの出だったな。そうだな、言葉を間違えた、すまなかった」


直ぐに謝罪した王に今度は俺達が驚かされる。


「セオ君だったな。嫌な気持ちになったのならすまなかった、この国では獣人は奴隷というのが常識なのだ」


セオにも謝る王に、慌てて頭を下げ、何故かセオもこちらこそすいませんでしたと謝る、王子や王女も笑顔でそれを見ていた。


ジーヴルの王家は常識は違えど俺達の様な冒険者でも付き合いやすそうな人達だ、ジーヴルの常識には嫌な思いもしたが俺は王と話をして何となくこの国が好きになった。


その後は皆でお茶を飲みながら会話を楽しむ、そこで王子と公女の婚約の話が出た。


「ダスティンよ、近日中にエレミーを正式にフレッドの婚約者として発表したいのだが良いであろうか?」


「それはこちらこそお願いしたいですな、ですが発表は少し先にし、その前に正式に婚約するという事を他の者達に知らせてほしいのです」


王が仲良くお茶を楽しむ王子と公女を見ながらダスティンと話す、ちなみに王妃と王女はリズ達と旅の話をしているようだ、特に王女とリズは意気投合したのか随分と仲が良さそうに話している。



「エスターヴ家はやはり邪魔をしてくるか?」


「婚約の事を知れば確実に、王よ、貴方も知っているように向こうはどんな強引な手だろうと構わず使ってくるでしょうな」


ダスティンの言葉に少し疲れを滲ませた顔で王が溜め息を吐く。


「そうか、あの強引な性格は何度も諫めたのだがな。ダスティン、任せても良いか?」


どうやら王はエスターヴ家のやり方と合わなかったと言っていたが本当のようだな、悲しそうな顔をする王にダスティンは頷き、そして俺を見る。


「聞いていた通りだトーマ君、婚約の事を伝えればエスターヴ家は形振り構わず仕掛けて来るだろう、その時は頼むぞ」


王と公爵にわかりましたと返事をし、その後は俺の冒険者としての話をお茶請けにゆっくりと流れる時間を楽しんだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る