お酒とチョコレート

中村百合

たまねぎ

たまねぎをくし切りにしていました。

じゃがいもとたまねぎのお味噌汁を作るのです。

たまねぎを切りながら、涙をながしました。

それは、たまねぎのなんとかという成分が目の粘膜を刺激するとかではなくて、たまねぎスープを作ったことを思い出したからです。


わたしは、ある8月の夜、大好きな彼のためにたまねぎスープを作りました。

独り暮らしで不規則なわたしの大好きな人が夏風邪にならないようにじっくりじっくり煮込んだたまねぎスープ。


たくさんたくさん食べてもらいたくて、大きいたまねぎを5つ使ったために、たまねぎはなかなか飴色になりませんでした。


焦げてはいけないから、わたしはお鍋をかき混ぜながら3時間はたまねぎを炒めていました。


夜とはいえ、季節は夏でお鍋の熱と夏の温度でわたしは汗だくになりました。それでも焦げないように、かき混ぜました。


そんなたまねぎスープ。


涙をながしたのは、そんな大好きな人と今ははなればなれになってしまったからです。もし、今一緒にいたとしたら、たまねぎスープで涙をながさないからです。



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