第34話 イベントを楽しむ①パワーチェック
「さぁ、着替えようか。」
受付を終えると葛城さんは理恵を連れてどこかに行ってしまった。
暫くすると2人は戻って来た。
葛城さんは白のレーシングスーツを着ている。
理恵は制服姿にショートパンツでハニワスタイル。
いつもの通学の時と同じ制服姿だ。
「さらにこれを被る。」
と白いヘルメットを2個取り出す。
フルフェイスでスモークのシールドだ。
片方は大きなリボンが付いている。
ヘルメットを被った葛城さんが腕組みをする。
性別不詳・年齢不詳・全くしゃべらない。
そんなキャラらしい。
同じく理恵もヘルメットを被って腕組みをする。
葛城さんの妹分みたいだ。
筆談するキャラクターだそうな。
2人は無言でパワーチェックの会場へ行った。
「何のキャラ?何のコスプレ?」
一緒に行った速人が尋ねるが無言だ。
パワーチェックは排気量によってクラス分けされている。
一番良い数値を出せば優勝。3位までが入賞。
理恵と速人は50~88㏄クラスに出る。
葛城さんは89~120㏄クラスへと別れた。
ボアアップのみと腰下まで手を入れたエンジンでのクラス分けだろう。
葛城さんのカブはクランクはノーマルだけどシリンダーボーリング
してオーバーサイズピストンを入れたからクラスが上がってしまった。
上位に入れば賞がもらえるが、
ウチのバイクとは無縁だろう。
基本的にノーマルのカブエンジンだもの。
カリカリの88㏄勢が10PSをひねり出す中、理恵の出番が来た。
出番と言っても本人は横に居るだけで係員が測定するんだけどね。
紹介された途端、場内が沸いた。
何かの漫画のコスプレらしい。
「大島サイクル・白藤さんの記録は・・・6.2PS!」
結果は6.2PS。カタログ値より少し上かな?悪くない。
ちなみにカブ70のカタログ値は6.0PS
速人のモンキーは6.18psだった。もう少し馴染めば
パワーは上がるかもしれない。上出来だ。
続いて89~120㏄クラス
上位は12~13PSといったところ。1位・2位が15PSオーバー。
元々が3.1PSそこそこのモンキー・ゴリラを
良くここまで仕上げたと感心する。
レーシングスーツ姿の葛城さんが現れた。
場内が沸く。有名なキャラクターの様だ。
「ただ今の大島サイクル・葛城さんの記録は7.48PS~。」
標準が7.0PSだから大当たりのエンジンだ。
でも残念ながら今の段階で最下位。
クラス最少排気量の割に健闘と言ったところだ。
3人が戻って来た。雑誌?ブロガー?
数人が理恵と葛城さん、そしてカブとゴリラを撮影していた。
理恵はリクエストに応じて可愛いポーズをしているが
葛城さんは腕を組んだままで立っている。
そういうキャラクターらしい。
「有名なキャラクターらしいですよ。」
「世の中わからんものだね。」
残された二人が話していると爆音が響いた
パワーチェックの会場の周りでええ歳の大人・・・老人?
がクネクネとタコ踊りを踊っている。
「ただ今のセレブリティ―バイカーズTataniの記録は
7.0PS、7.0PSです。」アナウンスが流れた。
「カブよりパワー無いの?」
「見かけ倒しかよ。」
会場内がざわつく。
「あ、Tataniの人ですよ。」
速人が指差した先には係員に喰ってかかる男の姿があった。
Tataniのバイクは合計4台測定された。
そのうち2台は測定中にエンジンブロー。
1台は測定開始直後に異音が出始めて測定中止になった。
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