第二十三話 ブタっぽい俺の蝙蝠ステージ① 蝙蝠狩り
俺が鉈をチョイスしたのには理由がある。
それは森の中で少し開けた獣道を通ろうが、道なき道を通ろうが、どちらを通るにしても、俺の横幅がありすぎるために、俺の腹が回りの草花に当たってしまうためだ。
まあさすがに腹が草花にあたったくらいでは、皮膚はきれたりしないんだが、草が体に当たってかゆいのだ。
そのため俺は手に持つ武器として、ハルバードではなく。今回は草花を刈るのに適している鉈をチョイスした。
ちなみに俺がオークから手にいれた武器たちは、いくら自動修復機能がついているといっても、剥き出しの刃物のままリュックの中に放り込むわけにも行かなかったので、ハルバードのような長物はビニール袋を引き伸ばして作った紐で、リュックに結んで背中に吊るしている。
もちろんいざという時簡単に取り出せるように、固定はしていない。
剣はビニール紐を使って、軽くリュックの脇に括り付けていて、今は草花を刈るために手にしているが、基本鉈のように比較的短い刃物は、使わないときはベルト越しに腰に差している。
残った斧は、どでかズボンのベルトに差し込んで、丁度尻に敷く感じにお尻の部分にぶら下げている。
ちなみにオーク戦で折れた槍は、手に持つとってと、穂先の部分だけを包丁代わりに残して、葉っぱのお皿を加工した(長三角に折りたたんだ)草の鞘で包み込んで、包丁が抜け出ないように、取っ手の部分と鞘の部分をビニール紐で縛り上げてからいつでも調理で使えるようにポケットにしまっている。
もちろん槍の残りの木でできた柄などは、オークや蝙蝠を焼くときの薪にした。
そうしてオークたちから手に入れた武器を手にして、俺は森に分け入って行った。
で、俺はおやつエサを見つけるために森に入ったのだが、まずはおやつエサを食べている蝙蝠を先に探そうと思う。
理由は簡単だ。
蝙蝠さえ見つけてあとを追跡していれば、蝙蝠の主食と思われるおやつエサはすぐに見つかるはずだからだ。
ただ問題なのは、森に入って鉈で草を刈りながら、蝙蝠を探し始めてすでに体感時間で三時間は経過しているというのに、なぜか森の中で俺が肝心の蝙蝠を一匹も見つけることができなかったことだ。
「がああーーっ蝙蝠カンバーック!!」
蝙蝠の見つからないあまりのイライラぶりに俺はつい、イライラを声に乗せて叫んでしまっていた。
「う~ん。蝙蝠いないなぁ。おやつエサ食べたいなぁ。はぁ……」
ちなみに蝙蝠を探し始めて三時間も経過しているので、俺のマジックリュックには灰色狼が、二十匹ほど詰め込まれていた。
理由は簡単だ。
蝙蝠を探す道中、腹を空かせて無防備に俺を狙って来た灰色狼たちの群れを、俺が鉈をぶん回し、時にリュックの背中に吊るしていたハルバードを振り回して、仕留めたからだ。
それから、簡単にだが血抜きをしてみた。
これも理由は簡単だ。
リュックの中が血だらけになっても困るし、何より、血抜きや内臓などの下処理をしておくとあとで食べるときにおいしくなると何かの本かテレビで見た記憶をよみがえらせていたからだ。
「ん、とりあえず。まぁ筋肉は確保したんだけど……肝心のおやつエサの手がかりになる蝙蝠がいねぇ」
俺はリュックの入り口から中を覗き込んで20頭ほど突っ込んでいる血抜きした灰色狼を見て、ため息をついていた。
「蝙蝠……おやつエサ……いったい奴らは昼間どこにいるんだろうか?」
俺はさんさんと降り注ぐ太陽の光を遮る森の木々たちを見上げながら、悟りを開いた賢人のように呟いていた。
「ん? 待てよ。昼間? そういえば昔テレビで見たことがある。蝙蝠は夜行性で、昼間は洞窟や真っ暗な物陰に隠れて暮らしていて、夜にならないと姿を見せないとか言ってなかったか?」
俺は今更ながらに思い出した知識に、半ばボーぜんとしながら声を荒らげる。
「ああ俺のバカッ昼間に蝙蝠見つかるわけないじゃねぇかよ! ああくそっ俺の苦労は無駄骨か!」
俺は怒りに任せて、手近にあった木をドゴーンと張り手で叩きつけた。
ドサリッ
「ギィギィ」
「ん? この声は!?」
俺が声のした方を振り返ると、そこには、木の上で昼寝でもしていたのか、木から落ちて無様に仰向けになって地面に大の字で横たわる蝙蝠の姿があった。
「おおっ蝙蝠が空から降って来たーーーーっ!! 行くぜーー! 百八十キローー
ボディプレスッッ!!」
蝙蝠の姿を見るやいなや俺のテンションは瞬く間に高まり、まるで瞬間移動するかのように蝙蝠に向かって、ダイブしていた。
当然、俺の百八十キロを超えるボディブレスを喰らった蝙蝠は、「ギィイイィーーー」と断末魔の悲鳴を残して、息絶えたのは言うまでもない。
「蝙蝠肉っゲットだぜぇ!!!」
俺は嬉しさのあまり、拳を高々と突き上げてガッツポーズをとっていた。
こうして一度コツを掴めばその後は楽勝だった。
俺はそこら中にあるありとあらゆる木に張り手を加えて、蝙蝠を落としまくって捕らえていった。
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