第十話 ブタっぽい俺の最後の一枚と増えるポテチ
俺は俺のぶっといプルプル震える指先に、摘ままれている正真正銘の最後の一枚であるポテチを見つめながら迷っていた。
そう、この最後のポテチを食べるか? 食べないか? でだ。
どうする? ここで感情に身を任せて食べることは簡単だ。だが、これは間違いなく正真正銘最後のポテチ。最後の一枚だ。そんな貴重な物を果たして感情の赴くままに、食していいのだろうか? 否! 答えは断固否だ!
そう決めたまではよかった。よかったのだ! が、やはりポテチ。俺が無意識に貪るほどの魅力、否。魔力を有していた。
そのためポテチを摘まんだ俺の指先は、我知らず俺の口元に近づいてしまう。
抗いがたい魅力、こうしがたいうまさを多分に含んでいる薄っぺらな黄色い果実。高カロリーの塊を前にして我慢できるものなどこの世にいるはずがなかった。
俺は我慢に我慢を重ね、ついつい食べてしまいそうになるポテチをプルプル震える指先で口先から遠ざけた。
だが、その瞬間。
ポテチにヒビが入り二つに割れてしまったのだ!
「あっ!?」
俺は思わず声を出して、落下していくポテチに意識集中する。
そう、俺のプルプル震えるぶっとい指先に、我知らず力が入りすぎてしまい俺は、無意識のうちに最後のポテチを傷つけてしまっていたのだった。
当然割れたポテチの二つの欠片は、俺の指先から地面に落下していったために、俺は反射的にこれでもかというほどの大口を開けて受け止めていた。
「うんめえええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!」
思わず口にいれたポテチを噛み砕き、そこからあふれでる豊潤で油ぎっしゅなジャガイモの旨味と、ポテチに振りかけられていた程よい塩加減の旨味を一日ぶりに味わった俺は、ヒステリア森林中に響き渡るほどの大声をあげていた。
たった一日ぶりのポテチを口にし、感動の声を上げたとたん俺の腹が、胃袋が、今口にしたポテチをさらに寄越せと催促してくる。
「ポテーチッ!」
ポテチを食べた瞬間。ポテチが食べたい食欲の渦に飲み込まれた俺は、逆さまにして一心不乱にリュックの中身を地面にぶちまけると、すぐさままだ調べていなかった空になったはずのポテチ袋を逆さまにして右手に中身をぶちまける。
するとどうしたことだろうか? ないはずのポテチがまた一枚だけ、俺の手のひらに舞い降りてきた。
当然ポテチを食べたい食欲に支配されている今の俺に、ポテチを残す。という選択肢はなく、目の前に現れたポテチをすぐさま口へと運んでいた。
「うんめええええっっっ!!!」
再びポテチを口にした俺は声の限りに叫んでいた。
そして味をしめた俺は、空になっているはずの残ったポテチ袋を次々にひっくり返した。
するとどうしたことだろうか? ないはずのポテチが、一袋に一枚づつだが、見つかり、俺は合計三枚のポテチを手に入れることに成功していた。
もちろん次々と見つかったポテチは、その場その場で完食していたために、在庫はない。
そしてもちろんたった数枚のポテチ程度で俺の腹がふくれることはなかった。
そして俺が期待を込めて再びポテチ袋のなかを探してもポテチ一枚足りとも見つけることができなかったために、俺の悲痛な叫び声が再びヒステリア森林に響き渡ったのはいうまでもない。
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